今回は、2025年11月19日~12月5日に発表されたAI関連の注目すべきトピックを紹介する。OpenAIは「GPT-5.1-Codex-Max」を、Anthropicは「Claude Opus 4.5」を、DeepSeekは「DeepSeek-V3.2」をそれぞれリリースし、AIモデル競争が一気に加速している。Adobeはクリエイターのワークフローを進化させる「Project Graph」を発表。GoogleはAIエージェント利用の裾野を広げる「Google Workspace Studio」を公開した。また、OpenAIは教育者をサポートする「ChatGPT for Teachers」の提供を開始した。

それぞれ詳しく見ていこう。

OpenAI、教育者向けに設計した「ChatGPT for Teachers」提供開始

11月19日、OpenAIは教育者向けに特化したAIチャットサービス「ChatGPT for Teachers」の提供を開始した。これは、ChatGPTをベースに、幼稚園から高校までの教育者が利用する前提で再設計したもの。教育現場で生成AIをより安全かつ効率的に活用可能にすることを目的としており、授業準備や教材作成、学習評価といった教員の日常業務を支援する機能を備えている。

また、教育機関のコンプライアンス要件を満たすためのセキュリティ機能と管理者向け管理機能を備えているほか、教育者がAIを安心して扱えるようにするための研修用リソースや活用ガイドラインも合わせて提供する。学習者の多様性に応じた支援ができる点も特徴で、特別支援教育や英語学習などへの応用も想定されているという。

このサービスは、米国のK-12(幼稚園から高校まで)の認証済みの教育者に対して、2027年6月まで無償で提供される。

OpenAI、最先端のコーディングモデル「GPT-5.1-Codex-Max」リリース

11月19日、OpenAIは新たなエージェント型コーディングモデル「GPT-5.1-Codex-Max」を公開した。このモデルは同社のCodexモデルの最新高機能版で、ソフトウェアエンジニアリングや数学、リサーチといった多様なタスクを基盤に学習・強化されている。複数のタスクで構成される開発作業に対応しており、コーディング作業に限らない、開発サイクルのあらゆる段階で高精度に対応できる点が特徴となっている。

最も特徴的であるのは「コンパクション(compaction)」と呼ばれる技術の導入である。これは複数のコンテキストウィンドウを跨ぐ大規模処理を一貫して扱えるようにする仕組みで、数百万トークン規模の作業や大がかりなリファクタリング、複雑なデバッグ、数時間から24時間以上におよぶ作業などにも耐えられるという。これによって、従来モデルでは困難だった大規模なタスクへの適用が可能になる。

トークン効率とコスト効率も改善しており、現実的なソフトウェアエンジニアリング能力を評価するSWE-bench Verifiedベンチマークでは、旧モデルより高い性能を保ちながら、トークン消費を約30%削減することに成功している。また、高精度が求められる用途向けに「Extra High(xhigh)」モードも用意しており、目的に応じた使い分けが可能となっている。

OpenAIのAIコーディングツール「Codex」では、同日より、従来のGPT-5.1-Codexに代わってGPT-5.1-Codex-Maxデフォルトモデルとして適用されるようになっている。

  • GPT-5.1-Codex-Maxと従来モデルのGPT-5.1-Codexの性能比較 出典:OpenAI

    GPT-5.1-Codex-Maxと従来モデルのGPT-5.1-Codexの性能比較 出典:OpenAI

Adobeがクリエイターのワークフローを進化させる「Project Graph」発表

11月25日、Adobeは「Project Graph」という新しいクリエイティブ・システムを発表した。これは、生成AIや既存のAdobeアプリケーションを連携させ、クリエイター自身がワークフローを設計・構築できるツール。中核となるのはノードベースのビジュアルエディターで、クリエイターは各種デザインツールやAIモデルなどをグラフィカルインターフェイスを使って直感的に接続し、ワークフローを構築することができる。

構築したワークフローはパッケージ化してPhotoshopやIllustratorなどの各種Adobeツールで再利用できる。さらに、他のクリエイターと共有することも可能。これによって、複雑な制作手順や繰り返し作業を自動化し、クリエイティブの生産性と再現性を大幅に高められることが期待できる。

Project Graphはまもなくリリースされる予定となっている。

  • Adobeが「Project Graph」を発表

    Adobeが「Project Graph」を発表

Anthropic、最新の主力AIモデル「Claude Opus 4.5」をリリース

11月25日、Anthropicは同社の主力AIモデル「Claude Opus」の最新版となる「Claude Opus 4.5」をリリースした。Opusはコーディング、エージェント、コンピューター操作の領域で優れた性能を発揮する最上位モデルであり、4.5は従来よりもさらに優れた推論能力と効率性を備えているという。

