[NTTドコモビジネスなど8社が2026年1月16日、神奈川県横浜市で自動運転の実証実験を開始]しましたが、そのポイントとなるのがローカル5Gと路側インフラを活用した走行支援、そして4Gや5Gなどの無線リソースを最適化した車内の遠隔監視です。自動運転に不可欠な安定かつ素早い反応に対応する通信を実現するため、どのような技術を用いているのでしょうか。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。
「Cradio」と「ISAP」で通信品質を先読み
少子高齢化による労働人口減少がさまざまな産業に影響を与えている昨今ですが、その代表の1つに挙げられるのがバスなどの公共交通です。最近では運転手不足により、バスの減便や路線の廃止が相次いでいますが、その解決策として期待されているのが自動運転です。
とりわけ求められているのが、ドライバーが乗車せずシステムによる完全自動運転を実現する「レベル4」の自動運転であり、現在は、その実現に向けてさまざまな実証実験が続けられている最中です。
NTTドコモビジネスなどが神奈川県横浜市で実施した実証実験もその1つで、アミューズメント施設への送迎に自動運転バスを導入するため、安全性を確保する技術検証を実施することが実証の狙いとなっています。
実証実験では、横浜市の鶴ヶ峰駅付近のバス停留所から「よこはま動物園ズーラシア」(横浜市立よこはま動物園)までを自動運転車で走行するのですが、安全性を確保するべく検証するのは、1つに遠隔監視のため安定したネットワーク品質を確保することです。
ドライバーが乗車しない自動運転車では、さまざまなトラブルを検知し、対処するために遠隔監視が求められますが、それを実現するには公衆の4G・5Gネットワークを含むモバイル通信で、可能な限り安定した通信を実現する必要があります。
そこで今回の実証実験では、複数の技術を用いて通信の安定を実現しており、その1つは「Cradio」というものになります。これはNTTが研究開発しているもので、複数の無線ネットワークを連携させることで通信品質を予測し、最適な通信を維持する技術です。
自動運転バスはLTEや5G、5Gでもノンスタンドアローン(NSA)運用やスタンドアローン(SA)運用など、さまざまな環境のネットワークの中を走行します。そこでCradioではまず、事前に走行ルート上の無線通信品質を収集・分析し、場所によってどの周波数帯の電波が、どの程度の品質になっているかを予測するモデルを作成しておきます。
そのデータを実際の走行時に活用し、通信品質を先読みすることで、品質が低下する前に品質の高い通信へと切り替えることで、通信品質を維持する訳です。今回の実証実験では異なる電波や通信方式に接続した3台のルータ端末を用い、それらを環境に応じて切り替える形が取られていますが、端末側の性能が高く、高速な切り替えができるのであれば、1台の端末でも対応できるとのことでした。
もう1つは「ISAP」で、こちらもNTTの技術で、端末とクラウド間の情報を高速に同期・連携させるものとなります。これをCradioと連携させることで通信品質を素早く把握し、通信品質が急激に変化する前に通信量を制御することにより、通信品質が悪化した時も映像の遅延や画質劣化を抑えているとのことです。
ローカル5GとMECで安全運転のためのインフラを連携
そしてもう1つの検証は、自動運転車と周辺のインフラを連携させ、見通しの悪い道路や狭い道路でのすれ違い運転や停止を判断したり(離合制御)、混雑時の入庫待ち渋滞を避けて運転したり(車列回避)することです。
自動運転車には多くのセンサーが搭載されており、単体で自動運転をすること自体は可能ですが、事故やトラブルが生じやすい場所やシーンでも安全な運転を実現するには、その周囲の環境を把握するためインフラと連携することが求められるのです。
そこで今回の実証実験では、周辺状況のデータを収集する路側インフラを2つ用意。離合制御の実証に関しては、カメラやセンサーを備えた路側インフラを公道上に設置し、そこから携帯電話会社の5Gネットワークを通じて自動運転車と情報をリアルタイムに共有することで、対向車を検知して停止、あるいは走行の判断をしています。
一方の車列回避に関しては、ズーラシアの駐車場付近で渋滞が発生しやすいことから、ズーラシアの敷地内にある道路にLiDARとカメラを備えた路側インフラを用意。LiDARの情報はカメラよりデータ量が大きいため、自営網であるローカル5Gのネットワークを整備してそこから伝送し、車両の動きを分析。分析結果を自動運転車に情報を送り、車列の追い越しなどを判断する形が取られています。
そして離合制御、車列回避ともに用いられているのが「MEC」(Multi-access Edge Computing)という技術です。
情報の分析に海外のクラウドを使うとなれば、そのデータをやり取りするだけで距離に応じた遅延が生じてしまい、自動運転のようなリアルタイム制御が求められるシーンでは大きな問題が生じかねません。
そこでMECでは、より通信する端末に近い、ネットワーク上にデータを処理するサーバを設け、そこで処理をすることでクラウドよりも低遅延でデータのやり取りを実現する訳です。なお、今回の実証では、NTTドコモの「docomo MEC」を用いているとのことでした。
こうしたネットワーク技術を用いることで、実際の乗車においても公道をはじめ、多くのシーンでスムーズに運転できていることを確認できました。ただ、今回の実証実験はより安全性を期すためか、レベル4ではなく、あくまでドライバーが乗車し運転の主体はドライバーが担う、レベル2によるものに留まっており、全ての制御を自動運転車がこなしていた訳ではありません。
一方で、既に米国や中国の一部地域では、既にレベル4による自動運転サービスが始まっており、長きにわたって実証実験を続け、商用サービス提供に至っていない日本の大幅な出遅れが指摘されている状況にもあります。労働者不足による公共交通の衰退も待ったなしの状況にあるだけに、早期の実用化に向けたよりスピーディーな取り組みが求められる所です。






