みなさんこんにちは。エンジニアが持つすばらしき「シェア文化」の背景に迫る連載もいよいよ第5弾。前回に引き続き、エンジニア特化型Q&Aサイト「teratail(テラテイル)」のトップ回答ユーザーへのインタビューを通じ、「なぜそこまで自身の知識やノウハウをシェアするのか?」を探っていく。

今回は、「Python」タグにて9位、また「Java」や「Vim」タグにおいても上位に入る若手トップランカーryunix氏に話を伺った。

ryunix氏

ryunix氏

業務系システム会社に勤務する20代のエンジニア。teratailはオープンして間もない2014年9月より使い始め、これまでに200以上の質問に回答、うち約半分がベストアンサーに選ばれている。メイン言語をJavaとしながらもPythonやVim、JavaScript、PHPなど、幅広い技術において上位にランクインするトップユーザーのひとり

コミュニティとの連携などで質問のクオリティがあがってきたteratail

ryunix氏のteratailユーザーページ

―― 本日はよろしくお願いします。まず初めに、お仕事内容を教えてください。

業務系のシステム開発会社で、販売管理システムや在庫管理システムといった業務向けのアプリケーションを作っています。現在はクライアント先に常駐し、お客さまが使うシステムをC#で作っている日々です。エンジニア歴は今年の4月で7年。高校卒業後からプログラミングの専門学校に通い、C、PHP、COBOL、VB.NETなどさまざまな言語を学んできました。

―― ryunixさんが好きな言語は何ですか?

一番長くやっているのはJavaなんですが、最近は結構C#を使う案件も増えました。Javaと比べると、C#の方が好きかもしれません。Javaにはgetter/setterというメソッドがあるのですが、それがC#だと良い感じに簡略化されるところがお気に入りです。最近はGo言語とPythonが気になっています。

―― ryunixさんはどんなときにteratailを使いますか?

最近は回答するより見ることの方が多いですが、ほぼ毎日チェックしています。パソコンで見るというより、スマホでチラっと見たり、Twitterやメルマガで流れてきたおもしろそうなQ&Aをよく見たりしていますね。

私はVimを使うのですが、ちょっと前に、多くのVimmerが集まる「Lingr」内のVimのチャットルームにteratailのAPIからVimのタグがついた質問を流せるようにしてもらいました。「Slack」に似た感じで、ボットがVimに関する質問のタイトルとURLを投げ、分かる人が回答しています。Vimの質問はかなり回答率が良いんですよ。Vimで未回答の質問って2個くらいしかないんじゃないでしょうか。APIの使い方について、こうしたらできますね?とか話していたら、その1時間後には出来上がっていました。Vim界で有名なエンジニア達が回答してくれるのが良いなあと思っているので、他の言語でも是非導入していただきたいですね。

―― それはありがたいです!teratailを見ていて、以前と比べて変わったなと思うところはありますか?

最近だと簡単に答えられる質問がなくなってきたなと思います。過去に自分が回答したQ&Aを見たのですが、昔ってそもそもの質問内容がけっこう簡単なんですよね。一方で、最近の質問は難易度が違う気がしていて。いまのteratailは全体的に質問のレベルが上がり、より専門的なものが増えてきたんじゃないかな。

―― teratail的には嬉しいですね。

答える側としては、難しいの多いな?って(笑) でも、中身をちゃんと書いている質問が多くなった印象を受けます。やはり昔は、最低限くらいしか質問内容が書かれていなかったんですよ。それが、Q&Aが増えたことで、どんなことをどう質問したら良い回答がもらえるかみんな分かってきたのか、最近は細かく書かれた質問が増えましたね。

腕試しとしての自己発信から、新たな仲間や技術との出逢いへ

―― ryunixさんがteratailで回答し始めたきっかけを教えてください。

まずは自分の力試しですね。規模の小さな会社にいて、普段から外部の人との交流が少ないタイプのエンジニアだと、自分がどれくらい力を持ってるか分からなくなるときがあります。そこで、Q&Aサイトであるteratailで自分の実力レベルを客観的に測ってみようと登録しました。そしてプラスアルファとして技術の話ができる友達が出来たらいいなあと思い、回答するようになっていきます。実際に、スコアやランキングを通じて自分の実力がある程度分かってきました。またteratailを通じて全国のエンジニアさんたちとの交流が広がっていったのはやっぱり嬉しかったです。teratailきっかけでTwitterでやりとりしたり、「集まっtail(ユーザー会)」でオフライン上でも仲良くなれたり。

―― 「力試し」や「友達づくり」以外の新たな発見はありましたか?

