第279回でも書いたように、灯火類を「ひっつきもの」に含めることはないようだ。アンテナ類と異なり、当初から付いている「標準装備品」だから、という理由だろうか。とはいえ、外部に突出するものであることに変わりはないので、しめくくりの話題として、触れてみようと思う。

灯火が見えて欲しい範囲

飛行機に限ったことではないが、灯火には2種類の目的がある。

ひとつは、そのヴィークルを運転あるいは操縦している人が、外部視界を得るために光源を用意すること。いわゆるヘッドライトがそれである。飛行機の場合、着陸灯やタキシー灯がこれに該当するだろう。ついでに余談を書くと、鉄道車両で俗にヘッドライトと呼ばれているものは、実は「前部標識灯」という名称だが、単に列車の存在を示すだけではなく前方を照らす役目も果たしているから、細かいことはいわない。

もうひとつは、外部の人に対して、ヴィークルの存在を知らせたり、ヴィークルの状況が分かるようにしたり、といった目的で用いるもの。クルマの後ろ側に付いている制動灯が典型例で、それが点灯していれば「あ、ブレーキを踏んだな、このクルマは減速するな」と分かる。

飛行機の翼端灯は艦船の舷灯と同じで、どちらを向いているかを周囲に示す重要な灯火である。また、衝突防止灯(アンチ・コリジョン・ライトあるいはストロボ・ライト)も、「ここを飛行機が飛んでいますよ」と周囲に広告(?)するわけだから、意味合いとしては似ている。

さて。前者の灯火は前方を照らしてくれれば用が足りる。パイロットが機体の前方の状況を視覚的に知るための補助手段だから。ところが、後者の灯火は事情が違う。周囲の誰かさんに対して自機の存在を告知したり、自機の状況を知ってもらったりするためのものだから、前方だけ向いていればOKとはいかない。だから、どの灯火がどの範囲から見えなければならないかは、第98回で書いたように、ちゃんと規定がある。

灯火が見えてほしい範囲をカバーしようとすると

さて。灯火だろうがアンテナだろうが、あるいはアンテナ・フェアリングだろうが、外部に突出しないで済むのなら、それに越したことはない。ところが、アンテナの中には全周をカバーしなければならないものがあるのと同様に、灯火の中にも、全周、あるいは全周まで行かなくてもそれなりに広い範囲をカバーしてほしいものがある。

そうした灯火を機体の中に埋め込んでしまうと、どうしても死角ができてしまうので、外部に突出させる必要がある。例えば、衝突防止灯がそれだ。実際、旅客機の背中やお腹を見てみると、衝突防止灯は外部に突出する形になっている。

  • ボーイング767の背中。中央にある赤い小さな突出は衝突防止灯。周囲から見えやすいように突出させてある。右上の方にある大きなフェアリングは、機内WiFiサービスの生命線である衛星通信アンテナのもの 撮影:井上孝司

    ボーイング767の背中。中央にある赤い小さな突出は衝突防止灯。周囲から見えやすいように突出させてある。右上の方にある大きなフェアリングは、機内Wi-Fiサービスの生命線である衛星通信アンテナのもの

翼端灯はそこまで行かず、前方からだけ見えていてくれればよい。そこで、その名の通りに灯火を翼端に組み込んで、所要の範囲をカバーするように、光が透過する覆いを被せる。これで用が足りるから、外部に突出する「ひっつきもの」にはならない。もっとも戦闘機になると、翼端に灯火のための張り出しがくっついているケースが、まったく存在しないわけではないのだが。

  • ボーイング777の翼端灯。灯火は主翼の中に組み込まれており、前方と側方から見える構造になっているのが分かる 撮影:井上孝司

    ボーイング777の翼端灯。灯火は主翼の中に組み込まれており、前方と側方から見える構造になっているのが分かる

  • F-35の翼端灯は、翼端に近い主翼の上下に透明なカバーが突出する構造。F-16みたいに主翼端にミサイル発射レールを持つ機体もやはり、翼端灯は発射レールの上下に突出させている 撮影:井上孝司

    F-35の翼端灯は、翼端に近い主翼の上下に透明なカバーが突出する構造。F-16みたいに主翼端にミサイル発射レールを持つ機体もやはり、翼端灯は発射レールの上下に突出させている

サーチライトを持つ飛行機

あと、「飛行機が必ず備えなければならない灯火」の範疇からは外れるが、サーチライトを取り付けるケースが時々ある。捜索・救難に従事するヘリコプターが典型例だが、それだけとは限らない。

かつては、夜間に浮上航行している潜水艦を見つけるために、強力なサーチライトを主翼に取り付けた哨戒機、なんていうものもあった。既存の機体に後からサーチライトを追加したから、そういう形にならざるを得ない。ひっつきものというよりも、吊るしものに近い趣がある。

また、かつて海上自衛隊でも使用していた哨戒機、ロッキードP-2Vネプチューン(や、その改良型であるP-2J)は、翼端にポッドを取り付けており、そのうち右側には前方向きのサーチライトが組み込んであった。目視による夜間の洋上捜索を支援するためである。

これは果たして外部に突出する「ひっつきもの」なのか、機体構造の中に組み込まれたものなのか、はたまた吊るしものの一種と解すべきなのか。考え始めると夜も眠れなくなりそう。

実のところ、サーチライトがみんな突出するかというと、そうとも限らない。例を挙げると、一部の国のF/A-18ホーネットは、機首の左側面に固定式のライトを組み込んでいる。これは、対領空侵犯措置任務で国籍不明機をインターセプトした時に、右側を平行して飛びながら相手機を照らして、正体を確認するため。胴体側面の外板に丸穴を開けて、その内部にライトを組み込んでいるので、外部には突出しない。

  • スイス空軍のF/A-18C。ストレーキ前端の少し下に、左向きのサーチライトを組み込んであるのが分かる。フィンランドの機体も同じ仕掛けがある 撮影:井上孝司

    スイス空軍のF/A-18C。ストレーキ前端の少し下に、左向きのサーチライトを組み込んであるのが分かる。フィンランドの機体も同じ仕掛けがある

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。