2010年6月20日、富士通は創立75周年を迎える。その富士通が、今年3月29日から、富士通のブランドプロミスとして「shaping tomorrow with you」という言葉を使いはじめた。同社では、FUJITSUのロゴの下に、このブランドプロミスの文字を配置し、各種イベントでのロゴ表示に使ったり、製品カタログや、ニュースリリースなどの社外的な文書のタグなどにも使用。今後は社員の名刺にも刷り込むことになる。
富士通がこのブランドプロミスを制定したのは、同社が顧客起点の姿勢をさらに強調するとともに、グローバルに「ワン富士通」として展開するためのグループの意思統一、そして、ユーザーに対して富士通の基本姿勢に関するメッセージを一本化する狙いがあると見られる。富士通の山本正己社長は、「富士通の強みはなにか。それはすべての活動がお客様起点であり、お客様のことをよく理解している点にある。shaping tomorrow with youには、そうした意味が込められている」とする。
「shaping tomorrow with you」の言葉を紐解いていくと、それが理解できる。
前半の「shaping tomorrow」には、「お客様、社会の未来の創造に貢献する」という意味を持たせたが、ここに「Creating」や「Future」という言葉を使わなかった理由がある。
Creatingが持つ意味には、「自ら作る」のほかに「自然の力で創り出す、まったく新たなものを生み出す」という意味がある。それに対して、shapingには「かたちづくる、具現化する、社会を構築する、方向づける」という意味を持っている。富士通が「shaping」を選んだのは、富士通自身が最初からなにかを生み出すという発想ではなく、これまでの長年の実績、顧客とのパートナーシップをベースに、新たなものを創出するという姿勢を示したものだからだ。ここにも顧客起点の発想が盛り込まれていることになる。そして、「Future」ではなく、「tomorrow」としたのは、遠い将来に実現するのではなく、すぐに訪れる未来でそれを実現するという意味を持たせたものだ。
一方、後半の「with you」という言葉は、「to you」や「for you」という言葉とは一線を画す意味があると定義する。
同社の説明によると、to youやfor youという言葉には、自分たちのソリューションを押しつけようとする意識や、企業の利益を追求しているような雰囲気があり、顧客との関係もドライなものになるという印象になるとする。契約を前提として取引をする外資系企業のイメージを与えるともいえよう。
これに対して、with youには、「お客様とともに」という意味があり、ひいては「顧客ニーズをよく聞く、長期的なパートナーシップにより、一緒になって解決を図る」という意味にもつながり、日本の企業ならではのウェットな関係がイメージされる。これは、富士通の行動の原理原則を示した「FUJITSU Way」とも連動するものといえる。
「富士通は、お客様と一緒になって成長してきた。これは新たな時代になっても同じこと」と山本社長は語る。山本社長がいう新たな時代とは、富士通が目指すグローバル化であり、クラウドコンピューティングの時代の到来のことを指す。
富士通は、2011年度に売上高5兆円、営業利益2,500億円を目指す計画を立てている。この成長の機軸となるのは、グローバル展開とクラウドコンピューティングである。
「世界へ出ていく日本の企業をグローバルの観点から支援する体制を整えていく。そこに富士通のグローバル戦略の柱がある。また、お客様と培ってきたICTに関する長年の経験と、半導体から端末、サーバ、ミドルウェア、ネットワーク、サービスまで一気通貫で提供できる富士通の強みが発揮できるクラウドコンピューティングは、これから富士通の強みが発揮できる分野になるのは明らか。新たな世界においても、富士通はお客様とともに成長していく姿勢を崩さない」と語る。
富士通では、「shaping tomorrow with youには、お客様とともに豊かな未来を創造するという想いを込めており、お客様とともに成長する、長期的なパートナーシップを大切にする、ICTの力で社会の未来を切り拓くという、グループ全体の声、強い想いから誕生したもの」とし、「真のグローバルICT企業として変革していくために、全世界におけるFUJITSUブランドの強化に取り組んでいく」とする。
75年という経験をもとに、グローバルに展開し、さらにクラウドコンピューティングという新たな時代にも踏み出していく富士通が、いまこそ必要とする世界共通の認識が、shaping tomorrow with youという言葉に込められているといえよう。