人の質問に答えながら新たな言語の知識を吸収できるいい機会になると思いました。仕事でプログラミングをやると言っても、私の会社では基本的にJavaを使うので、自分からやっていかないと、他の技術に触れる機会がないんです。その点、teratailには自分が知らない技術や言語のことでもちょっと調べたら分かる質問も多くあります。そういった質問に回答しておくと、今後何かやるときに「そういえばこんなTipsあったな」という状況が増えていきます。そのお陰で積極的に新しい技術や言語に挑戦する姿勢が身につきました。

―― たしかに現場で使う技術には偏りが生じることもありますもんね。

とくに弊社のような業務アプリケーションを作成している会社だと、なかなか新しい技術はやらないんですよ。システムが大きいので。基本は"枯れた技術"です。なので、teratailで気になる言語のQ&Aを眺めているだけでもだいぶ違うと思います。

"質問"があるから発信しやすい

―― 現在のryunixさんがteratailで回答したり、Q&Aをチェックしたりするモチベーションはどこにあるのでしょうか?

なんでしょうね(笑)なんとなく回答しようという気持ちにはなっていますけど……きっとみなさんがニュースサイトを見る感覚と同じ気がします。ニュースを見てコメントを打つような感覚に近くて、もう日常のひとつになっているんですよ。モチベーションというよりは、teratailを見て最近みんなどんなことに疑問を持っているのかな~と。

―― 情報収集の一貫になっているんですね。

そうですね。あまり意識はしていないですが、寝る前にFacebook開くみたいに、他に見るサイトがないとterateilを開いちゃいます。teratailは質問が流れてくる間隔が早いじゃないですか。常に新しい疑問が出てくるから、飽きないんですよね。

―― teratailで回答すると質問者からの返信があると思いますが、どんなメッセージが来ると嬉しいですか?

何よりもまず、質問者の抱えるその疑問が解決に向かうことが大事だと思っています。なので、「ありがとうございます」はあってもなくてもいいですが、何かしらのアクションが欲しいですね。特にベストアンサーをもらえるとやはり嬉しいので、投稿した質問が解決したのならきちんとベストアンサーを選んでほしいなと思います。また、「出来なかった」も言ってくれればこちらは出来るまでお手伝いしますよ。

―― さくっと回答したものの質問者の解決に至らず結果的に時間がかかってしまった、なんてことも……?

ありますね。でもそれは一度手を出してしまったら仕方ないというか。でも、そういう人ほど困っているんですよね。コメントした後に反応ないとあの後どうしたんだろう?見てないのかな?と思ってしまうので、仮に解決しなかったとしても「もう一度調べてみます」とか、一言でも良いので反応いただきたいですね。

―― たしかに質問する側のマナーとして大切ですね。では、「その発想はなかった!」と思う他の回答者の答えにはどんなものがありますか?

昔からその言語に触れてきているであろう方が、歴史的背景など細かなところまで説明されている回答を見ると「へぇ~」と思います。また、すぐに解決済みになったQ&Aの答えも気になります。質問者の疑問を1回で的確に捉え、ズバっと解決策を提示できるのが凄いなと。

―― teratail上で注目しているユーザーはいらっしゃいますか?