Opusの得意分野はソフトウェア開発だが、4.5ではそれ以外にも視覚認識、論理推論、数学的思考、ドキュメント処理といったさまざまな能力が底上げされている。さらに、長時間にわたるエージェント的な作業や、複数工程にまたがるタスク、スプレッドシートやプレゼン資料の作成など、日常業務の自動化にも対応できる柔軟性を備える。SWE-bench Verifiedでは、他の競合モデルと比較してもっとも好成績なスコアを記録した。

Opus 4.5は性能だけではなく効率やコスト面でも改善されている。内部評価では、従来モデルと比較してトークン消費あたりの効率が大幅に改善されており、より少ない計算リソースで高品質な出力が得られるという。

  • 従来のモデルを上回るソフトウェアエンジニアリング能力 出典:Anthropic

    従来のモデルを上回るソフトウェアエンジニアリング能力 出典:Anthropic

中国発オープンソースモデル「DeepSeek-V3.2」正式リリース、GPT-5やGemini 3.0 Proに匹敵

12月1日、中国のAIスタートアップであるDeepSeekは、同社の大規模言語モデルの最新版として、「DeepSeek-V3.2」および「DeepSeek-V3.2-Speciale」を公開した。V3.2は、9月に実験版として公開した「V3.2-Exp」の正規版リリースにあたり、アプリ、Web、APIで同日より利用可能になっている。V3.2-SpecialeはV3.2をベースに推論能力を最大限に強化した上位モデルで、現時点ではAPI経由でのみ利用できる。

DeepSeek-V3.2の核となっているのは「Sparse Attention(DSA)」と呼ばれる新しいアーキテクチャだ。これはTransformerモデルのメカニズムを根本的に見直したもので、長い文脈や複雑なタスクでも、計算コストを抑えながら高性能な推論を可能にする。DSAの採用によって、V3.2ではGPT-5に匹敵する性能を発揮しながら、処理効率を大幅に改善することに成功したという。

上位モデルであるV3.2-Specialeは、高度な数学問題やアルゴリズム問題といった理論的・論理的課題に強みを見せる。DeepSeekによれば、国際数学オリンピック(IMO)や情報オリンピック(IOI)といった大会に基づくシミュレーションテストで金メダル級のパフォーマンスを記録したとのこと。ベンチマークではGemini 3.0 Proに匹敵する評価を獲得している。

DeepSeekはオープンソースモデルとしてMITライセンスの下でソースコードが公開されている。

  • DeepSeek-V3.2の競合モデルとのベンチマーク比較 出典:DeepSeek

    DeepSeek-V3.2の競合モデルとのベンチマーク比較 出典:DeepSeek

Google、AIエージェント作成のための「Google Workspace Studio」一般提供開始

12月4日、GoogleはGoogle Workspace向けの新機能として「Google Workspace Studio」の一般提供を開始した。これはWorkspace内で利用可能なAIエージェントを簡単に作成、管理、共有できるツールで、もともとはGoogle Workspace Flowsという名前でプレビュー公開されていた。Workspace Studioを使用すると、自動化したい作業の内容を自然言語で指示するだけで、Geminiが自動的にAIエージェントを作成してくれる。メール、ドライブ、ドキュメント、チャットなど、Workspace のさまざまなアプリを横断したタスクにも対応する。

Workspace Studioによって作られたエージェントは、単なるルールベースの自動化ではなく、状況を理解し判断・処理できる柔軟さを持つ点が大きな特徴。例えば、受信したメールの内容を解析してラベルを付け、その内容を要約してスプレッドシートに記録した上で、チャットで通知するといった複数ステップにわたるワークフローも、自然言語による指示だけでエージェント化できる。また、フォームの回答に応じた通知、自動返信、ドライブ内ファイルの整理などといった、従来であれば人間の判断力が必要だった作業も自動化できる。

Workspace Studioを利用すれば、専門的な知識がない一般の業務担当者でも手軽にAIを活用できるようになる。この機能は、Google Workspaceの法人向けサブスクリプション、教育機関向けサブスクリプション、またはAIアドオンサブスクリプションにおいて、12月3日より段階的にロールアウトが開始されている。

  • AIエージェントの活用を促進するGoogle Workspace Studio

    AIエージェントの活用を促進するGoogle Workspace Studio