太陽電池 挿絵

今回のテーマは「太陽電池(太陽光発電)」だ。

もうこれは説明不用と思うが、太陽の光で発電するシステムである。

太陽光発電ユーザー・カレー沢薫の実感

太陽電池も随分身近なものとなり、自宅に太陽光発電装置であるソーラーパネルがあるという家も多いのではないか。我が家にもある。

自ら進んで取り付けたというわけではなく、住宅メーカーの担当者が「昨今、家を新築するのに太陽光パネルをつけないのは正気ではない」というノリで、それに対し「狂気の沙汰ほどおもしろい…」と抗う元気もなかったので、そのまま我が家は太陽光発電住宅となった。

一応、住宅メーカーの説明では、太陽光発電をつけると、年間の電気代はほとんどタダになるということだった。そんな上手い話が、と思うかもしれないが、これはあながち嘘ではなかった。季節によって、発電量と消費量に差はあるものの、トータルすると本当にトントンぐらいになったのだ。

ただ、これは「平日、家族全員が会社に行くため、日中家が無人になる」という前提の話だ。私はことし6月頃に会社を辞める。つまり無職になり、1日中家にいることになるため、今年度は大幅な赤字が予想される。

我々が憎んで止まない「会社へ行く」という行為だが、それ自体が大きな節約になっている、ということである。

だが、それでも電気代が「実質無料」という、ソシャゲのガチャ廃人がよく言うような状態なら、確かに太陽光発電をつけないのは正気でないような気がする。

しかしガチャも、目当ての物が出て結果的に「実質無料」になろうとも、最初にガチャを回す金がいる。それと同じように、まず太陽光発電装置を取り付ける費用が必要なのだ。

自分は、「家を建てる」という人生で一番金銭感覚が狂うドサクサに紛れて太陽光発電も付けたので、それ単体にいくらかかったか忘れたが、少なくとも30円とかではなかった。

そのため、たとえ電気代が実質無料になっても、装置代の元を取るころには、経年劣化でまた改修の費用が必要になっている可能性が高いのだ。よって、現時点では太陽光発電が本当に得かと言うと、かなり「微妙」なラインなのではないか。

ただ、太陽光発電装置がついた家は「地球に優しい」という理由で、何らか県から優遇措置があったと記憶している。やはり人間、ただ地球に優しくしろと言われても無理であり、「優しくした代」があってはじめて優しくなれるのだ。

自信を持って設置できる太陽電池へ

しかし太陽光発電とて、情弱を無限ローンに陥れるために存在しているわけではない。いつまでも「微妙」ではダメなのだ。太陽光発電技術の研究は今でも進められている。

現在の太陽電池は大半がシリコン素材のようだが、次の素材として「ペロブスカイト」が注目されている。シリコンは「ああ君か」という割と聞きなれた素材だが、「ペロブスカイト」は完全に「誰や君」という感じだ。

「ペロブスカイト」がどういう素材かは置いておいて、このペロブスカイト太陽電池にどのような利点があるかというと、まずシリコンより安価だという。これにより初期費用問題が緩和される。

またシリコンは、厚く、曲げることが出来ない素材のため、自ずと設置場所が限られていた。だがこのペロブスカイトはシリコンより柔軟で軽量なため、今まで置けなかった場所にも太陽電池を設置することができ、設置場所が多くなれば当然発電量も増える。

また、肝心の電気変換効率もシリコンが25%程度なのに対し、30%を上回るよう研究が進められており、将来このペロブスカイトが主流になるのでは、と言われているそうだ。

おそらく私の自宅の屋根についているのはシリコン太陽電池だと思うが、その内、ペロブスカイトかシリコンか、という話になり「ペロブスカイト太陽電池をつけないなんて正気じゃない」という時代がくるかもしれない。

しかし、太陽電池を家につける以前に、「このご時勢、何十年ローンで家を建てようという発想自体が正気じゃない」という意見をよく見るようになった。そうは言っても、愚かにも何十年ローンで家を建ててしまったからには、その選択が正しかったと思うしかない。元がとれるかどうかもわからない、太陽電池を付けたのもきっと正しかったのだ。

技術の発達によって、早く自信を持って「正しかった」と言える太陽電池になってほしいものである。

<作者プロフィール>

著者自画像

カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集、「ブス図鑑」(2016年)、「やらない理由」(2017年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2018年4月17日(火)掲載予定です。