FilmoraのAI機能を活用することで、手作業よりも大幅な時間短縮が可能となり、より直感的な映像編集が実現する。今回は、AI機能として、AIオブジェクトリムーバー、AIマスク、AI動画補正を紹介しよう。

連載のこれまでの回はこちらを参照

AIベースの機能でできることを知ろう

動画ソフトにおいてAI技術を活用すると、どんなメリットがあるかを追求する本連載。動画編集ソフトウェア「Filmora」を例に、AIベースの機能がどのような編集機能として使われているかを紹介する。

前回は最も基本的なAIベース機能を紹介した。今回はよく使う編集機能からAIベースの機能を取り上げる。動画編集とAI技術を活用した機能は相性がよく、今後ますます活用が進むとみられる。どのような機能がAIベースで実装されているのかを知り、今後の世界の流れに備えよう。

AIオブジェクトリムーバー: 不要なオブジェクトの削除

Filmoraには映像内のオブジェクトを削除する「AIオブジェクトリムーバー」という機能がある。この機能はAIアルゴリズムを活用して映像から対象となるオブジェクト選択し、複雑な背景や細かいディテールを持つ映像でも高精度な削除を実現するというものだ。削除した領域は推定した動画で埋められる。

以下、使い方を紹介しよう。

不要なオブジェクトを削除

動画をタイムラインに配置したら、「ビデオ」→「AIツール」から「AIオブジェクトリムーバー」を選択する。「クリックしてオブジェクトを削除」をクリックして、不要なオブジェクトを指定するモードに入る。

  • 「ビデオ」→「AIツール」から「AIオブジェクトリムーバー」を選択して「クリックしてオブジェクトを削除」をクリック

    「ビデオ」→「AIツール」から「AIオブジェクトリムーバー」を選択して「クリックしてオブジェクトを削除」をクリック

「AIオブジェクトリムーバー」のダイアログが起動する。ここで削除したいオブジェクトを選択する。

  • 起動してくる「AIオブジェクトリムーバー」のダイアログ

    起動してくる「AIオブジェクトリムーバー」のダイアログ

選択する対象に合わせて「ブラシサイズ」を変更し、削除したい対象を選択する。ここでは画面中央にある看板を選択した。

  • 画面中央の看板を削除対象として選択

    画面中央の看板を削除対象として選択

選択が終わったら「削除」をクリックする(このAI機能はAIクレジットを消費するので、実行するにはAIクレジットが必要)。

  • AIオブジェクトリムーバーが指定したオブジェクトの削除処理を実行中

    AIオブジェクトリムーバーが指定したオブジェクトの削除処理を実行中

処理が完了すると該当する動画から対象オブジェクトが削除される。

  • 指定したオブジェクトが削除されたあとの動画

    指定したオブジェクトが削除されたあとの動画

写真データからオブジェクトを削除する機能といえば、Androidなら「消しゴムマジック」、iPhoneなら「クリーンアップ」が知られている。Filmoraの「AIオブジェクトリムーバー」はこうした機能の動画版と考えるとわかりやすい。 実用例としては、広告映像のクリーンアップが考えられる。広告映像において、例えば観光地の魅力を最大限に引き出すために不要な通行人や物体を削除するケースなどがある。

旅の記録やVlogのような目的であれば、写っているものを削除する必要はないが、広告目的の動画であれば特定のオブジェクトを削除して目的とする動画に仕上げることには意味がある。こうしたオブジェクトの削除はAI機能なしでは実現が難しい。

AIマスク:複雑なオブジェクトの選択とマスキング

FilmoraのAIマスク機能は、映像内の複雑なオブジェクトや動きのある被写体を素早く選択し、マスキング処理を施すためのツールだ。オブジェクトを選択する点で「AIオブジェクトリムーバー」に似ている。

この機能は、被写体の輪郭を追跡するAIアルゴリズムを活用しており、従来の手動マスキング作業に比べて時間と労力を大幅に削減できる。

以下、使い方を紹介しよう。

複雑なオブジェクトの迅速な選択

マスク処理を行いたい動画をタイムラインに配置し、「ビデオ」→「マスク」から「AIマスク」を選択する。

  • 「ビデオ」→「マスク」から「AIマスク」を選択

    「ビデオ」→「マスク」から「AIマスク」を選択

選択したいオブジェクトを軽く選択すると、次のスクリーンショットのように対象となるオブジェクトが自動的に選択された状態になる。

  • 「AIマスク」で自動的に選択されたオブジェクト

    「AIマスク」で自動的に選択されたオブジェクト

この状態では対象の画面に対してマスク処理を行っただけだが、パスの「▷」をクリックすると対象画面のみならず、それに続く動画においてもマスクのトラッキングを行ってくれるようになる。

  • マスク処理を動画に適用することもできる

    マスク処理を動画に適用することもできる

「AIマスク」は動画のワンシーンから対象を取り出してさらに動画として加工するなど、切り出した対象を素材として使うようなケースで役に立つ。

マスキングによる創造的な表現

選択範囲に対してマスキングを施すことで、背景をぼかす、特定のエリアをカラーで強調する、または被写体のみを残して他の部分を透明化するなどのエフェクトを適用できる。

例えば、映像の中で特定の人物だけをカラーで表示し、他の部分をモノクロにすることで、被写体を際立たせることなんかもできる。

活用のポイント

商品紹介映像では、商品を強調するために背景をぼかしたり、商品以外の部分を暗くしたりすることが重要になることがある。この場合、AIマスクを使用して商品の輪郭を正確に追跡し、エフェクトを適用することで視覚的なインパクトを高められる。また、背景を自由に変更することで、多様なシチュエーションに対応した映像制作が可能となる。

AIマスク機能を使用する際は、マスクの境界線やフェード効果を調整することで、より自然な仕上がりを実現できる。また、マスキング処理を適用した映像全体のトーンを統一することも重要だ。FilmoraのAIマスクの活用で映像編集作業を効率化できる。