論文や白書、プレスリリースなど、PDFで公開されている文書は情報の宝の山です。1つ1つじっくりと読み込んで分析したり、インサイトを得たいところですが、時間がいくらあっても足りません。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。

そこで、ChatGPTにPDFを読み込んでもらい、こちらのニーズに合った情報提供をさせててみましょう。圧倒的に短時間でPDF文書の内容を理解することができます。

今回は、難解なPDF資料をChatGPTに読ませて情報収集を10倍深く早く行うプロンプトを考えてみましょう。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第21回

    ChatGPTでPDFからの情報収集を効率化してみよう

海外の論文「Attention is all you need」を読んでみる

今の生成AIの基礎を築いたのは、2017年に登場したGoogleの「Attention is all you need」という論文です。

この論文を読んで、近い将来生成AIが世界を変えると信じ、AI業界に身を投じたり、起業したりする人がたくさん出ました。生成AIに興味があるなら、ぜひこの論文のことも知っておきたいところです。

しかし、もちろん原文は英語です。翻訳サイトで日本語にすることはできますが、それでも内容を理解するのは困難です。有名な論文であれば、日本語の解説記事が出ることもありますが、マイナーな論文だったり、最新の論文だとそれもありません。

そんな時はChatGPTの力を借りましょう。ChatGPT 4にPDFをドラッグ&ドロップし、要約してください、とプロンプトを入力します。

  • プロンプトと出力
  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第21回

    PDFをドラッグ&ドロップし「要約してください」とプロンプトを入力する

要約はしてくれたようですが、これではよくわかりませんね。この論文は7章あるので、それぞれの章を要約してもらいましょう。いろいろと条件を付けたいので、プロンプトを構造化しました。

例えば、論文の最初から最後まで処理させたいので、「すべての章を要約してください」というプロンプトを入れてあります。

しかし、最初は条件の一番下に書いたので、それぞれの章は1文だけシンプルに要約し、それとは別に全体の要約を長文で書く、という結果になってしまいました。この辺りはトライアンドエラーでブラッシュアップしていくしかありません。

また、普通に要約させただけだと内容が難しいので、大学生にもわかるように要約してもらうようにプロンプトを追加しました。文字数は400字としましたが、ChatGPTでは日本語でトークンの扱いが異なり、実際は半分くらいになるので、わざと多く指示しています。 * プロンプトと出力

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第21回

    実際は半分くらいになるので、わざと多く指示する

トータルで1000字以上の要約が得られました。内容もややわかりやすくなっていますが、それでももう少し詳細な内容を理解したいところです。そこで、章を指定して、その部分だけを1000字で解説してもらいましょう。

さらに、噛み砕いて高校生にもわかるように要約してもらいましょう。セッション内で追加のプロンプトを入力するのであれば、ファイルの再アップロードは不要です。そのまま、2章のみを2000字で書くように指示します。文字数は例のごとく、希望の2倍を指示します。

  • プロンプトと出力
  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第21回

    高校生にもわかるように要約してもらう

きっちり、1000字以上でわかりやすく解説してくれました。これなら、難しい論文も簡単に理解することができます。もちろん、わからない部分があれば、プロンプトで質問すればいいだけです。「Transformer」を英語ではなくカタカナで書いてほしい、という希望にもChatGPTは素直に応じてくれます。

気の利いた質問が思い浮かばなければChatGPTに考えてもらえばいい

要約を読んで、内容を大体理解したら、今度は知りたいことをさまざまな角度から質問してみましょう。資料の著者を質問攻めにするようなものなので、とても有益な情報が得られる可能性があります。

とは言え、すぐに気の利いた質問が思い浮かばないということもあるでしょう。そんな時は、その質問をChatGPTに聞いてしまえばいいのです。ChatGPTに入力するべきプロンプトをChatGPTに考えさせるのは、基本テクニックの1つです。

通常、日本語でプロンプトを入れると、日本語で返ってくることが多いのですが、この質問だと英語になることが多かったので「日本語で」と追加しています。

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  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第21回

    白書を深く理解するために行うべき5つの質問を日本語で教えてもらう

素晴らしいですね。資料の内容を理解していないと出てこない質問です。では、この質問に回答してもらいましょう。PDFを元に、出力された質問に回答するように指示すればOKです。

それぞれ100~200字で回答しており、このPDFで押さえるべきポイントをさくっと把握することができました。

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  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第21回

    質問の回答を詳細な日本語で生成してもらう

せっかく気の利いた質問なのだから、100字で回答されるのはもったいない、というのであれば個別の回答を詳細に紹介してもらいましょう。例えば、1番の質問だけを詳細に回答してもらったところ、663文字の回答が得られました。

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    個別の回答を詳細に紹介してもらう

ChatGPTに決算報告書を読み込ませて将来性を教えてもらう

上場企業は決算資料をPDFで公開しています。誰でも閲覧できるので、興味のある企業の決算資料は自分で読んで、将来性を知っておきたいところです。しかし、少なくとも数十ページある資料を読み込むのは専門家でなければ難しいかもしれません。

そこで、ChatGPTに解説してもらいましょう。今回は、パナソニックホールディングスが2024年2月に公開した2023年度第3四半期の決算概要PDFを利用してみます。

まずは、決算報告書を読むためのポイントをChatGPTに聞いてみましょう。将来性を把握したいだけなら3ポイントくらいでもいいかもしれませんが、ここでは5ポイント聞いてみました。

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  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第21回

    決算報告書を読むためのポイントをChatGPTに聞く

では、決算概要のPDFファイルをアップロードし、プロンプトを入力します。ChatGPTのロールは「プロの経営アナリスト」にして、PDFを分析してもらいます。

文字数を多めに出力してもらいますが、その際に偽の情報を混ぜられると困るので創作禁止にします。なぜか英語で出てくることが多かったので、ここでも日本語指定にします。また、PDFのソースを入力して来るのですが、今回は不要なので外しました。

フォーマットを指定し、先ほど出力してもらった5つのポイントを記載し、何を解説するのか入力します。そして、一番聞きたい成長戦略と将来性は4番目に出力されましたが、最後に持ってきたうえ、2000字と多めに出力させるようにします。

テストしたところ、ふわっと文字数少なめでまとめようとするので、再読テクニックやエモーショナルプロンプトを最後に入れました。

  • プロンプト
  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第21回

    プロの経営アナリストとして回答してもらう

  • 出力
  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第21回

    わかりやすくまとめてくれた

素人にもわかりやすくまとめてくれました。もしそれぞれの項目をもっと詳細に知りたいなら、指示する文字数を増やすのではなく、個別に質問したほうがよいでしょう。

以上が、難解なPDF資料をChatGPTに読ませて情報収集を10倍深く早く行うプロンプトの作り方となります。

これまで読むのにとても時間がかかっていたり、そもそも読むことをあきらめていたPDFをサクッと読めるのはとても効率がアップし、時間の節約になります。情報収集の鮮度や精度も上がるので、ぜひ試してみましょう。