データセンターの概要や利点について、皆さんの疑問に答えるかたちでご紹介している本企画。今回からは、データセンターが提供するサービスの種類について紹介していきます。

Q. データセンターサービスで「ハウジング」という言葉を見つけました。
  馴染みのない言葉なので想像もつきません。どういったサービスなのでしょうか?

Answer.
ハウジングは、一言で説明すれば、データセンターという"場所"を提供するサービスです。実際の運用に必要な機材は、すべて自分で用意して運用するかたちになります。

なお、データセンターサービスは、大きく「ハウジング(コロケーション)」、「専用サーバ」、「ホスティング(共用サーバ)」、「VPS(Virtual Private Server : 仮想専用サーバ)」、「クラウドサービス」の5種類に分けられます。ハウジングは、その中でも最も一般的なものと言えるかもしれません。

「施設」だけを貸すのがハウジング

ハウジングは、英語で書くと「Housing」。これを日本語に直訳すると「住宅提供」になります。すなわち、ハウジングとは、契約者に対して建物を貸し出すサービスのことを指します。

前回、前々回と説明してきたとおり、データセンターはサーバの設置に特化して建設されている施設です。ネットワークや電力のバックアップ設備がありますし、建物も頑丈にできています。火災の際には、水ではなく不活性ガスが噴出され、他のサーバを極力壊さないかたちで鎮火する仕組みになっています。さらに言えば、データセンターが建てられる場所に関しても、検討が重ねられ、地震や洪水などの災害が起きづらいところが選ばれています。

そうした建物にサーバを置くことで、オフィスや倉庫に設置するよりも安全かつ効率的で、もしものことがあっても継続して運用できるようになります。このようなメリットを享受したいユーザーが利用するサービスがハウジングです。

設置も運用も自分で! システム構成の自由度の高さが魅力

先に挙げた5つのサービスの中で、ハウジングが他のサービスと大きく異なるのは、サーバやネットワーク機器をユーザー自らが用意して設置するという点です。詳細は次回以降に説明しますが、専用サーバ、ホスティング、VPS、クラウドサービスは、データサービスセンター事業者が用意した機器を利用するかたちになります。それに対して、ハウジングでは、場所だけ借りて、自分で所有する機器を設置しに行き、運用することになります。

自分で用意し、自分で運用しなければならないため、相応の手間がかかる一方で、好きなハードウェアを選べるというメリットもあります。高機能、高性能のサーバを設置することもできますし、アプライアンスと呼ばれる特定の機能向けの専用マシンを導入することも可能です。

したがって、例えば、各種のセキュリティアプライアンスを多段的に設置しなければならないような高いセキュリティ要件が求められるシステムや、(次回以降で紹介する)クラウドサービスではコストが見合わないほど多大なコンピューティングリソースを消費するシステムなどでは、必然的にハウジングが選ばれることになります。

なお、ハウジングを提供する企業では、ネットワークの配線やバックアップテープの交換、機器の設置、故障パーツの取り換えなどを代行するオプションサービスを提供しているため、ちょっとした作業であれば現地に赴かなくても済むことが多いようです。また、単純にケーブルを挿したり、電源をON/OFFしたりといった簡単な作業であれば無償で行ってくるところもあります。