「2050年コーヒー問題」をご存じだろうか。コーヒー業界では言わずと知れたいずれ起こる可能性がある危機的な課題だ。
そんな課題を解決すべく、「コーヒー豆を使わないコーヒー」を開発した企業が存在する。それはAtomoだ。では、Atomoが手がけるコーヒー豆を使わないコーヒーとはどのようなものなのか、今回はそんな話題について触れたいと思う。
コーヒー豆を使わないコーヒーとは?
コーヒー豆を使わないコーヒーを開発したAtomo。従来からたんぽぽコーヒー、大豆コーヒーというものは存在するが、Atomoが開発したのはまったく別のものだ。
どのようなものかというと、植物の茎、根、種の殻など廃棄された植物から生成している。“生成”という表現を使ったが、それほど単純なものではない。非常に緻密だ。
Atomoは、まず、本当のコーヒー豆の分子を徹底的に解析。そして、この廃棄された植物の成分からコーヒーの分子配列を復元して、人工のコーヒー豆を“生成”しているのだ。 そして、これだけではない。Atomoは、コーヒーが持つ香り、ボディ、色、味、カフェインの5つの要素を人工のコーヒー豆に対しても徹底的に分析。
例えば、香りについては、何百もの化合物がコーヒー独特のアロマを形成していることを突き止めたという。そして、そのアロマについても、実際のコーヒーのアロマを再現することに成功。
さらに、カフェインについては60種の植物成分から抽出。普通のコーヒーカップ1杯には、80mg~120mgほどのカフェインが入っているというのだが、Atomoは0mg~300mgの間のカフェイン量を調節できるようにしている。
Atomoが販売しているコーヒーを紹介したい。それがAtomo Coffee。
ClassicとUltra Smoothの2種類が発売されている。日本で見かけるコーヒー缶にも似ている印象だ。このコーヒーはどちらも水と抽出物(ナツメヤシの種、チコリの根、ブドウ)イヌリン、天然香料、カフェインでできている。やはり本当のコーヒーを使っていないのだ。
意外と知らないコーヒーの課題
冒頭で、記載した「2050年コーヒー問題」とは、簡単にいうと2050年にはコーヒーの生産量が現在の半分まで落ち込むことが予想されている危機的な状況のことだ。
この原因として考えらる1つは気候変動、つまり温暖化だ。例えば、エスプレッソのコーヒー豆はアラビカ種のコーヒーだが、このコーヒーの木は、標高1000mの非常に寒暖差の激しい高地で栽培されている。つまり、温暖化が進めば、熱などに弱いアラビカ種のコーヒーの木は、枯れ消滅する危機の可能性だって否定できない。
現状が続くと、2050年にはアラビカ種の生産量は、現在の半分になると言われているのだ。
もう1つが森林破壊だ。30年後、わたしたちが飲むコーヒーの半分以上は、この森林破壊された農地から栽培されるだろうと予想されている。
また、ゼロカーボンの点もある。実は、コーヒーは、CO2を排出する農作物として、カカオに次ぐ世界で2番目。これは多くの人が知らなかったのではないだろうか。
そのためAtomoでは、従来のコーヒーよりも93%少ないCO2排出量と94%少ない水を使って人工コーヒーを製造しているのだ。
このようにAtomoは、将来の危機に備え、本当のコーヒーではない新しいコーヒーのあり方を提案し、現在の形を作り上げているのだ。
いかがだっただろうか。コーヒー豆由来じゃないコーヒー。しかも廃棄された植物から作られている。でも味や香りなどもコーヒーそっくり。スターバックスより美味しいという評判さえあるという。とても不思議な感覚になる夢のようなコーヒーだ。