「ダイヤモンド」は、なかなかおもしろい宝石でございます。最近は、日本でダイヤモンドが発見されたり、ダイヤモンドより2倍も硬いスーパーダイヤモンドが誕生したりと話題にことかきません。今回は、ダイヤの話をちょっとさせていただきたくー。

金、銀、プラチナ…高価なものの代名詞であるこうした物質。それをなんとか、安い材料から作れないか? それをしようとしたのが錬金術でございますね。英語ではAlchemy(アルケミー)。鉛を金に変える賢者の石やら、物質の精エリクシールだの、不老不死をもたらすエリクサーやら、「ハリー・ポッター」やら「ファイナルファンタジー」やら、ソッチ系ではおなじみでございます。

錬金術は、17世紀くらいに、ゆっくり化学へととってかわります。元素というのものが確立すると、金を他のものから作るのは無理とされます。その後。核融合が発見されると、恒星を吹っ飛ばすような超高エネルギーを投入しないとダメとわかったりでございます。

ま、金、銀、プラチナを、安い材料から作るのは、人類には無理。なのですね。

ところで、金やプラチナより高価なものがありますね。ダイヤモンドでございます。まあ、ダイヤは溶かして合体できないので、直接比較するのは、どうか? というのはおいておいて、金やプラチナはグラムあたり5000円くらい(2015年7月現在)でございます(詳細な価格は田中貴金属さんとかでご確認ください)。ダイヤモンドは1カラットで、20万とか60万円とかくらいですな(これは適当にあちこちでみた価格を元にしています)。1カラットは0.2グラムくらいですから、もうドヒャーでございます。まあ、宝飾品でない工業用ダイヤモンドはぐっと値段が下がって、金よりグラムあたりで一桁安いんですけどね。

このとてつもなく高価なダイヤモンドですが、金や銀とちがって、人工的に作れます。そう、鉛筆の芯と同じ材料、グラファイト(黒鉛、炭の一種)から作れるのでございます。(住友電工などが手掛けてます)。しかも、宝飾品クラスのダイヤモンドも販売がはじまっているのだそうです、GEMSIS社という会社だそうで。値段は…うーん天然ものと変わらんようにみえますなー。縁がない世界すぎて、ヨクワカラナイケド。

ということで、ダイヤモンドは高価な部分と、リーズナブルな材料の部分と、両方があるのですね。しかし、工業用、あるいは人工につくられるものでも、共通する性質があるのですね。それは、いうまでもなく「硬い!」ことです。地球上で最も硬い物質。それがダイヤモンドなのですな。

硬さを表すので有名なのは、「モース硬度」というやつです。1~10までの基準物質を用意し、その物質をこすって傷がつけば、より硬いという風に調べます。ググればわかることですが、それぞれの物質を示しますと。こんな感じ。■の後の数字は、絶対的な硬さを数字で表したものです。ダイヤモンドは滑石の1500倍硬いってことですな。(参考:ClassicGems.netなど)

モース硬度 材料 絶対硬度
10 ダイヤモンド ■1500
9 コランダム(ルビーとかサファイアとか) ■400
8 トパーズ ■200
7 石英(ガラスと成分同じですが、より硬いです) ■100
6 正長石(白く不透明な石はたいていこれです) ■72
5 燐灰石(アパタイト、要するに歯の成分ですな) ■48
4 蛍石(フローライトといって高級レンズなどにも使われます) ■21
3 方解石(大理石とか) ■9
2 石膏 ■3
1 滑石(チョークとか) ■1

これまた、よく知られていることですが、ダイヤモンドを作るのは炭素で、炭素の結晶がダイヤモンドなのですね。炭素はほかの元素とくっつきやすい元素です。で、いろんなものが炭素にくっついて、様々な物質をつくっています。それだけで「有機化学」というジャンルが成り立つくらいでございます。

その炭素がおたがいにくっつきあって、がっしりスクラムを組んだダイヤモンドはそりゃーまー、硬いってわけなんですな。

ただ、ダイヤモンドは、もろいという問題があります。鉄のようにしなることができないので、方向によってはもろく、衝撃で割れてしまうことがあるのです。鋼鉄の棒とダイヤモンドの棒で、もしチャンバラをやったら、ダイヤモンドの棒が割れてしまうだろうという話があるくらいでございます。

そうした欠点を克服した、「ハイパーダイヤモンド」があります。人工ダイヤモンドで愛媛大学と住友電工が開発した「ヒメダイヤ」ですね。マイナビニュースにもこんな記事が過去にありましたよ

また、ダイヤモンドは非常に熱を通しやすいのです。そのため、さわると、手の熱をあっという間にうばってしまい、ひんやりします。もちろん、ダイヤモンドがあたたまっていれば、熱く感じるはずでございます。また、熱が伝わりやすいため、息をふきかけても曇りません。ニセダイヤの見分けかたとして知られている方法です。前に、板状のダイヤモンドで、氷を切るっていうのをやらせてもらったことがあります。手の熱がどんどん氷に伝わって、ずんずん切れるので楽しかったです。

一方、ダイヤモンドは電気を通しません。グラファイトは電気を通しますから、シャーペンの芯を使って、豆電球をともすなんてことができたりします。これは、電気の正体である電子の受け渡しができるからなのでございます。ダイヤモンドはカチカチに炭素がくっつきあっていて、受け渡しをする余地がないんですなー。

ただ、ほんのちょっと混ぜモノをすると電気を通すようになります。半導体にすることもできます。硬くて安定なので、夢が広がりますな。また、導電性ダイヤモンドも作れます。カタイやつもいったん懐に入れば、ペラペラと話すような。ちとちがうかー。

さらに、ダイヤモンドは炭ですから、燃えます。といっても、燃えるためには、酸素が入ってこないといけないのですが、硬いのでなかなかそうはいきません。木炭みたいに、おいそれとは燃えないんですね。

ま、しかし、パイプの中に入れ、酸素を吹き付け続け、熱すれば燃えます。えー、いいビデオがおました。

前代未聞! ダイヤを燃やす!? NIMSオープンハウス2014

あと、なんと失敗談+レシピを公開している先生がおました。

あ、この先生の実験集もってるわ。中学校でこんな授業してもらったら、楽しいでしょうねー。なに? 実験キットがある?。これか。ダイヤモンド原石が入っていて6000円ちょっとですな。ガストーチはまあ、ホームセンターで買えるとして、別途酸素ボンベを用意しないといけないみたいですな。医療用のは処方箋がいるから無理ですなー。酸素溶接用のボンベを1000円くらいで買えるらしいですな。やってみよーかなー。

様々な形状にカットされたダイヤモンド (C)GIA/Jeff Scovil

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。