ChatGPT 4oのコンテキストウィンドウは12万8000トークンです。日本語であれば約10万文字くらいのテキストを入力し、作業してもらうことができます。これまで紹介したように、論文や小説を入力して要約してもらう、ということもできますが、今回は大量のデータをChatGPTに分析してもらいましょう。Facebookの自分の投稿やGoogleマップに投稿された口コミ、書き溜めたブログ(筆者の場合は本連載)などの情報から、さまざまなインサイトを得るプロンプトを紹介します。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第30回

    ChatGPTに大量のデータを分析し、要点だけ教えてもらう

Facebookの投稿から投稿の傾向とブランディングのアドバイスを分析

Facebookユーザーであれば、自分の投稿を分析してみると面白いのでお勧めです。日記のように使っている人も多いと思いますが、長年書き込んだデータには素の自分が出ているものです。他の人にどのように見られているのか、改善するにはどうすればいいのか、などを聞いてみましょう。

Facebookの過去の投稿は「アカウントセンター」の「アカウント設定」から「個人データをダウンロード」を開くことで入手できます。期間を指定し、自分が投稿したすべてのデータをダウンロードしましょう。容量にもよりますが、申請してからダウンロードが可能になるまで数日かかることもあるので、時間のある時に作業しましょう。

ダウンロードしたファイルを解凍し、「あなたの投稿、チェックイン、写真、動画」のリンクを開くと過去の投稿を確認できます。ChatGPTに分析してもらいたい期間の投稿を選択し、テキストファイルなどにコピペしておきましょう。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第30回

    Facebookの「アカウントセンター」から過去の投稿をダウンロードできる

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第30回

    ダウンロードしたファイルを解凍し、「start_here.html」を開くと、投稿を表示

作成したテキストファイルをChatGPTにドラッグ&ドロップしてアップロードし、プロンプトに聞きたいことを入力しましょう。まずは、投稿者の人柄を分析してもらいます。今回は2023年1月から現在までの投稿、約10万文字、8万トークンのテキストを読み込ませました。

コンテキストウィンドウ内のテキストであれば意外と全部読んでくれており、分析も正確です。ただし、少々オーバー気味に褒める傾向があります。厳しく添削して欲しい場合は、その旨もプロンプトに入れ込みましょう。

また、古い投稿について質問しても、さくっと返答してくれます。例えば、テレビに出演した時の投稿で、「テレビに出演」といった単語を使っていない投稿も、「テレビに出演した時の投稿を抽出してください」というプロンプトで見つけてくれます。本来、ChatGPTを検索用途として使うのは向いていないのですが、Facebookの検索機能が貧弱すぎるので、キーワード検索では検索できない内容を抽出したいときに利用しましょう。

  • プロンプト

    2023年、2024年のFacebookの投稿です。投稿者の人柄や嗜好、性格などを分析してください。

  • 出力
  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第30回

    投稿内容から投稿者の人柄や思考、性格などを分析してくれた

投稿データに含まれることであれば、チャットでやり取りしながらいろいろ聞き出せます。そんな中で、役立ちそうな項目を4つピックアップし、1つのプロンプトを作ってみました。

まずは、他社から見える投稿者の人物像です。辛口の意見を求めてみました。次に、投稿からどんなインサイトが得られるのかも聞いてみました。3つ目が、ネガティブ投稿に関してです。SNSで他の人のネガティブな投稿に触れるのは嫌なものですが、自分がやっていないかどうかチェックしておきましょう。

そして、SNSでブランディングするアドバイスも聞いてみました。筆者はFacebookをブランディングに使っていませんが、副業をスタートしたり、フリーランスになったばかりの人にとっては有益なアドバイスがもらえる可能性があります。

今回のテストでは、なかなか心に刺さるアウトプットが得られました。ChatGPTに辛口の人物評論家というロール(役割)を与えたので、褒めつつも「頻繁に直面する困難や問題に対して愚痴をこぼす」や「少し皮肉屋で、人間らしい弱点を持つ人物」などと指摘されました。人に言われたら頭にくるかもしれませんが、ChatGPTに言われるのなら受け入れて改善するしかありません。

インサイトも褒め過ぎのような気がしますが、納得です。心配だったネガティブ投稿については、大きな問題はなさそうでした。しかし、テレビ局の対応に関する不満などを書き込んでいると指摘がありました。

確かに、そんな記憶もあります。ChatGPTは「読者に対して少し過激に映る可能性がありますが、投稿者の本意は自身の意見を強調することであり、攻撃的意図は薄いと判断されます」とフォローしてくれているので、今後は気を付けようと思います。

ブランディングのアドバイスもしてくれました。ギャラをアップさせたいなら、専門性を強調し、そのレビューを積極的に発信せよ、とのことです。もはや、ChatGPTはパーソナルコンサルタントとして活用できるレベルだと思います。