トップランカーの方はみなさんすごいなと思います。活動量が違いますよね。私が交流しているトップランカーの中にはひとつの質問に対して2時間くらいかけて回答してくださる方もいらっしゃるようです。でも私の場合はその逆で、30分以上かけても答えられないものは回答することを諦めます。回答するのに時間がかかってしまう質問は、結局質問の範囲が大きすぎるか、不明点が多すぎるかで疑問点が絞り込めていない気がして。私が回答するときも一応コードを書いて実行しますが、それも「ideone.com」のようなブラウザで簡単に実行できるものを使ってやっています。自分の環境で試すまでは私はしません。だから自分以上に丁寧な回答をされている回答者は自然と注目しちゃいます。

―― 最後に、teratailを通じて自分自身に変化はありましたか?

いままで発信する側に回ったことってなかったんです。TwitterなどのSNSも基本は見る側だったし、勉強会やイベントも参加したことがなくて。Web系の会社の方は頻繁に行っているイメージを持つのですが、私のようなスーツを着て仕事をする固い会社の人間のまわりではなかなか聞かないことでした。でも、teratailは質問という"ネタ"がすでにあるので発信しやすいです。回答するために調べたことを別途ブログにまとめている方もいますし。

やっぱり回答が違ったという事態が起きたらイヤじゃないですか。だから、答えるのって最初は勇気がると思うんです。でも、その回答で助かった人がいれば、自分の実力が認められたということになります。だから力試しをしてみたいなという人にどんどんteratailを使ってもらいたいですね。

質問するときも同じです。terateilはたくさんのユーザーがいるからこそ、変な質問はできませんよね。でもなんとかして解決してあげようと思っている熱い思いを持った回答者はたくさんいます。まずは質問して学んで一緒に回答する側になっていきましょう。

―― なるほど。質問する側も回答する側も学んでみんなでコミュニティを作り上げていけるのがQ&Aサイトならではの魅力ですよね。本日はありがとうございました。

会社や言語の垣根を超えて一緒に成長し合うエンジニアたち

ryunix氏が「teratailで回答する理由」をまとめると、下記3点のようだ。

【1】自分の実力が客観的に見えてくる
自分の回答で困っている質問者の課題が解決されれば、自分の実力が認められることになる。またスコアやランキングを通じて客観的な技術レベルを認識するきっかけにもなる。

【2】新しい技術をインプットしながらアウトプットできる
普段使わない言語でも調べれば回答できる質問はある。そういった質問に回答していくことで、新たな知識を貯めることができ、積極的に新しい技術や言語に挑戦する姿勢が身につく。

【3】質問と回答というコミュニケーションを通じて、技術仲間が増える
普段社外のエンジニアと接する機会が少ない人でも、teratai上で全国のエンジニアとのコミュニケーションが可能。teratailをきっかけにオンライン・オフラインでの交流が生まれる。

20代トップランカーとして、質問や回答を投稿するだけでなくコミュニティをも巻き込みteratailを精力的に盛り上げているryunix氏。一見クールに見える彼から「teratailを通じて仲間を増やし、一緒に成長していきたい」という熱い気持ちが感じられたインタビューであった。「質問者の疑問が解決に向かうことが大事」そう語るryunix氏は、これからも質問者にとって心強い存在になるはずだ。質問や回答をしてみて初めて学べることがある。仲間が増えれば、技術について学べる環境もどんどん増える。新たな技術や知識が増えれば、新しい挑戦がどんどん出来る。自分の、そして全国のエンジニアの成長のために"はじめの一歩"を踏み出してみてはいかがだろうか。

次回はいよいよ最終回。国内エンジニアのコミュニティ文化を作り上げてきたterataiエキスパートユーザーであるスペシャルゲストに、エンジニア業界における「シェア文化」の変遷を伺い、エンジニア界の「これから」を探っていく予定だ。最終回もお楽しみに。

執筆者紹介

木下雄策

1988年生まれ、福岡県出身。エンジニア特化型Q&Aサイト「teratail」のDevRel(技術者向け広報)担当。2013年にレバレジーズに新卒で入社し、1年でトップ営業マンとなった後、現在のteratailチームにジョイン。年間30以上のエンジニア向けイベント/勉強会を開催している。好きなものはJavaScript(ただしド素人)とスノーボード。