筆者は兼ねてから、ビジネスパーソンには基本的な3つの才能があると考えています。それは「考えること」「努力すること」「人と仲良くなること」です。しかし最近、「考えること」を「興味を持つこと」に変えました。この才能は「考えること」も包含し、「考えること」以上に大切だと判断したからです。
筆者が担当する採用の面接では、この3つの観点でも候補者を評価します。この3つがあれば、その人は確実に成長すると考えるからです。そのような人は、AIに使われるのではなく、AIを使いこなすこともできると思いますね。今回の記事では、「興味を持つこと」「努力すること」「人と仲良くなること」という3つの才能の重要性について説明したいと思います。
才能1:興味を持つこと
「興味を持つこと」。それは新しい知識を探し、吸収することです。言い換えれば、学習するということです。筆者はもうじき還暦なのですが、いまだに勉強すると新しい発見があり、感動します。筆者が持っている知識などたかが知れていると認識します。そして、その知識をどう仕事で活用するかを考えています。ある意味、実験をします。
そして、興味を持って得た知識をベースに行動を起こすことで、それはスキルに変わります。また、新しい分野やトピックに興味を持つことで、複雑な問題に対するインサイトとなり、創造性のための手段が得られます。良いことだらけですね。
さらに、吸収した知識と自分がすでに持っている知識を結合することで、New Combinationを誘発して、うまくするとイノベーションを起こすことが可能になります。イノベーションは1から起こすのではなく、組み合わせで生まれるという原則にのっとっています。
「興味を持つこと」の結果、人はどういう態度になるかというと、アクティブに質問をするようになります。そうです。もっと知りたいという気持ちは、積極的な質問につながるのです。小さい子供が「これは何?」「これはなぜ?」と聞いてくるのは、興味があるからです。筆者は孫にこういう質問をされると、たいてい困ってしましますが......。
大人になると、的外れな質問だったら恥ずかしいとか、正解を述べないといけないとか考えてしまい、質問をしなくなりますよね。特に日本人にはその傾向が強いです。会議やセミナーで、質問がありますか?と聞いても、シーンしていること多いですよね。みなさん、がんばって興味を持って質問してください。気楽に、興味の赴くままに、質問すればいいのです。
才能2:努力すること
「努力すること」は脳を鍛えることです。筆者の持論では、「脳は筋肉のように鍛えることができる」です。脳の可能性は無限大だと思います。ビジネス上では、人の強みは経験して脳に筋肉が付いていることであり、弱みはまだ脳のその部分をうまく使っていないことなのです。
ここで例を一つ。人前で話すことが苦手という方がいらっしゃると思います。筆者も以前はそうでした。人前にでるだけで舞い上がってしまい、汗がダラダラと。そんな筆者も、マイクロソフトに入社して1000名規模のセミナーで多くの講演するようになりました。最大で4000名以上の前で話したことがあります。場数を踏むことで、すっかり人前で話すことが苦手ではなくなりました。むしろまぁまぁ得意です。
文章だって、以前はこんなに書けなかったです。書籍を出版する、寄稿するなどして、すっかり文章が書けるようになり、この連載に至ります。このように、弱みは鍛えると強みになるのです。弱みを探して鍛えると、筋肉隆々の脳になること請け合いです。
「努力」という言葉は、少し汗のにおいがしますよね。そういえば小学生のころ、好きな言葉として「努力」とお習字で書いた記憶あります。英語で「努力する」の代表は、ご存じのように「Make an effort」です。このeffortは古フランス語の「esforz」(力、衝動、強さ、パワー)、動詞名詞形の「esforcier」(力を出す、自己を駆使する)から来ています。自己を駆使するというのが、なんかしっくりきますね。
努力を継続するのって結構難しいですよね。ある意味、マラソンランナーみたいなものでしょうか。昔のテレビCMで、マラソンランナーを使って「あの電信柱まで」というのがありました。小さな目標を立てて、成功したら次の目標を立てる、みたいにアジャイル的なアプローチをするのがいいと思います。例えば筆者はビジネス書を読む場合、複数を選択して、1時間ごとに分けて読んで、飽きないようにしています。これは、チャンキングという方法です。目標達成の仮定をチャンク(ぶった切る)して、こつこつ達成するのです。
書籍『GRIT やり抜く力』(ダイヤモンド社 著者:アンジェラ・ダックワース)を読むと、成功する人は断固たる決意を持ち、粘り強く成功に向けて努力することが分かります。才能だけでは成功はしません。才能×努力がスキルになり、スキル×努力が達成になると教えています。大成功のためには究極の努力が必要なのでしょうね。
才能3:人と仲良くなること
最後は「人と仲良くなること」です。ビジネスパーソンとして働く場合、社内外で多くの組織に関わります。人と関わる限り、コラボレーションやコミュニケーションが大事です。当然ながら「人と仲良くなること」は、それらの潤滑油になります。それに、仲良くない人とは楽しく仕事できないですよね。
しかし、実はもっと大事なことが「人と仲良くなること」に潜んでいます。それは運にも関わることです。書籍
『小さく賭けろ! 世界を変えた人と組織の成功の秘密』(日経BP 著者:ピーター・シムズ)を読んでなるほどと思ったのですが、人と仲良くしてネットワークを広げることで、幸運をつかむ機会が増えます。運をつかむ人とつかめない人の差は、そこにあると記載がありました。この本では、書籍『運のよい人、悪い人』の作者の言葉を引用しています。
「運のいい人たちは、出会った人々と強固で長続きする人間関係を形成することに長けている。彼らは打ち解けやすく、ほとんど誰にでも好かれる。」
恋愛対象を考えてもそうですよね。多くの異性と仲良くなり対象を増やすことで、きっと良い相手をつかむチャンスは増えるのだと思います。これは、ナンパをしろという意味ではないので悪しからず。ビジネスの機会もある意味、縁から生まれることが多いのも、これに関係するのでしょうね。筆者は人見知りなので、「人と仲良くなること」は実は苦手です。その結果、多くの運を逃がしてきたのかもしれませんね。
筆者は「人と仲良くなること」は苦手なのですが、心がけていることがあります。それは書籍『7つの習慣』(キングベアー出版 著者:スティーブン・R・コヴィー)で紹介されている、信頼口座への貯金です。行動と結果によって相手に対する信頼口座の残高を増やし、信頼関係を強化します。信頼口座の残高がゼロでは、良いコラボレーションは生まれないのです。信頼口座を増やすことによって、自分の影響力の範囲を拡大することに努めています。
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どうでしょう。「興味を持つこと」「努力すること」「人と仲良くなること」の大切さがお分かりいただけたかと思います。しかも、「努力をすること」でこれらの才能は得られます。
書籍『根性論や意志力に頼らない 行動科学が教える 目標達成のルール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 著者:オウェイン・サービス)を読むと、ウェルビーイングを高める5つのファクターがあります。それは、「人との関わりを強化する」「健康で活動的になる」「何か新しいことを学ぶ」「好奇心持つ」「他社に与える行為をする」です。
5つのうち「人との関わりを強化する」「何か新しいことを学ぶ」「好奇心持つ」が、この才能に関係しますね。意識して、みなさんの才能を伸ばして、ウェルビーイングを高めてみてください。