HHKBは高い信頼性と耐久性で知られるが、使用を続ける中で押下圧や打鍵感の変化は避けられない。主因はラバーカップの経年劣化による硬化で、押下感が重くなることが挙げられる。
これを改善するにはラバーカップの交換が効果的だが、公式にはサポートされておらず、交換作業は自己責任で行う必要がある。交換には費用と労力がかかるものの、HHKBの利便性を最大化し快適な使用感を維持するための要となる方法だ。今回は、このラバーカップの交換に挑戦してみる。
HHKBは劣化する? 押下圧変化の真実
HHKB (Happy Hacking Keyboard)は、初期モデル・廉価版・Studioを除いて東プレの静電容量無接点方式を採用しており、信頼性と耐久性に定評がある。次のモデルは静電容量無接点方式を採用している。
- 現行モデル - HHKB Professional HYBRID Type-S
- 現行モデル - HHKB Professional HYBRID
- 現行モデル - HHKB Professional Classic
- (旧モデル) HHKB Professional
- (旧モデル) HHKB Professional 2
- (旧モデル) HHKB Professional JP
- (旧モデル) HHKB Professional Type-S
- (旧モデル) HHKB Professional BT
多くのユーザーにとって、上記HHKBは10年以上使い続けられる優れたキーボードであり、その品質の高さは長年にわたり評価を得ている。しかしながら、どれほど耐久性に優れていても、物理的な劣化を完全に防げない。
年月の経過とともに、静電容量無接点方式HHKBの押下圧は徐々に変化していく。具体的には、キーを押す際の感覚が少しずつ重くなる傾向が見られる。この変化は劇的なものではなく、長期間にわたり少しずつ進行するため、多くのユーザーは気付きにくいが、確実に使用感に影響を与える。
HHKBは購入時が最良の状態であり、その初期の使い心地が多くのユーザーに支持されている。だが、長年の使用を経ると、わずかながら劣化が進むことを理解しておくべきだ。この点を踏まえ、適切なメンテナンスやカスタマイズによって、初期の使用感をどれだけ長く維持することができるかが重要になる。
ラバーカップの劣化がHHKBの使用感を徐々に損なう
HHKBではキートップが東プレ軸に接続されており、キーが押されると東プレ軸が下方へ移動しながら「ラバーカップ (Cup Rubber)」を押し込む仕組みになっている。
ラバーカップは半球状で中身が空のゴム山のようなもので、キートップが押されたときのバネとしての役割を果たし、独特の打鍵感を生み出す重要なパーツとして機能している。ラバーカップの状態はHHKBの使用感に大きな影響を与える。
ラバーカップはその名の通りゴム素材で構成されており、経年劣化による硬化が避けられない。時間が経つにつれてゴムの柔軟性が失われ、押下感が変化していく。この劣化は一様ではなく、キーの使用頻度や配置に応じて、硬化が進みやすい場所とそうでない場所がある。
10年以上使用しているHHKBでは、硬化したキーとそうでないキーの違いがはっきりとわかるようになる。この差は、打鍵感の一貫性を損なう原因となり、使用者によって不快感を覚える場合もある。HHKBを長期間快適に使い続けるようとすれば、ラバーカップの交換や適切なメンテナンスが必要になる。
HHKBのラバーカップを交換し、愛用のキーボードを長持ちさせる
このため、HHKBを長期間にわたって新品に近い感覚で使い続けるには、定期的にラバーカップを交換するのが理想的となる。しかしながら、HHKB自体はこうした部品の交換に対応しておらず、公式のサポートとしては基本的にキーボード全体を買い替えるという選択肢しかない。そのため、劣化したラバーカップの問題に直面した場合、多くのユーザーは新しいHHKBを購入することになる。
しかし、自己責任でサードパーティーのラバーカップを購入し、自分で交換することで、初期の感触にかなり近づけることは可能だ。この方法は公式サポート外の対応であり、しかも簡単な作業ではないが、適切な部品を選び慎重に交換を行えば、HHKBの使用感を大幅に改善できる。この作業を行うことで、愛着のあるHHKBをさらに長く使い続けられる。
特に、現在使用しているHHKBに強い愛着があり、新しい製品に買い替えたくないユーザーにとっては、この選択肢は検討に値する。ラバーカップの交換は一定のリスクを伴うが、その分、愛用のキーボードを再び快適な状態に戻せる可能性を持つ有効な手段だ。
残念ながら、サードパーティーのラバーカップはそれほど安くない。本稿執筆時点でシッピングフィーも含めると1万2000円程度かかる。新品を購入するよりは廉価だが、ラバーカップだけにこれだけ支払うとなると、かなり頭は痛い。その場合、「押下圧の変更」というさらなる視点も加えて検討してみるとよいと思う。
HHKBの押下圧45g、一般受けするもののほかの選択肢がない
HHKBの押下圧(キートップを押した際に感じる押し返しの強さ)は、45gに設定されている。この押下圧は、多くのユーザーにとって快適で一般受けするものとされているが、特定の好みを持つユーザーにとっては、選択肢が限られていると感じられる場合がある。特に、高級キーボードやメカニカルキーボードでは押下圧を選べる製品が多い中で、HHKBの固定された押下圧は選択肢の狭さを浮き彫りにしている。
メカニカルキーボードの中には、購入後にスイッチを交換することで押下圧を自由にカスタマイズできるものも存在する。これに対し、HHKBでは45gという押下圧のみが用意されており、他の選択肢がない点は、強いこだわりを持つユーザーにとって満足できない仕様だ。長時間のタイピングや特定の用途に合わせて押下圧を調整したいと考えるユーザーにとって、カスタマイズ性の欠如は明確な制約となる。
それでもなお、45gという押下圧が一般受けする設定であることは事実であり、HHKBが幅広いユーザー層から支持を得ている一因でもある。しかしながら、こだわりを追求するユーザー層にとっては、この一点において他の高級キーボードに劣ると感じられる部分でもある。
最新モデルの「HHKB Studio」はメカニカルスイッチを採用しているため、現行ではStudioを購入して自分でスイッチを交換するというのが簡単な選択肢だ。将来的には、押下圧の選択肢を提供する静電容量無接点方式モデルが登場することを期待したいところだ。
ラバーカップ交換でHHKBの押下圧を変更できる!
ここでラバーカップの交換だ。HHKBの押下圧を変更する方法として、自分でラバーカップを交換するという手段がある。公式にはサポートされていないが、適切なラバーカップを選び交換することで、押下圧を好みに応じて調整できる。これにより、標準仕様の45g以外の押下圧を求めるユーザーにとって、新たな選択肢が生まれる。
例えば、高級キーボードであるREALFORCEには、30g押下圧という軽い静電容量無接点方式モデルが存在する。この押下圧を好むユーザーは、30gに近い特性を持つサードパーティー製ラバーカップをHHKBに適用することで、REALFORCEに近い打鍵感を実現することが可能だ。このカスタマイズにより、HHKBの使い心地をさらに追求できる。
このように、ラバーカップの交換は単なる劣化対応にとどまらず、HHKBの押下圧を自分好みにカスタマイズするための重要な手段とも言える。特に長時間の打鍵で手首の負担を感じているなら、ラバーカップを交換して押下圧を下げるというのは検討する価値のある選択肢だ。愛用のHHKBをより自分に合った形で使用し続けることができる。