PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)で会計士として監査業務に従事していた筆者は、コロナ禍を契機にリモートワークが急速に浸透する中、2021年1月に初めての育児休暇から復帰しました。同時に、アシュアランス・イノベーション&テクノロジー部という法人全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する部門に異動し、リモートワークで未経験の仕事を面識のないメンバーと進めていくことになりました。

この数カ月を振り返った感想は「リモートワークは育児と仕事の両立の強力な支援となる」です。一方で、上司やチームメンバーとのコミュニケーションは受け身ではなく、積極的に進めていく必要があるということにも気づきました。そうしないと世にいうマミートラックに陥ってしまう危険性があると思います。

今回は、筆者自身の経験から得た、育休明けリモートワークの活用方法、私なりのマミートラックを回避するコツを紹介します。

育休明けのリモートワーク活用術

リモートワークの最大の利点は、通勤時間が0分であることです。筆者はオフィスまで片道1時間20分かかるので、リモートワークの日は1日2時間40分、5日で13時間以上を家事・育児時間に充てられている計算になります。また、昼の休憩時間にちょっとした家事ができ、子どもを迎えに行った後の忙しい時間帯に行う家事タスクを減らすことができます。柔軟な勤務制度のため、中抜けして自宅の近所での用事を済ますこともでき、混んでいる土日に予定を詰め込む必要もありません。

他のメンバーも原則リモートワークのため、「自分だけ」というな負い目を感じることもなく、普通に仕事と家事・育児の両立ができています。育児中のメンバーだけでなく部門全体が、柔軟な勤務制度を活用して仕事とプライベートを両立させ、幸福度を高めているように感じます。

ただし、リモートワークでは自身の状況が周りに見えないことに注意する必要があります。オフィスに出社していれば、自分から言わなくても周りが状況を察してくれますが、リモートワークでは、自分から発信しない限りわかってもらえることはない、ということは強く意識する必要があると思います。

雑談でお互いの距離を縮める

現在所属している部門では、機能別に分けられたチームごとに社内の課題を発見し、問題解決を行ったり、新たな支援策をゼロから創造したりすることが求められます。チームで業務を進めるにあたっては、メンバー同士の相互理解を深めることが重要と言われています。その理由は、人柄・価値観・バックグラウンドなどを理解し合うことで、メンバー同士の信頼関係やチーム内の連携が強くなり、コミュニケーションが円滑になり、結果的に生産性の向上につながるからと考えられます。

しかしながら、オンラインでコミュニケーションを行う際の課題としては、業務を進める相手との距離を縮めるきっかけが少ないことが挙げられます。対面で話したり、食事を共にしたりする機会が大幅に減少したため、物理的に同じ空間を共有していた時には自然に発生していた、業務以外の事柄を話すという機会は失われてしまいました。その結果、お互いの人柄・価値観などを把握できないまま、業務を遂行しているようなこともあるのではないでしょうか。

このような課題を解消するために、筆者は意識的に雑談の機会を増やすなど、リレーションを形成するための取り組みを始めました。例えば、ミーティングの際に状況が許せば雑談を挟み、共通した価値観やその人となりを理解する機会を設けることで話しやすい環境を作りました。また、趣味や生活の話から共通点を探し、そこから話を広げていきました。

一緒に仕事をするメンバーの考え方や価値観などを理解することにより、当初はほとんど面識がなかったチームメンバーに対しても職階の違いに関係なく、親近感・信頼感を持つことができました。その結果、質問、進捗やトラブルの共有、フォローなどさまざまな場面で素早く連携できるようになり、チームの生産性向上に貢献できたと感じます。 

お互いの表情を見ながらわかりやすくリアクションする

オンラインコミュニケーションにおける2つ目の課題は、相手の反応が見えにくいことです。特にカメラオフでのミーティングやチャットツールでのコミュニケーションでは、表情や身振り手振りなどのノンバーバルコミュニケーションが生まれないため、自分の意見に対する相手の反応を正しく察知したり、推測したりすることが難しく、意思疎通のしづらさを感じることもあるのではないでしょうか。

この課題を解消するため、私はオンラインでも伝わりやすいコミュニケーションを実践するようにしました。オンラインミーティングではカメラを必ずオンにし、意識的に相槌を打ったり、積極的に発言したりすることを心がけました。また、アイスブレイクの時間を設けたり、会議の参加者が多い時はWeb会議ツールのテキストチャット機能を活用してコメントしたりするなど、ちょっとした工夫を積み重ねています。自分がプレゼンターを務める際はモバイルモニターを活用し、画面投影時にも参加者の反応が見えるようにしています。

その結果、相手に自分の意図をより正確に伝えることが可能になったと感じています。また、相手から自発的にカメラをオンにしてもらえる場合は、相手の表情・状況を視覚でとらえることが可能になり、双方において、先入観なく相手の状況・本心を汲み取ることができるようになったと感じています。オンラインでもオフラインに近いような感覚でミーティングを行うことができ、チームメンバーへの理解が深まるとともに、信頼関係が構築されて、チームへの帰属意識がより高まったと思います。

デジタルを駆使して業務効率をアップ

チームで仕事を進めるため、シートやスライドなどはチームで同時に編集を行い、レビュー箇所をその場で反映するツールを活用し、レビューアーが作成者の作業完了を待つなどの時間を削減しています。また、チームのチャットを開設し、クイックに相談してもらい速やかに回答するようにしています。タスクは共有のWBSや定例Agendaに記載し、それぞれが抱えているタスクと進捗をそれぞれが更新しておくことで、報連相にかける時間を削減しています。Web会議は15分単位で気軽に設定し、1人で悩む時間を削減しています。

数年前に育休から復帰したチームメンバーは、チームで仕事を進めるためのツールの活用がここ数年で大きく進展したという感想を漏らしていました。このようなタイミングで復帰できたのはラッキーだったと思います。

マミートラックを回避するコツ

筆者の場合は、上司とお互いに忖度のないコミュニケーションを取ったことが、結果的に良かったと感じています。オンライン下では、自身の様子や感じている負担感が見えにくい部分があるため、きついと感じた部分は無理をせず申し出て軽減してもらうことで業務量の調整を行いました。

単に裏方に回るだけではキャリアダウンと感じてしまうので、監査業務では既にスタッフをまとめるレベルになっていたことから、新しい仕事でもアシスタントの方々をまとめることになりました。やってみたい業務があればその分野の勉強を隙間時間で行ったり、勉強で得た知識をもとに意見を述べたりすることも心がけています。その結果、以前よりも知識や知見が増えている実感があり、今後のキャリアにもつながると感じています。

リモートワーク、そして今後はハイブリッドワークが浸透していく中で、オフィスで働くメンバーとリモート環境で働くメンバーの間で垣根なくリレーションを構築していくことがますます重要になると考えられます。

オンラインとオフラインのどちらかの働き方を良しとするのではなく、それぞれの働き方を尊重・理解した上で相互に工夫しあうことで、組織において多様な働き方が浸透していくのではないでしょうか。多様な働き方を実現するためにできることを今後も自分なりに考え、実践し、得られた経験を共有していきたいと思います。

著者プロフィール
本連載は、Tomorrow's audit, today――次世代デジタル監査への取り組みの一環として、PwCあらたの若手が執筆しています。

太田ゆり PwCあらた有限責任監査法人 シニアアソシエイト