さて、H-IIAロケット50号機の打ち上げについては、本連載「H-IIAロケット最終号機現地取材でレポートした通りだが、最後の記事では、種子島の観光情報について少し紹介したい。今後、打ち上げの見学で種子島に来るときの参考にして欲しい。
あの縁の下の力持ちが表舞台に登場
種子島宇宙センターの敷地内には、新たに「ドーリー」の展示が追加されていた。場所は、H-IIロケット実物大模型の少し奥に入ったところだ。
H-IIAやH3は打ち上げ前に、移動発射台(ML)に乗った状態で、VAB(大型ロケット組立棟)から射点へと運ばれる。この輸送に使うのが運搬台車、通称ドーリーである。左右2台のドーリーが移動発射台を持ち上げ、ロケットが倒れないよう水平を維持しながら、ゆっくりと移動する。文字通り「縁の下の力持ち」である。
この緑色のドーリーは、H-IIAロケット初号機の打ち上げから使われてきたものだ。ロケットと移動発射台の重量を支えるため、タイヤは56本も装備。前後左右への移動や、その場での旋回など、自由自在な動きが可能だ。自動運転により、±25mmという高い精度で、射点の所定の位置に停止することができる。
H3ロケット用に新型ドーリーが開発されたため、H-IIAロケットより一足先に、2021年12月の45号機を最後に引退していた。ドーリーは注目されることも少ないのだが、目の前で見られるようになったのは嬉しいところ。こんなタイヤだらけのヘンテコな乗り物、子供たちにウケることは間違いないだろう。
H-IIAロケット引退を記念した石碑も
打ち上げの公式見学場の1つである宇宙ヶ丘公園には、新しい石碑が建立されていた。表には「ロケットの打上げを見守る碑」と書かれており、H-IIAの打ち上げ完了を記念したものだという。
この石碑を製作して南種子町に寄贈したのは、「不屈のロケットOB有志」。打ち上げの翌日には、その除幕式が行われ、代表者である坂爪則夫氏(種子島宇宙センター元所長)が挨拶を行った。
海外から輸入した石材ではなく、種子島の石を使いたかったということで島内を探し回り、西之表市の岳之田を流れる川の河原でこの石を見つけたという。
石碑にはH-IIAロケットも彫り込んだ。H-IIAで特徴的な3色を塗装なしで表現するため、フェアリングの白はサンドブラスト処理、段間部の黒は丁寧に磨きをかけ、断熱材のオレンジは粗めのサンドペーパーで仕上げたそうだ。