高度にインターネットが発達した現代では、知りたい情報をすぐに検索して調べることができる。一方で、本を読むことで得られる想像力やインスピレーションも重要だ。"本でしか得られない情報"もあるだろう。そこで本連載では、経営者たちが愛読する書籍を紹介するとともに、その選書の背景やビジネスへの影響を探る。

第14回に登場いただくのは、タクシーサイネージ「GROWTH」やモビリティ車窓メディア「Canvas」などを運営するニューステクノロジーの代表取締役である三浦純揮氏。同氏は青野春秋氏のコメディ漫画『俺はまだ本気出してないだけ』(小学館)を選んだ。

この漫画は主人公の冴えないサラリーマン・大黒シズオが漫画家を目指して会社を辞めるものの、だらだらと日常を過ごしてしまう姿を描く。夢を追い続ける難しさをユーモアと哀愁たっぷりに描く、まさにおっさんコメディである同作は、「何かを始めたいけど動けない」という人にもおすすめだ。

  • ニューステクノロジー 代表取締役 三浦純揮氏

    ニューステクノロジー 代表取締役 三浦純揮氏

おすすめの本は何でも読む

--普段の読書の様子について教えてください

三浦氏:漫画が好きなので、漫画を多く読みます。電子書籍で漫画を読むのですが、なかなか私のレコメンドに出てこないけれど面白い作品がたくさんあるので、会食などの機会に、人におすすめの漫画を聞いて読んでいます。

小説やビジネス書も、すすめていただいた本を選ぶことが多いような気がします。小説であれば『イニシエーション・ラブ』(原書房)のような、どんでん返しが起こる話が好きです。伊坂幸太郎さんの作品も好きですね。

街の本屋さんにも行くのですが、本屋さんではそのときに話題の本や、自分の中で気になっているテーマの本を買います。最近では「死後の世界」「死んだらどうなるのか」「死ぬってどういうこと」というテーマに興味があったので、関連する本を買いました。とにかく本は何でも読みますね。

--以前から読書が好きなのでしょうか

三浦氏:以前から本を読むのが好きなので、最近もあまり「頑張って読書をしている」という感覚ではありません。動画などと比べて、本は自分の好きなペースで読めるので心地よさを感じています。

漫画は寝る前の時間を使って、タブレット端末で読んでいます。小説やビジネス書は仕事の合間の時間や移動中などを活用して読むことが多いです。

"おっさん"に学ぶ等身大の生き方

--『俺はまだ本気出してないだけ』を読もうと思ったきっかけを教えてください

三浦氏:2~3年前に、電子書籍のおすすめ欄に出てきたのがきっかけです。同じ作者の『100万円の女たち』(小学館)や『スラップスティック』(同)を読んでいたので、気になりました。

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--印象に残っているエピソードや内容はありますか

三浦氏:漫画家を目指しながらも堕落した生活を送る主人公・大黒シズオですが、作中のサッカーゲームでは大活躍するシーンがあります。現実ではもちろん難しいのですが、ゲームの中であれば自分と同じ名前の選手がハットトリックを決められます。そういう、自分の都合の良い居場所を作るような現実逃避は、気持ちが理解できます。

他にも、作中でシズオの親友が知らない土地で自殺してしまいそうになるエピソードがあるのですが、最終的にその親友は帰って来て、2人で大泣きするんです。主人公も親友も冴えない40代男性で、「最終的には自分も友達も元気でいられたらいいよね」と思わせてくれる気がします。作者はそこまで意図していないと思いますけどね(笑)。

作中でもう一つ、自分の人生を24時間の時計に見立てて、今の年齢を3で割るとだいたいの時刻に換算できる、というシーンがあります。私は今38歳なので、正午を過ぎたくらいです。このシーンを読んで、残り半分の人生を考えるきっかけになりました。

ただ、この漫画を読んでいただければわかるのですが、象徴的なストーリーやエピソードはほとんどなく、何巻からでも自由に読めます。そんな漫画だからこそ好きになったんだと思います。

「本気を出せない日」に効くゆるい処方箋

--この本を読んで、ビジネスや三浦社長の生活に影響はありましたか

三浦氏:例えば、ビジネスパーソンにも人気な『キングダム』(集英社)のような漫画であれば、「マネージメントの極意」や「チームの動かし方」などを学べるかもしれません。

しかし、繰り返しになりますが、『俺はまだ本気出してないだけ』は全巻を通して、主人公が漫画家を目指しながらも、デビューできそうになったり、ボツになったり、冴えない日々をただ過ごしています。

40代男性という"おっさん"の人生を俯瞰している漫画のタイトルが『俺はまだ本気出してないだけ』というのも良いですよね。例えば、仕事や生活がうまくいかなくて不満を抱えても、「俺はまだ本気出してないだけ」と思えばまだまだ頑張れる気がします。

私が今から大黒シズオのような"おっさん"になれと言われれば、もちろん嫌なのですが、シズオの人生を否定することはできませんし、自堕落な生活を理解できないわけでもありません。だからこそ、ストーリーの大きな抑揚がない漫画ですけど最後まで読めるのだと思います。

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