企業内の文書(ドキュメント)を検索する技術として登場した「エンタープライズサーチ」は現在、企業システムの「オブザーバビリティ(可観測性)」を確保する技術としての応用が進んでいる。今回は、エンタープライズサーチによるオブザーバビリティの実現が、オンライン上での顧客体験(CX)の向上にどう貢献しうるかについて概説する。

エンタープライズサーチを活用したオブザーバビリティで可能になること

市場にはすでにオブザーバビリティのソリューションがさまざまに提供されている。その一形態が、エンタープライズサーチのエンジンを活用したものとなる。

「Elasticsearch」のようなエンタープライズサーチのエンジンは、さまざまなデータソースから収集した大量のデータをリクエストに応じてきわめて高速に検索・集計することができる。そうしたエンタープライズサーチのエンジンとデータ分析・可視化のツールを組み合わせることで、インフラ監視やログ監視、APM、リアルユーザー監視(エンドユーザーごとのアプリケーションパフォーマンスの計測、可視化)、さらにはシセンティック監視(外部のエンドポイントからのアプリケーションパフォーマンスの点検)といった、オブザーバビリティの機能を実現することができる。

例えば、ECサイトやスマートフォンアプリなど、企業が顧客や一般の生活者に向けて提供しているシステムでは、利用者のニーズ、嗜好の変化に応じて機能の変更、拡充を短いスパンで継続的に行っていかなければならない。マイクロサービスアーキテクチャを採用したシステムであれば、そうした機能の変更、追加が容易に行えるが、機能(=サービスコンポーネント)の変更、追加は、システムの停止やパフォーマンスの劣化など、CXに負の影響を与える不具合を生じさせやすい。ゆえに、開発・運用のエンジニアやSREエンジニアは、サービスコンポーネントの更新、追加が行われるたびに、システム上の不具合が生じていないかどうかを入念に点検する必要がある。

このとき、新たに更新、追加されたサービスコンポーネントが見かけ上、正常に動いているものの特定のユーザーアクションに対するレスポンスが遅く、それがシステムのユーザビリティに負の影響を与えてしまうようなことがある。

通常では、こうした小さな不具合を見つけたり、原因を究明したりするのには相当の時間と工数を要する。しかし、エンタープライズサーチのエンジンを活用したオブザーバビリティのソリューションがあれば、大量のメトリクス、ログ、トレース情報の高速検索・集計・分析・可視化によってレスポンスの遅延を即座に検知し、問題原因を突き止めることができる。すなわち、遅延を引き起こしているサービスコンポーネントの潜在的なバグを簡単に、かつ迅速に発見することができるのである。

システムのユーザビリティ、セキュリティの向上にも有効

エンタープライズサーチのエンジンは、システムのオブザーバビリティのみならず、システムのユーザビリティやセキュリティの向上にも役立てることができる。

このうち、セキュリティに関して言えば、エンタープライズサーチのエンジンをベースにしたセキュリティソリューションを使うことで、システムの膨大なログから、システムにおける不信な、あるいは異常な振る舞いを早期に検知・可視化し、スピーディで的確な対処・対応につなげることが可能になる。

また、エンタープライズサーチのエンジンを、ECサイトや顧客サポートサイト、あるいは顧客向けのアプリケーションなどのシステムに組み込むことで、商品検索や記事検索などのパフォーマンスを大幅に向上させてユーザビリティを高めることができる。これも、システムのCXを向上させるうえで有効なソリューションといえるだろう。

次回の本連載では、自然語による検索など、エンタープライズサーチの新たな潮流について解説する。