総務省は2025年11月28日、令和7年度版の「周波数再編アクションプラン」を公表しました。2024年末まで新たに47GHz幅の帯域確保を目指し、5G向けの新たな周波数割り当てや、NTN(非地上系ネットワーク)での高度利用など重点的な取り組みがいくつか明らかにされていますが、2026年の通信競争を見据える上での注目ポイントについて解説しましょう。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。

周波数オークションは26GHz帯から導入

スマートフォンやWi-Fi、衛星通信など非常に幅広い用途に用いられている電波は、国の重要な資源でもあります。その貴重な電波を有効活用し、なおかつ新たな電波利用需要に対応するための指針として、総務省は毎年「周波数再編アクションプラン」を公表しています。

そして、2025年も11月28日に令和7年度版の周波数再編アクションプランを公表しており、その中身を確認しますと、国として重視しているのはやはり無線通信のトラフィック増加のようです。

2024年8月に公表された「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会報告書」によると、2024年の無線トラフィックは、携帯電話やWi-Fi等を含めた合計で73.1GHz幅の帯域が必要になると試算されているそうです。

2023年末時点で既に約26.5GHz幅の帯域を確保していることから2024年に向けて約47GHz幅の帯域確保を目標にしているとのこと。ですが2024年度中に確保した帯域幅は0.34GHz幅で、今後より多くの帯域幅を確保する必要があるようです。

  • ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革 第27回

    総務省「周波数再編アクションプラン(令和7年度版)」概要より(以下同様)。政府では2040年末までに約70GHz幅の帯域幅が必要としているが、2024年度中に確保したのは0.34GHz幅にとどまる

では、今回の周波数再編アクションプランではどのような取り組みに重点が置かれているのでしょうか。とりわけ多くの人に影響するモバイル通信、ひいては5Gに関する最大のトピックとなるのは「価額競争」の実施が明記されたことです。

価額競争と言っても聞きなれないかと思いますが、要は新しい周波数帯の免許割り当てに、諸外国で多く用いられている、よりお金を多く支払った事業者が免許を落札できる、あるいは獲得に有利になる「周波数オークション」のことです。

長らく日本では周波数オークションが導入されてきませんでしたが、電波が高い経済価値を持つようになったとして、以前から総務省が導入に向けた検討を進めており、今回その導入が明確に示されたこととなります。

最初に価額競争が導入されるのは、2025年度内の免許割り当てが見込まれている26GHz帯となり、総務省で価額競争実施に向けた指針の整備を進められるようです。

また、その後も「速やかに既存無線システムと共用可能性が高い周波数を価額競争により5Gに割り当てることを目指す」とされていることから、今後5Gに割り当てられる周波数帯にはオークション制度が用いられる可能性が高いでしょう。

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    2025年度内の割り当てが見込まれる26GHz帯の免許割り当てから価額競争、要は周波数オークションを導入することも明記。その実効性が問われる所だ

周波数オークションは、お金という非常に明確な基準で免許の割り当てが決まることから、審査の透明性が高く公平な割り当てができるとされています。ただ一方で、落札にお金がかかってしまう分、ネットワーク整備にかけるお金が減ってしまい、ネットワーク整備にマイナスの影響が出るなどデメリットも少なからずあります。

また、26GHz帯は実質的に携帯電話会社に人気のないミリ波に分類されるだけに、そもそも入札者が少ない可能性もあり、オークションが有効に機能するのかどうかが不透明な所。実際、26GHz帯と同時期の割り当てを目指していたミリ波の40GHz帯は、携帯各社などから5G向けの早期割り当て希望が示されなかったため、割り当てそのものが見送られているようです。

それだけに、国内で初めて実施される周波数オークションがどのような結果をもたらすのかが、2026年の注目ポイントの1つとなりそうです。

楽天モバイルは衛星通信に700MHz帯を使うのか

もう1つ、モバイル通信に関する所で大きなポイントとなるのはNTNです。NTNに関しては、日本でも2025年にKDDIの「au Starlink Direct」で衛星とスマートフォンとの直接通信を実現するという大きな動きがありましたが、2026年には他の携帯電話会社も衛星・スマートフォンの直接通信サービスを提供する予定とされています。

その1つの動きとして注目されているのが700MHz帯で、今回の周波数再編アクションプランでは「700MHz帯を利用する衛星ダイレクト通信システムの導入のため、既存無線システムとの周波数共用に係る技術的条件等について検討を進め、令和8年中を目途に制度整備を行う」と記されています。

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    衛星・スマートフォンの直接通信に700MHz帯を用いるための制度整備が進められることも明記。楽天モバイルがこの帯域を活用するかどうかが注目される

そこに大きく影響しているのが楽天モバイルです。同社は米AST SpaceMobileと進めている衛星・スマートフォンの直接通信サービス「Rakuten最強衛星サービス」を、2026年第4四半期にサービス開始する予定ですが、衛星との通信に700MHz帯を用いる可能性があるのです。

その理由は1つに、すでに多くの基地局を設置している1.7GHz帯より、免許が割り当てられて間もないので基地局数が少ないこと。加えてもう1つ、楽天モバイルに割り当てられた700MHz帯は、帯域幅が狭く大容量通信には向かないことから、通信量が少ない衛星通信用として扱いやすいと見られています。

もちろん、現時点で楽天モバイルがRakuten最強衛星サービスに、どの周波数帯を用いるか明確に示していないのですが、今回の周波数再編アクションプランによってその可能性が高まったことは確かでしょう。

一方、今回の周波数再編アクションプランでは無線LANの高度化に向けた新たな周波数活用の方向性も示されています。具体的には6.5GHz帯(6425~7125MHz)を、屋外での高出力な利用を可能とする「SPモード」を含めた無線LANの周波数帯域拡張に用いる検討を、2025年度中に取りまとめるとしています。

実は6.5GHz帯というのは、前回触れた「センチメートル波」の7GHz帯に相当するもので、ソフトバンクらが実証実験を進め、この帯域すべてをモバイル通信に割り当てるよう求める動きが出てきています。

  • ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革 第27回

    無線LAN向けに6425~7125MHzの割り当ても検討されていることが示されているが、この帯域は携帯電話会社が5G向けの割り当てを求めている所でもある

それゆえ今回の周波数再編アクションプランでは、この帯域を無線LAN向けに割り当てる方向に傾いている国の姿勢が、携帯各社らの動きによって今後方針を変えるのかどうかが、注目される所かもしれません。