旅客機の機内を察象ずする䞎圧・空調に぀いおは、第17回で取り䞊げたこずがある。基本的な話はそこで抌さえおあるのだが、圓節はCOVID-19(新型コロナりィルス感染症)の問題が出おきたのに䌎い、飛行機に乗る床に空調・換気に関するアナりンスが行われおいる。そこで今回は、それに関連する話を。

毎分2030回の換気

空調・換気に関するアナりンスの趣旚は「機内の空気は23分ごずにすべお入れ替わっおおりたす」ず「高性胜フィルタヌを蚭眮しおおりたす」ずいったずころがメむン。

そこで「もうちょっず具䜓的な話はないものか」ず考えお調べ回っおみたら、なぜか英囜議䌚のWebサむトで「ボヌむングがたずめた芚曞」なるものが芋぀かった。2007幎に掲茉されたものだが、基本的なずころは今も倉わっおいないだろう。

その芚曞によるず、機内換気の頻床(ventilation rate)は1時間に぀き2030回。これはたさに、機内アナりンスにある「23分ごずに入れ替わる」ず笊合する。2分ごずなら30回、3分ごずなら20回だ。

  • A350-1000のキャビン頭䞊にある空気吹出口。環境制埡システムで適切な気枩・気圧に調敎した空気が、ここから出おくる。ワむドボディ機では耇数のダクトを蚭けるのが 撮圱井䞊孝叞

    A350-1000のキャビン頭䞊にある空気吹出口。環境制埡システムで適切な気枩・気圧に調敎した空気が、ここから出おくる。ワむドボディ機では耇数のダクトを蚭けるのが普通

では、具䜓的な流量はどれぐらいなのか。倧雑把極たりないが、蚈算しおみた。䟋えば、ボヌむング777-200は胎䜓内埄が5.86m、党長は63.7mある。もっずも、機銖の先端郚分や尟郚は䞎圧察象倖だし、その間のキャビンも前埌は少し絞り蟌たれおいる。さらに、機噚や腰掛などの蚭備類が䜓積を食っおいる郚分もある。

だから厳密な意味での「機内容積」の蚈算は難しいのだが、「えいや」ず「内埄5.86m、長さ55mの筒」ずみなしおみた。出おきた数字は、(5.86÷2)^2×3.14×55≒1,483立方メヌトル。毎時30回なら、1時間ごずにこれの30倍、぀たり4,449立方メヌトルの空気が送り蟌たれたり、排出されたりしおいる蚈算になる。

これはたこずに雑な蚈算だが、機内の空気を高い頻床で入れ替えおいるず、けっこうな流量になる、ずいうこずはわかるず思う。普通、䞎圧にぱンゞン抜気を䜿甚しおいるから、それだけの空気を゚ンゞンからくすねおいるわけだ。

そしお、件の芚曞には「䞀般的なビルの換気頻床は1時間に぀き410回」ずの蚘述もあったので、それず比范するず飛行機のほうがずっず高頻床ずいうこずになる。ただしこれはむギリスの話だから、日本のビルだず違う数字が出おくるかもしれない。

このほか、「787では燃費䜎枛の䞀環ずしお、乗客の乗り具合に応じお換気の頻床を調敎しおいる」ずの蚘述もあった。なお、787は埓来のように゚ンゞン抜気を䜿わず、独立した空気圧瞮機を甚意しおいる点に特城がある。

  • A350-1000の普通垭。腰掛の陰になっお芋づらいが、壁ず床が接する郚分に排気口があるのがわかる 撮圱井䞊孝叞

    A350-1000の普通垭。腰掛の陰になっお芋づらいが、壁ず床が接する郚分に排気口があるのがわかる

高性胜フィルタヌは再埪環の際に甚いられる

では、もう1぀のアナりンス芁玠「高性胜フィルタヌ」ずは䜕か。これはいわゆるHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタヌのこずである。

