デジタルハリウッド専任講師の栗谷幸助です。前回は、Webデザインの流れを料理番組風に紹介しましたが、個人のWebサイトは別として、実際の制作現場では その全てをひとりで行うということはほぼありません。Webサイトの規模にもよりますが、小規模なものでも数名、大規模なものだと数十名にのぼるメンバーで作業を行っていきます。そこで、今回はWeb業界の職種とその役割について紹介していきたいと思います。

クライアントと制作現場の橋渡し役「Webプロデューサー」

仕事でWebサイトを制作する場合、当然のことながらお客様(クライアント)がいます。情報発信をしたいクライアントの要望を汲み取り、それをWebサイトという形にしていくのが、仕事としてのWebサイト制作です。

そこで必要となるのが、クライアントと制作現場の橋渡し役となる人で、それを「Webプロデューサー」が担うことになります。

クライアントはWebそのものについて決して詳しい訳ではありません。昨今はWebに対する理解も高くはなってきていますが、それでも誤った知識を持っている場合もあります。Webプロデューサーは、ヒアリングやオリエンテーションを通して、クライアントに対して正しい方向を指し示してあげる必要があるわけです。そして、それを正しく制作現場に下ろす。そのためには、営業力やクライアントの立場に立った企画力、そしてコミュニケーション力が必要になります。

制作現場を取り仕切る「Webディレクター」

Webプロデューサーから制作現場に案件が下りてきたら、次に制作作業を行っていくことになります。前述したように現場では複数のメンバーが作業をしていくことになりますが、それぞれのメンバーが自分の思いだけで作業を進めてしまうと、出来上がったWebサイトはデザイン的にも中身的にも良いものにはなりえないでしょう。

そこで必要となるのが、各メンバーに対しての的確な指示出しです。このように制作物のこまかな監修を行う人、それを「Webディレクター」が担うことになります。

制作メンバーに対して的確な指示出しを行うためには、クライアントの要件を技術的な仕様という形に書面化(仕様書)する必要があり、Webサイト構築のための幅広くそして深い技術的・知識的スキルを持たなければなりません。また それを遵守させる指導力も必要となるでしょう。

そのようなこともあり、Webディレクターは制作メンバーとして数年間活動を行ってきた上でのステップアップとして従事する方も多いです。大変な仕事である反面、Webサイトの成否の如何を握る、とてもやりがいのある役割であると思います。

実は前述をしたWebプロデューサーとWebディレクターは兼務となっている場合も多いのが実際のところです。クライアントへの技術的なオリエンテーションはWebディレクターが行うべきものでしょうし、クライアントの意向が現場に伝わりやすいということもあるでしょう。

前回のコラムに対して、Twitter上で「盛り付けの段階でひっくり返されることもあるなー」なんて制作者からのつぶやきもお見かけしましたが、まさに大詰めの段階でそのようなことが起こらないように手腕を振るうのが、Webプロデューサー・Webディレクターなのではないかと思います。

専門性が求められる「Webデザイナー」

そして、制作の実作業を行うメンバーが「Webデザイナー」です。Webデザイナーは前回のコラムでご紹介をしたWebデザインの流れを全て行うのか。もちろんそのような現場もありますが、ここでも役割分担がなされる場合があります。

「Illustrator」や「Photoshop」などのグラフィックソフトを駆使し、Webサイトのインタフェースデザインを中心に行うメンバーもいれば、そのデザインを多くの種類やバージョンのWebブラウザで表示しても遜色がないようにHTMLやCSSのコーディングを行うメンバー(コーダー、マークアップエンジニアなどと呼びます)、アニメーションソフトである「Flash」を駆使して、動きのあるWebサイトの構築を中心に行うメンバー(Flashデザイナー)もいます。そのほか、サイトの規模や内容に応じて、コピーライター、フォトグラファー、プログラマーといったメンバーも加わってきます。

このように見ると、現在のWebデザイナーはスキルを幅広く持つこともさることながら、"これだけは他人に負けない!"というような専門性も求められているのではないでしょうか。

以上のような役割分担をもって進んで行くのがWeb制作の現場です。あなたはどのような役割を好みますか? もしくは、どの役割に他の方と比べ優位性をお持ちでしょうか? ぜひ あなたにしかない力でWebの世界を作り上げて行ってください! そして、それが見出せないでいるのなら、デジタルハリウッドにいらしてください。

次回はWeb業界の雇用形態と平均収入などについてご紹介していきます。