計画停電の光と闇

福島原発の事故を受けて、東京電力管内の電力不足が懸念されています。電気を作る原発が電気による冷却システムを安全の担保とし、(津浪により)電源が喪失して事故を引き起こし、電力不足へと陥る展開は「熊さん、はっつあん」の落語の世界です。「人災」と指摘されるのもやむなしです。そして、落語は続きます。

電力不足からの大規模停電を回避するために、実施された「計画停電」は実施されるか否かが直前までわからないという「無計画」さは、好きなまんじゅうを嫌いと正反対なことを言って人を騙す「まんじゅうこわい」に重なります。また、節電を呼びかけておきながら、ガラガラのJR山手線を走らせる電気の無駄遣いを許す様は、禁酒を誓った親子が「ちょっとだけ」と杯を重ね泥酔する「親子酒」です。

私が住む東京都足立区は東京23区で最多の世帯が計画停電の対象となりました。足立区は2つの衆議院の選挙区があり民主党から2名が選出されております。その現職議員の「事務所」はなぜかエリアから外れております。このエリア設定が「計画」を指すなら、落語ではなくタチの悪い言葉遊びです。

コンビニオーナーの鞍替えを支えるPOSレジの統合化

独立系コンビニチェーンを展開するDグループは加盟店の増加に嬉しい悲鳴を上げていました。脱サラ組や酒屋などからの転業組、大手のコンビニチェーンとの契約を解除して参加する店が増えているのです。コンビニの契約には解約後も数年間、別のコンビニを営業することを禁ずる「競業の禁止」が盛り込まれていることもありますが、これを回避する方法はいくらでもあります。そもそも、憲法では「職業選択の自由」が保証されており、これを完全に禁止するのは難しいのです。

独立系コンビニの増加にはPOSシステムの普及が弾みをつけています。POSシステムを日本語に置き換えると「販売時点管理システム」で、客が購入した時点で売上と在庫を管理することで、客の購買行動に即した仕入れを実現して在庫ロスを減らす狙いがあります。少量多品種を取り扱うコンビニはPOSシステムにより成り立っているといっても過言ではありません。

かつては各企業が独自でPOSの開発を競い合っていましたが、今は大半のコンビニが大手1社のPOSシステムを採用しております。また、小規模店舗用のPOSシステムはさまざまなレジスター開発メーカーが販売しており、システムの調達が容易になったことも大手からの離反が進む理由です。

まったくの余談ですが、今から20年ほど前、その大手1社の下請けとして「東電」の電気料金をコンビニで支払えるプログラムを作ったのは私です。

停電で商品がないのに在庫管理を案じて閉店

Dグループの加盟店は主に関東地方の郊外にあり、この春の計画停電で対象地域となると、各店から「閉店」すると連絡が相次ぎました。24時間営業ではない店舗が「臨時休業」にするというのです。コンビニチェーンの本部は、加盟店の売上から一定額のマージンを原資として運営しており、停電のたびに閉店されては売上が立ちません。

また、販売数が落ち込めば、メーカーとの価格交渉を有利に進める仕入れのスケールメリットも失われてしまいます。大手と比べれば巨像とアリほどの開きがあるDグループの担当者は焦り、加盟店に閉店の理由を尋ねると「在庫管理ができなくなるから」と答えます。

照明に冷蔵庫、そしてPOSシステムと電気がなければコンビニを運営するのは困難です。しかし、計画停電は最大でも3時間までとなっており、停電以外の時間は通常通り営業できることから「閉店」まですることはありません。何より、非常下の一時期、「販売時点管理」ができなかったからといって困ることはなく、計画停電当時「買いだめ騒動」により、コンビニの棚はガラガラになっており、管理する物品がそもそも少なくなっていました。

これは、「あるもの」を売るだけの状態で閉店を決めた「POSシステム0.2」です。配送網の乱れから商品は入荷されず、ない荷物の在庫管理を心配する様子は、亭主の夢の中にでてきた美女にヤキモチをやく奥様を描く落語「夢の酒」。

首相の落語的行動

計画停電後の大手コンビニの対応はさまざまでした。多くは停電時間中だけの「閉店」で、最大手のある店舗では「レジの予備電源が切れるまで営業中」と貼り紙までして営業を続けています。実際、八百屋を営む義父は夕方以降の停電時、「ローソク」に火を灯して営業を続けました。コンビニは「小売店」です。商品と金銭の授受があれば商売は成り立ちます。それでも休みたいなら、倍の「ノルマ」を数えた落語「皿屋敷」を見習ってほしいものです。

いよいよ「真打ち」の登場です。政府です。原発事故当初の菅直人首相の「原子力に詳しい」発言から始まる「政治主導」での現場の混乱は、子供のための「凧」を大人向きに揚げようとして子供に呆れられる「初天神」ですし、各種「会議」を立ち上げてその名前がずらずらと並ぶ様は「寿限無」。

「東日本大震災復興構想会議」「被災者生活支援特別対策本部」「被災者生活支援各府省連絡会議」「被災地の復旧検討会議」「震災対策合同会議」「災害廃棄物処理の法的問題検討会議」「災害廃棄物の円滑化検討会議」「被災者就労支援雇用創出推進会議」「被災者向け住宅供給促進検討会議」「震災ボランティア連携室」「震災ボランティア・NPO等と各省庁との定例連絡会議」「各党政府震災対策合同会議」「被災地などにおける安全安心の確保対策ワーキングチーム」「原子力災害対策本部」「原子力被災者生活支援チーム」「電力需給緊急対策本部」……

すべての会議の名前を覚える頃には、東北地方は復興を遂げていることでしょう。おあとがよろしいようで。

エンタープライズ1.0への箴言


「不要不急の心配事は落語にもならない」

宮脇 睦 (みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。

筆者ブログ「マスコミでは言えないこと<イザ!支社>」、ツイッターのアカウントは

@miyawakiatsushi