2010年が始まった。新年というものは、なぜか心がすがすがしく感じるものだ。このすがすがしさの中で、皆さんも今年こそは何かを成し遂げたいという気持ちを持っていることと思う。

中でも、今年こそ英語をマスターしたい!と思っている人は多いはず。私自身、昨年を振り返ると、あるブログで見つけた英語学習法をやろうとしたのだが、ほとんど実行することができなかった。最初のやる気はなぜ続かないものなのだろう。今でも真新しい和書と洋書とオーディオブックが埃をかぶっている状態だ(この3点セットでどんな学習法かわかったあなたはかなりの英語学習法マニア)。昨年はTOEICの点数をテクニックで伸ばしただけで、英語の実力が伸びたようには感じない。停滞期、なのかもしれない。

私と同じように、昨年の英語学習の伸びが今ひとつだったなあ……と思う人は、2010年は英語勉強のやり方をまったく変えてみてはどうだろう。

英語学習者の常識を打ち砕く『村上式シンプル英語勉強法』

そこで今回お勧めしたい学習法が『村上式シンプル英語勉強法 - 使える英語を、本気で身につける』という本である。この本は米Google副社長兼日本法人社長(出版時)の村上憲郎さんが2008年7月に出版されたもので、当時、かなりの人気を博した。この本で紹介されている教材が再び売れ出したという逸話もあるくらいだ。

本書によると、村上さんは31歳で外資系企業に転職するまで英語とは無縁だったが、英語が仕事上どうしても必要となり、当時の多くの英語学習本から自ら編み出した方法が「村上式シンプル英語勉強法」らしい。

この学習法で村上さんは結果的に、英語で企業経営ができるまでになったという実績があるので、非常に実践的な方法であるのは間違いない。しかし、この方法は村上さんには合った学習法であるが、万人向けとは限らないのも事実だ。

私が一読した限りでは、本書に掲載されている方法のいくつかは、「ぜひやってみたい」と思われるものが含まれており、私自身、今年はこのシンプル英語勉強法に賭けてみたいと思っている。

本書は5つの章(読む/単語を覚える/聴く/書く/話す)からなるが、私にビビッと来たのは、「読む」「単語を覚える」「話す」の3つの章である。

まずは「読む」の章から。日本人はなんだかんだ言って英語を読めていない。辞書を引き引き、和訳しながら読むのでは時間がかかりすぎるし、英語を読んでいるのではない。本書では、返り読みをせず、辞書も引かずに、息継ぎをせずに一気に読むことを推奨している。それも300万語を目標にせよという。300万語というと小説30冊に相当する。

なぜ、返り読みをしてはいけないかというと、「英語を聴くときと同じ条件で"読む"から」というシンプルな理由だ。これには頭をガーンと打たれた気がした。「読む」と「聴く」はリンクしている!

でも辞書なしでは、わからない単語ばかりで、本が読めないのではないか……と思うだろう。私もそう思う。村上さんが言うには、最初の本を読み終えたときは、ストーリーの概要がぼんやりわかる程度でよいそうだ。何冊か読むうちに、理解の程度が少しずつ大きくなっていくという。これは本当だろうか。

村上式に触発されてさっそく本棚からペーパーバックを引っ張り出したものの…興味のない内容にはついていけず断念!

さっそく、私の洋書コレクションから、Goosebumpsという子供向けホラー小説シリーズの『Go Eat Worms!』を読み始めてみた。wormは毛虫のような気持ちの悪い虫であり、そのwormがうじゃうじゃ出て来るという、タイトルからして気持ちの悪い小説だ。全体の5分の1くらいを読んでみたが、子供向けとはいえ、意味のわからない単語はありつつも、こんな言い方をするのかといった新たな発見もある。しかし毛虫のホラー小説は元々興味もない分野なので、ここは村上さんの推薦する、ロバート・B・パーカーの『スペンサーシリーズ』という探偵小説を入手してみたいと思っている。

原書が難しい人には、先に映画やDVDを見ることはいいと村上さんは言っている。大体のあらすじを理解しておくことは良しと。ただし、日本語訳を読んでおくのは絶対にNGであるという。ここらあたり、私が去年やりそこなった学習法とは対極のことを言っているのだが、まあ、いろいろな学習法があるということか。

細かいことを気にせずに、たくさんの英語を読むというこの学習法は一般に「多読」と呼ばれている。多読というと思い出すのが、数年前に実践した「めざせ100万語!多読で学ぶSSS英語学習法」だ。これはペンギンリーダーズなどの子供向けの簡単な洋書を辞書なしでたくさん読むというもので、いずれペーパーバックが読めるようになるという学習法である。当時は64万語で断念してしまい、個人的には今ひとつだった。不思議だったのが、辞書なしで簡単な洋書をたくさん読むうちに、なぜペーパーバックが読めるようになるのか、という点だ。わからない単語を読み飛ばすだけでは、その意味を覚えることは一生できないではないか、と。

これに対して本書で村上さんは、多読と同時に意識的に単語を覚えよと言っている。「英語はつまるところ単語力です」の一言には、我が意を得たり、であった。多読と単語暗記のダブル使い、これが鍵なのかもしれない……というわけで、続きは次回で。

著者紹介

本多義則 (Yoshinori Honda)

日立製作所勤務のIT系研究者。10年前に趣味と実益を兼ねて英語学習を再開以来、アナログからデジタルまであらゆるツールを駆使して英語学習に励んでいる。職場では「英語ができる男」と見られているが、実はそうでもない真の実力との差を埋めるべく、英語学習をやめられなくなっている。休みの日の朝は英語のメルマガ執筆にいそしむのが習慣。取得した英語関連の資格は、英検1級、TOEIC955(瞬間最大風速)、通訳案内士(英語)。座右の銘は「あきらめない限り必ず伸びる」。著書に『伸ばしたい!英語力―あきらめない限り必ず伸びる