三井物産マシンテック本社があるビル

セキュリティの向上と業務効率化を目的に、iPhoneとDMEを組み合わせて導入しているのが、工作機械の専門商社である三井物産マシンテック(東京)だ。

同社は、日本全国および海外でもビジネスを展開しており、一営業所がカバーする範囲は非常に広い。たとえば、東北営業所では東北6県を担当しており、月曜日に出発した営業担当者がそのままエリア内を移動し、木曜日や金曜日に営業所へ戻るというような働き方も頻繁に行われる。そのため、外出先でも仕事を続けるためのモバイルツールは必須ともいえるアイテムとなっていた。

同社では当初、ノートPCとPHSの通信カードを利用していたが、世の中のセキュリティ意識が高まる中、業界的にもPCを持ち歩くことが問題視されるようになったという。

経営サポート室 情報システム シニアコーディネーターの佐々木克人氏

「PCを持ち歩いてセキュリティは大丈夫なのか、といわれる業界です。モバイル専用端末の導入を検討し、実際にBlackberryを導入したのが2008年頃です」と語るのは、経営サポート室 情報システム シニアコーディネーターの佐々木克人氏だ。

端末の選定は、ノーツのメール送受信ができること、ブラウザ経由でワークフローが利用できることを条件に選定されたという。

直感的な操作でiPhoneに乗り換え

その後、Blackberryは2年間利用され、さらに新機種へのアップグレードも行われた。ただ、Blackberryは現場では利用しやすい端末とはいえなかったようだ。基本的な操作に関する問い合わせが多く、情報システム部門の大きな負担になっていたのだ。

「3年使っても基本的な質問が多く、対応が大変でした。また、Blackberryのメール連携機能は非常によかったのですが、ブラウザの機能は力不足だと感じていたこともあり、端末の乗り換えを検討したのです」と佐々木氏は説明する。

乗り換え候補となったのはiPhoneだ。すでに佐々木氏が個人的に利用し、直感的に使える快適さを実感していた。そして、サポートの軽減も期待できることからiPhoneを選択。80台以上を一括導入した。

「iPhoneは周りにユーザーが多いため、基本的な使い方で困ったら家族や友人に聞くということができます。また、充電バッテリーなどの周辺機器も豊富で、iPhone用と書いてあるものを買えば大丈夫です」(佐々木氏)

導入時には佐々木氏自身が全国の営業所をまわって、簡単な使い方を説明したが、翌日にはだいたい使えるようになっていたという。そのため、運用を開始してから情報システム部門にほとんど質問が来なくなったという。

使いやすさを損なわないセキュリティが魅力

一方、同社は工作機械専門商社として多くの企業の機密に関わることが多く、モバイル端末にも強固なセキュリティを必要としている。

「自動車製造工場等のラインで組み立てを行っているロボットをはじめ様々な製品、部品を製造する工作機械が当社の取扱い商品です。これから生産される新商品の情報はもちろん、国の重要機関でも採用されることがあるため、常にお客様の機密情報を扱っているという状態です。そのため、通常よりも厳しいセキュリティが必要でした」(佐々木氏)

そして、iPhoneの直感的な利用を妨げずにセキュリティを確保するのに役立っているのが「DME」だ。

iPhone導入にあたって必須条件となったのは、Blackberryでできていたことの再現で、具体的には、ノーツとのメール連携、ブラウザベースでのワークフローの利用、端末の一括管理といった機能や、セキュリティ面では情報の暗号化、厳重なパスワードによる管理、リモートワイプなどだ。

DMEのメール画面(内容は三井物産マシンテックとは関係ありません)

「セキュリティやMDMのさまざまなツールを試用した中で、DMEがスバ抜けて高性能でした。ほかのソリューションはフィーチャーフォン向けのものをiPhoneに適用させたものが多く、直感的なインタフェースとはいえませんでした。DMEはノーツのメール連携もしっかり行え、スマートフォンらしい直感的なインタフェースを持っていました。メールの添付ファイルをきちんと見られるのも高評価のポイントでしたね」と佐々木氏は採用の理由を説明する。

DME内の情報はすべて暗号化されるため、データがローカルにデータが残ることも問題なく、パスワードに関しても、iPhoneのパスコードとDMEのパスワードがあり、より強固に管理できるという。

「二重のパスワードと暗号化に、リモートワイプ。これだけ揃えばセキュリティは大丈夫だと思いました。扱う情報の性質上、流出は絶対に許されません。謝罪して済む問題ではありませんので、情報漏洩が起こらないシステムでありながら、使いやすいものを選びました」(佐々木氏)

DMEの端末管理(内容は三井物産マシンテックとは関係ありません)

以前は基本的な質問を繰り返していたユーザーからも、DMEに関しての質問はほとんど出ていないという。iPhone標準のメール機能と同じくらい直感的に利用でき、違和感なく使えるというDMEの特性が営業担当者にうまく受け入れられたようだ。

海外では「DME」を活かしてBYODも試験導入

DMEに対する要望について佐々木氏は、「次期Verで追加される各種機能を楽しみにしています。現在はワークフローをiPhoneのブラウザから利用していますが、DMEのブラウザが動き出したら、ワークフローの大部分をiPhoneで利用できるようにしたいですね」と語る。 また、同社では今後、海外を中心にBYODを導入しようと考えているという。

「国際電話なども多く、通話料のことなども考えると国内ではBYODを利用したいという需要はありません。しかし海外の場合は、端末が高価であるため会社側から最新端末を支給し続けることは難しく、ユーザー自身が好みの端末を利用したいという要望もあります。そこで、支給した端末のSIMカードを利用して端末のみを持ち込むという方法を試験的に導入中です」(佐々木氏)

今のところ50人ほどいる海外勤務スタッフのうち数名が試行している段階だが、これもDMEにより可能になったことだ。

また、iPhoneは人気機種だけに、社員のモチベーションも高かったようだ。配布時には8色カバーもあわせて配布したそうだが、色を選ぶ抽選には多くの社員が列を作ったという。

「抽選した後に交換会を行うなど、喜んで使い始めてくれました。最初のうちはまず慣れてもらうこと、使ってもらうことを重視していましたが、これからはユーザーが自由にアプリを入れてより活用できるようにする予定です。インストールしたアプリはDMEの管理ツールで把握できるので、業務利用から大きくはずれたアプリを入れないように抑制しますが」と佐々木氏は、DMEの機能を有効活用しながら、利用範囲を拡大することを目指している。

なお次回は、「DME」を実際導入する場合の手順について、レポートしたいと思う。