ローソンとKDDIは2026年2月24日、災害時に地域住民の支援拠点となるコンビニエンスストア「災害支援ローソン」の1号店を、千葉県富津市にオープンしました。その中では太陽光発電による蓄電や井戸水の活用、災害用おにぎりの作成など生活インフラとしての支援に加え、通信に関しても衛星通信やフェムトセルなど、いざという時のさまざまな備えが進められているようです。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。
千葉県富津市に「災害支援ローソン」1号店を展開
2026年は阪神・淡路大震災から31年、東日本大震災から15年、熊本地震から10年、能登半島地震から2年が経過する節目の年。とりわけ東日本大震災が発生した3月11日を迎えるこの時期は、大規模自然災害の脅威を実感する人も多いのではないでしょうか。
そして現在も、南海トラフ巨大地震や首都圏直下型地震など、大規模地震が長らく懸念されている状況にありますし、地震だけでなく台風や豪雨、最近であれば大雪など、さまざまな自然災害に見舞われていることもまた確か。それだけに災害へのさまざまな備えが重要になってきているのですが、一方でその備えに求められる要素にも変化が出てきています。
中でも大きく変化したのは、通信の重要性が大きく高まったことではないでしょうか。スマートフォンが広く普及したことでモバイル通信が生活に欠かせないインフラとなり、災害時もその通信を途絶えさせないことが非常に重要になってきていることは間違いないでしょう。
そこで新たな災害への備えを打ち出しているのが、通信大手のKDDIとコンビニエンスストア大手のローソンです。KDDIは2024年よりローソンの経営に参画して以降、KDDIのデジタル技術をローソンに取り入れたさまざまな取り組みを進めていますが、その新たな取り組みとして2026年2月24日に打ち出されたのが「災害支援ローソン」です。
災害支援ローソンは、平常時は通常のローソンとして営業しながら、災害発生時には地域住民を支えるための拠点として活用できる備えを持ったローソン店舗となります。千葉県富津市の「ローソン富津湊店」がその第1弾となったことから、同日には災害支援ローソンの内容が報道陣にも公開されています。
非常時に欠かせない水や食料、電力などを提供することに力が入れられており、同店には太陽光パネルと蓄電池を設置し、非常時の電力確保ができ仕組みを用意。それに加えて、飲料水などをストックする備蓄用倉庫を備えており、有事の際に店内の厨房を活用しておにぎりを作って提供することも可能となっています。
通信維持に「Starlink」と「フェムトセル」を活用
そしてもう1つ、力が入れられているのが通信手段の確保です。先にも触れたように、災害支援ローソンでは非常時も電力を確保できることから、それを活用して被災住民のスマートフォンを充電するバッテリーチャージャーを提供できるといいますが、大規模災害時はモバイル通信のインフラが被災して通信が途絶することも少なくありません。
それだけに災害支援ローソンでは、周辺のインフラが途絶えても通信を維持できることに重きを置いているのですが、最も大きな役割を果たすのが米Space Exploration Technologies(スペースX)の「Starlink」による衛星通信サービスです。
災害支援ローソンにはStarlinkのアンテナやWi-Fiルーターなどを常備しており、災害時にはそれを用いて臨時のWi-Fiスポットとして運用。最大128人まで同時接続可能となっています。
それに加えてもう1つ、KDDIが導入を打ち出しているのが「auフェムトセル」です。フェムトセルとは建物内などにも設置できる小型の携帯電話基地局を指し、主として通信環境の悪い建物内に設置して狭い範囲でのモバイル通信を可能にするのに用いられるものです。
そこでKDDIではフェムトセルも常備し、災害時にStarlink回線をバックホールとしたフェムトセルを設置することにより、ローソン周辺でKDDIのモバイル通信回線を提供する取り組みを実現するとのこと。
基地局は電波を発する機器だけあって、設置に当たってはさまざまな免許や技術が求められるのですが、auフェムトセルはそうした資格などが不要で、なおかつサイズも一般的なWi-Fiルーター程度とかなり小型なことから、ローソンの従業員でも容易に設置できるそうです。
ただ、電波を発する基地局は勝手に動かすことが電波法で禁止されており、これだけ小型のフェムトセルともなると、設置場所を勝手に動かして法律違反の懸念も出てきてしまいます。
そのためauフェムトセルには、位置が移動したことを検知して通信を停止する仕組みが備わっているほか、ワイヤーなどを使用して固定し、物理的に移動できなくすることも可能だそうです。
これらの活用により、災害発生時も災害支援ローソンに行きさえすれば、KDDI回線の利用者はauフェムトセルで、それ以外の回線利用者もWi-Fiで何らかの通信ができるようです。
水や食料だけでなく、通信でコミュニケーションができたり、情報を得たりできることの安心感は非常に大きいだけに、一連の取り組みが災害時に大きなメリットとなることは間違いないでしょう。
そして両社では、2030年までに災害支援ローソンを全国に100店舗設置することを目指すとしています。これは各都道府県に2店舗ずつ設置した場合のおおよその数となるようですが、都道府県によっては土地自体が広かったり、島が多かったりして都市間が大きく離れており、2店舗ではカバーしきれない地域が少なからずあるように感じてしまいます。
このようなことを考えると、日本全国をカバーするには各都道府県に2店舗では到底足りないようにも思えるのですが、一方で民間企業が災害支援に取り組む上では、コストを考慮しなければならないことも確かです。災害支援ローソンの取り組みと有用性は確かだと感じるものの、全国でより多くの人が利用できる環境をいかに整えられるかが、最大の課題となってくるのではないでしょうか。




