いまや当たり前のように家庭に存在する各家電製品にも歴史があります。本連載では、誰もが知っている家電製品の初代や初期モデルなどを紹介していきたいと思います。

東芝がつくった、日本初の電気洗濯機

現代の洗濯機と言えば、日本においても節水性や見た目のスタイリッシュさなどからドラム式がポピュラーになりつつあります。その原点となる日本初の電気洗濯機は、1930(昭和5)年に芝浦製作所(現・東芝)から発売された「Solar」です。

「Solar」本体。円筒型の洗濯槽の上には、洗濯物を絞るための機器もある。ローラーの間に衣類を挟んで圧搾する

ちなみに、世界で初めて電気洗濯機が発明されたのは1908(明治41)年。簡単に言うと、円筒型の槽の回転によって生じる水流で、汚れを落とす動作を電動で行うという、今から考えるととても単純な仕組み。アメリカのアルバ・ジョン・フィッシャーが発明し、シカゴのハレー・マシン社が「Thor(ソアー)」というブランド名で販売していました。

その後、日本には商社を通じて1922(大正11)年に初めて輸入・販売。1927(昭和2)年からは東京電気(現・東芝)が輸入・販売を手掛けていました。こうした流れを受け、芝浦製作所が国産初の撹拌式電気洗濯機として製作を開始したのが「Solar」です。

ちなみに、先述の芝浦製作所と東京電気が1939年に合併し「東京芝浦電気」を発足。1984年に略称を社名に変更したことで、現在の「東芝」が生まれました。

「Solar」発売当時の広告(左)、イメージイラスト(中央)、カタログ表紙(右)。当時らしいテイストの縦書きの文字組やモデルの服装、今となってはとても新鮮です

「Solar」は約2.7kg容量の自動絞り機付きの洗濯機で、ハレー・マシン社から供与された技術をもとに、GE社(ゼネラル・エレクトリック社)の技術者が発明した現在のパルセーター(洗濯羽根)の原型とも言える"攪拌翼"を組み合わせたもの。毎分約50回、200°の往復運動を繰り返すことで、槽内の洗濯物を撹拌し汚れを落とす仕組みでした。

ちなみに、販売価格は1台370円。当時、銀行員の初任給が約70円という時代とのことなので、一般家庭ではとても購入できない高級品で、庶民憧れの電化製品だったと思います。

日本初の電気洗濯機、今でも動く!

ちなみに、この「Solar」は川崎市にある東芝未来科学館に展示されており、現物を見ることできます。しかも、驚いたことに現在も稼動し、デモンストレーションも見せてもらえます。

個人的にいいなと思ったのは、本体下部に車輪があり、移動させて使えること。洗濯機の本質的な機能ではありませんが、洗濯機を好きな場所へ動かして使えるというのが、今の使用スタイルからするとある意味目から鱗。給排水の問題とは思いますが、洗濯機はいつから今のように固定式になったのかも、ちょっと気になりますね。

「Solar」発売当時の新聞広告

現代は暮らしの中で洗濯場所が固定されていますが、思い起こせば「おばあさんは川へ洗濯に」と言っていた時代もあるくらいです。洗濯機のような文明の利器というのは、人々の暮らしから時間の制約を解放してきた一方で、機能を有効に使うための場所については、固定化をもたらしたものも多いのかもしれません。

取材協力・写真提供:東芝未来科学館・東芝ライフスタイル