  • プロンプト

    Facebookに投稿したテストファイルを添付します。
    1:あなたは辛口の人物評論家です。投稿を読んだ読者には、投稿者はどのような人物に見えますか?
    2:あなたは凄腕のアナリストです。内容を最初から最後までよく読んで、総合的なインサイトを3個、詳細な分析とともに教えてください。
    3:あなたは厳しい目を持つ法曹です。攻撃的、反社会的、極度にネガティブな投稿があれば3個教えてください。それぞれどんな点を直すべきかアドバイスを付けてください。特になければ、その旨報告してください。
    4:あなたはSNSコンサルタントです。投稿者のブランディングに役立つようなアドバイスをください。投稿者はライターです。報酬の単価を上げたいと考えています。

  • 出力

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第30回

    辛口に評論してくれた

InstagramのデータもFacebookと同じようにダウンロードできます。ちなみに、X(Twitter)は設定の「アカウント」→「データのアーカイブをダウンロード」からダウンロードできます。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第30回

    Twitterのデータもダウンロードし、分析できる

Googleマップの口コミを分析して改善に活かす

小売や飲食などの店舗を経営しているなら、Google口コミは気になるところでしょう。顧客からのフィードバックは経営改善のための価値ある情報なのですが、口コミの件数が多いと読むのに時間がかかりますし、低い評価の場合、人によっては攻撃的な文章になっています。

そこで、この情報を丸ごとChatGPTに入れて、分析してもらいましょう。瞬時にインサイトを得られますし、目にしたくないネガティブな文章も優しくまるめてもらうこともできます。

実際に、筆者が経営していた飲食店に投稿された口コミを読み込ませて5つのインサイトと3つの改善案を出してもらいました。「改善の余地がある点(マイルドな表現)」とわざわざマイルドにしていると書くのは余計なお世話ですが、「料理のバリエーションが少ない」や「混雑時のサービスが遅い」などといった評価があると教えてくれました。

直接読んでしまうと、書いたと思われる顧客の顔が浮かび、イラっとしてしまうかもしれませんが、インサイトとしてまとめられると受け入れやすくなります。改善案もまったくその通りで、これからは経営会議にはChatGPTも参加してもらった方がよいかもしれません。

社内報に載せるために、よい口コミをピックアップして文章にまとめたり、口コミに対する返答の文章を考えてもらったりなど、いろいろな活用が考えられます。リピーター獲得に役立つところでもありますので、ChatGPTを賢く使い倒しましょう。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第30回

    Googleマップの口コミをまとめて選択し、コピーする

  • プロンプト

    添付ファイルはGoogleマップの口コミのテキストです。この店舗経営に有用なインサイトを5つまとめてください。低い評価を元にしたインサイトは、従業員が読んで傷つかないように、マイルドな表現にしてください。その上で、改善案を3つ提示してください。

  • 出力

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第30回

    5つのインサイトを提示してくれた

書き溜めた原稿を分析してアドバイスしてもらう

メールやブログ、プレゼン資料、日報など、テキストデータはChatGPTに読み込ませることで、整形したり校閲したりできます。これらのテキストデータが大量にある場合は、まとめてChatGPTに入れて分析してもらうことも可能です。

今回は、本連載の本文を読み込ませてみました。納品前のテキストすべてを1ファイルにまとめてChatGPTにアップロードします。普通に分析させるとべた褒めしてきたので、「あなたは辛口で批判的な編集者です」とロールを指定しました。

文体の癖やオリジナルの表現、誤字脱字、日本語の誤用、そしてアドバイスをもらうようにしてみました。これは、原稿に合わせて、欲しい情報を入れ込めばよいでしょう。メールであれば、敬語の使い方を重点的にチェックしてもらったり、日報では業務内容などにフォーカスして分析してもらうことができます。

結果は心にぐさぐさ刺さるものでしたが、年を取ってこのように指導されるのは値千金です。どれも心当たりがあるまっとうな指摘で、勉強になります。

得られたインサイトとしては「比喩の選び方がやや単調」、「繰り返しの多さが冗長に感じられる部分があります」、「『電子レンジで卵を温めて爆発させる』という表現は一部の読者には分かりにくい可能性があるため、文脈に応じた説明が必要」、「全体的に、技術的な用語の解説が不足している部分があり、一般読者が理解しにくい」といったところです。

  • プロンプト

    あなたは辛口で批判的な編集者です。連載の原稿をまとめたテキストファイルを添付します。著者の文章に関する詳細な分析をしてください。
    ■文体の癖
    ■オリジナルの表現
    ■頻出する誤字脱字
    ■日本語の誤用
    ■良い原稿にするためのアドバイス

  • 出力

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第30回

    原稿に関するアドバイスをしてくれる

以上が、Google、Facebook、ブログのデータをChatGPTに分析してもらうプロンプトになります。元データによって得られる分析は異なるので、まずはさまざまなプロンプトでトライ&エラーを繰り返しましょう。

蓄積したデータは宝の山です。ChatGPTがあれば、高価なツールも高度な知識も必要ありません。ファイルをアップロードして質問すればいいのです。まずは、SNSやGoogle、手持ちの原稿から分析にチャレンジしてみましょう。