ということで、予測が秒単位でできることから、どーなるかわからんことまで「素人でも手軽に観察または参加できる」宇宙に関わるあれこれを、サクっと紹介しちゃいます。今回は、前回に引き続き、2017年1~6月の半年分をば。

なお、天文現象を1年分紹介している年鑑の類が、毎年刊行されています。ここではとても書き切れない内容がいっぱい。手帳タイプの1000円くらいから月替わりのカレンダータイプ、そしてDVD・ソフトつきムックで3000円くらいまでですね。それぞれの特徴は、この記事の最後にまとめておきましたので、参考にしてくださいませー。

3~4月

3月5日の20時10分前後の1時間くらい。月の中央にX字型の地形が見えます。太陽光のあたりかたで、月の山脈やクレーターの縁がそう見え、天文ファンは「月面X」と呼んでいます。観察には望遠鏡が必要ですが、一眼レフカメラの望遠レンズで撮影するとチェックできるかもしれません。

4月1日前後の数日は、水星が今年一番の見やすさです。ただ、なんというか、夕方の西の低空にかろうじてって、感じなんですなー。月などの目標物もちょっとつらいので、ここは情報だけにしておきます。

4月1日の夕方に、アルデバランという1等星が月にかくされます。双眼鏡で見ていると、小さな赤い星がだんだん月に近づく様子が観察できます。月を目印にすればいいので、観察は存外簡単ですね。月に隠れるのは、札幌で18時43分、東京で18時45分、福岡で18時33分。月の向こうから現れるのは、札幌で19時45分、東京で19時53分、福岡で19時45分という予報です。見る場所によって時刻がちがうのがおもしろいですな。それだけ月が宇宙単位では近くにあり、小さな天体っていうことでございます。

4月22日はこと座流星群の活動がピークになります。流れ星の数は通常の倍~3倍というところ。1時間空を見続けて数個の流れ星が見えるかなという感じです。春ですが、まだ夜は寒いのでちょっとしんどいかな。

ちょっともどって3月15日~18日に日本天文学会が福岡の九州大学で行われます。学会はだれでも参加して聴講できますが(参加費5000円)、もちろん専門的な内容ばかり。ただ、前後に近隣の別会場で、一般向けの講演会が開催され、結構オオモノや話がうまい先生が講演するのでチェックしたいところですな。

4月17日~23日は科学技術週間です。文部科学省が主導しているので、全国の研究施設の一般公開などが、22(土)、23(日)に集中しますな。特に茨城県のつくば地区は、例年、期間中の1週間JAXA、理化学研究所、高エネルギー加速器研究機構などムネアツな多数の施設が一般公開されます。研究者も大サービスでかなーり楽しいらしいので、期間が近づいたら、ホームページをチェックしてパンフレットをダウンロードするのが吉でございます。

宇宙開発関係では、どうでしょう。

3月6日ごろに、欧州宇宙機関は地球観測衛星センチネル2Bを打ち上げますな。植物の繁茂の具合などをしらべるために、レッドエッジといわれる植物の葉っぱの反射が最大になるところなどをねらったセンサーを使って画像を撮影します。

3月27日には、ロシアの宇宙船が国際宇宙ステーションに向かいます。宇宙飛行士の交代ですな。日本人はふくまれていません。米国、ロシア、フランスの3飛行士が国際宇宙ステーションに向かいます。

4月には、米国SpaceX社の、ファルコン・ヘビーというロケットの初打ち上げが予定されていますな。このロケットは、実現すると現役で世界最大になる超大型ロケットで、NASAは火星探査を考えていますな。実際火星軌道まで13トンの物資を運ぶパワーを持っていますな。ちなみに日本のはやぶさは0.5トンです。はやぶさを25機同時に打ち上げられると思えばいいわけです。すごいですなー。SpaceX社は、ペイ・パルを開発し、電気自動車のテスラ・モーターズを率いるイーロン・マスク氏の会社でございます。

「ファルコン・ヘビー」の想像図 (C) SpaceX

5~6月

5月3日20時30分の前後1時間くらい「月面X」が見られます。3~4月の項目をチェックしてください。だいたい2カ月に1度程度チャンスがあります。

6月9日は、今年一番小さな満月です。月は地球のまわりを円ではなく、楕円軌道でまわっていて、近いところと遠いところがあります。近いときで36万km、遠いときで40万kmほどで、1月のあいだに変化します。あとはどのタイミングで満月になるかで、最大の満月、最小の満月というのが決まります。6月9日は40.6万kmのときに満月というタイミングになるのですな。

6月には、1~2月に騒いだ金星が、明け方の空に見えます。まあこの時期は日の出が早いので、夜更かしして3時すぎくらいに見るというのがよいかと思いますな。ちなみに、金星は白昼の空でも確認が可能です。太陽からどれくらいの角度、どっち方向に離れているかを知っておけば、わりと楽に見つかるのですけど、指導なしだと難しいですな。

宇宙開発では、6月にヨーロッパがまた地球観測衛星センチネル5を打ち上げます。オゾン層の監視や太陽エネルギーの測定などが主な任務ですな。

以下は天文情報に特化した、年鑑類でございます。

天文情報に特化した年鑑類一覧

書名 特徴 価格
天文手帳 手のひらサイズの手帳に、小さな字で毎日の月の出入り時刻や見所など星空情報がぎっしり。ミニ星座早見もついています 980円+税
天文年鑑 天文年鑑のスタンダード。星空情報のほか、各種のデータが豊富。天体観測を趣味とする人向けの編集。ハンディサイズ 1000円+税
藤井旭の天文年鑑 天文年鑑の初心者向けバージョン。毎月の星空情報を中心に、観測のしかたなども紹介。ハンディサイズ 800 円+税
ASTROGUIDE星空年鑑 DVDビデオ・PC&マック用ソフト付きのムック、大判かつカラー版。登録をするとタブレットなどで見られる毎月の星空紹介ページももらえる 2700円(税込)
天体観測手帳 基本は手帳で、それに天体観測のためのデータとガイドが載っている。カラー図をたくさんという体裁。小型望遠鏡までで見やすい現象、トピックが紹介されている 1280円+税
太陽・月・星のこよみ 大判の月めくりのカレンダー。毎日の月の形や、天体現象などが記載。大手書店のカレンダーコーナーや科学博物館のショップなどにもあることあり 1400円(税込)

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。