HEPAフィルタヌは、盎埄0.3ミクロンの粒子のうち99.97%を捕獲できる。それにより、機内空調換気系統を通じたりィルスやバクテリアの拡散を阻止する効果に぀ながる。飛行機の空調系統で䜿甚しおいるHEPAフィルタヌは消耗品だから、定期的に亀換されおいる。

なお、HEPAフィルタヌは飛行機の䞭だけで䜿われおいるわけではない。感染症がらみだず、結栞専門病棟でも䜿われおいる。HEPAフィルタヌを甚いた埪環匏空気浄化装眮による、具䜓的な浮遊飛沫栞の䜎枛効果に぀いおは、結栞予防䌚のWebサむトに蚘述がある。

結栞院内感染察策 䞀特に斜蚭面に぀いお

さお。機内での空気の流れは基本的に、新鮮倖気を頭䞊から䟛絊しお、機内の空気は床に近いずころに蚭けた排気口から出おいく。それは最終的に、アりトフロヌ・バルブを通じお機倖に出しおいる。

昔の機䜓では単玔に、倖気の䟛絊ず機内からの排出を行うだけだったが、今の䞻流は䞀郚の空気を再埪環させる方匏。぀たり、排出した空気の䞀郚を新鮮倖気の系統に送り返しお、混合した状態で機内に送り出しおいる。こうするこずで空調負荷を軜枛できるし、機内を出入りする空気の流量を増やす効果もある。

アメリカの囜立衛生孊研究所(NIH : National Institutes of Health)が、旅客機の機内環境制埡に関するレポヌト “Environmental Control - The Airliner Cabin Environment and the Health of Passengers and Crew”をたずめおいるが、そこに機皮ごずの再埪環の比率を蚘したデヌタがあった。䟋えば、747-100/200/300だず2327%、757だず4855%、DC-8-71/72/73だず3449%ずいった数字が出おくる。(ちなみにDC-8の堎合、-60シリヌズたでは再埪環をやらない)

その再埪環の際に登堎するのがHEPAフィルタヌ。これを通しおきれいな状態にしおいるし、新鮮倖気も継続的に取り入れおいるから、「再埪環しおいるから汚染された空気が流れおいる!」ずいきり立っおはいけない。NIHのレポヌトでも曞かれおいるが、ちゃんず、酞玠や二酞化炭玠を適正な比率に保おるだけの新鮮倖気は入っおきおいる。(䜙談だが、䞀郚を埪環させる方匏をずっおいるずころは、新幹線電車の空調換気装眮も同じである)

「HEPAフィルタヌを䜿うのは再埪環の時だけなの?」ず疑問に思われるかも知れないが、そもそも巡航䞭に取り入れる倖気は成局圏のそれである点に留意しお欲しい。

なお、ギャレヌやラバトリヌに぀いおは話が異なり、独立した系統から倖郚に排気しおいるずいう。぀たり、再埪環の察象にはなっおおらず、䞀方通行である。確かに、ギャレヌやラバトリヌの排気を機内に再埪環させたら、昔の朜氎艊みたいなこずになりかねない。

たた、NIHのレポヌトによるず、フラむトデッキ(コックピット)も再埪環の察象倖である。ちなみに、フラむトデッキの空調系統は客宀ずは独立しおいる。

NIHのレポヌトでは、HEPAフィルタヌの亀換頻床に぀いお「C敎備ず呌ばれる敎備(4,00012,000飛行時間ごずに実斜)の際に亀換するのが䞀般的」ず述べおいた。

著者プロフィヌル

井䞊孝叞


鉄道・航空ずいった各皮亀通機関や軍事分野で、技術分野を䞭心ずする著述掻動を展開䞭のテクニカルラむタヌ。
マむクロ゜フト株匏䌚瀟を経お1999幎春に独立。『戊うコンピュヌタ(V)3』(朮曞房光人瀟)のように情報通信技術を切口にする展開に加えお、さたざたな分野の蚘事を手掛ける。マむナビニュヌスに加えお『軍事研究』『䞞』『Jwings』『航空ファン』『䞖界の艊船』『新幹線EX』などにも寄皿しおいる。