前回は「文字列の折り返し」を指定することにより、画像を好きな位置に配置する方法を紹介した。ただし、これだけでは不十分な場合もある。フロート状態の画像を扱うときは「アンカー」の役割についても理解しておかなければならない。そこで今回は、アンカーについて詳しく解説していこう。

「画像」と「本文」は完全に分離されない?

今回は、以下に示した文書を例に、画像の挙動について紹介していこう。この文書は「お料理教室」の参加者を募集するチラシで、右端に4枚の画像を並べたデザインになっている。

  • 「お料理教室」を告知するチラシ

「文字列の折り返し」を「背面」に変更し、画像を縦に並べただけの簡単なデザインであるが、たったこれだけでも、ある程度は見栄えのする文書に仕上げられることを実感できると思う。ちなみに、文書全体の背景色は「デザイン」タブの「ページの色」で指定している。

こういった文書を編集しているときに、画像が勝手に移動される現象に遭遇することもある。たとえば、「Cooking Day」の下の余白を大きくしようと「改行」を2つ挿入すると、それに合わせて「画像の位置」も下方向へ移動されてしまう。

  • 改行の挿入による画像の移動

最初は隙間なく並べられていた画像が、勝手に間隔を空けた状態に変更されてしまうことに不満を覚える方も少なくないだろう。このような挙動は、画像の「アンカー」に起因するものとなる。

アンカーの役割

前回の連載では、「文字列の折り返し」を「四角形」や「前面」「背面」などに変更すると、「画像と本文が切り離された状態になる」と解説した。しかし、厳密には、これは間違いである。画像をフロート状態にしても、「本文」と「画像」のつながりは依然として維持されている。

それを視覚的に示したものが「アンカー」である。画像をクリックして選択すると、いずれかの段落に「碇」(いかり)のアイコンが表示されるのを確認できるはずだ。これが「アンカー」となる。

  • アンカーのアイコン

アンカーは「画像」を「段落」につなぎ止めておくための機能で、「段落の位置」に合わせて「画像の位置」も一緒に移動するように初期設定されている。このため、改行の挿入などにより「段落の位置」が移動すると、それに合わせて「画像の位置」も上下に移動する仕組みになっている。これが、先ほど示した現象の説明となる。

改行を挿入しても画像の位置を変化させないようにするには、より上の段落にアンカーをつなぎ止めておく必要がある。この操作は、アンカーのアイコンを上下にドラッグすると実行できる。

  • アンカーの移動

  • 移動されたアンカー

このように、あらかじめアンカーの位置を移動してから改行を挿入すると、画像の位置を移動させることなく文字編集を行えるようになる。

  • 改行の挿入

上の例では、「Day」の段落にアンカーがつなぎ止められている。この場合、その下にある行に改行を挿入しても「Day」の位置は変わらない。よって、画像の位置も変化しない、という仕組みになる。

画像をページ上に固定するには?

このように、フリーレイアウトで画像を配置するときは、各画像のアンカーが「どの段落につなぎ止められているか?」にも注意しなければならない。とはいえ、文字編集を行うたびにアンカーの位置を確認して・・・、というのは面倒な作業になるだろう。

そこで、フリーレイアウトで画像を配置するときは、「文字列の折り返し」を指定する際に「ページ上の位置を固定」も選択しておくとよい。すると、画像が「ページ」に固定されるようになり、段落と一緒に画像が移動する現象を回避できるようになる。

  • レイアウトオプション

すでに画像がページの右端に配置されており、レイアウトオプションのアイコンが表示されない場合は、右クリックメニューから同様の指定を行うことも可能である。この場合は、「レイアウトの詳細設定」を選択して「レイアウト」ダイアログの呼び出し、「文字列と一緒に移動する」のチェックボックスをOFFにすればよい。

  • 「レイアウト」ダイアログの呼び出し

  • 画像をページに固定する設定

これで、その画像を「段落」ではなく、「ページ」に固定することが可能となる。

アンカーの固定とオーバーラップ

ほかにも「レイアウト」ダイアログには、画像の配置やアンカーに関わる設定項目がいくつか用意されている。簡単に紹介しておこう。

  • 「レイアウト」ダイアログの「位置」タブ

まずは「アンカーを段落に固定する」のチェックボックスについて解説する。このチェックボックスをONにすると、アンカーのアイコンに鍵のマークが追加され、アンカーが段落に固定されるようになる。この場合、マウスのドラッグによりアンカーの位置を上下に移動させる操作が実行不可になる。

※アイコンが見やすくなるように、一時的に背景色を「なし」にしています。

  • 段落に固定したアンカー

「オーバーラップさせる」のチェックボックスは、オブジェクト(画像や図形など)の重なりを制御する設定項目となる。このチェックボックスをOFFにすると、画像と画像(または画像と図形など)を重ねて配置することが不可能になる。その結果、オブジェクト同士が重ならない位置に、画像が移動されることになる。

  • オーバーラップを解除した画像

これらの設定項目は頻繁に利用するものではないので、画像(オブジェクト)の配置に関連する設定項目として、頭の片隅にでも覚えておくとよいだろう。

「レイアウト」ダイアログを使った位置の指定

そのほか、「レイアウト」ダイアログには、画像の位置を数値で指定できる項目も用意されている。

  • 「レイアウト」ダイアログの「位置」タブ

これらの項目を使って画像の位置を指定するときは、はじめに基準とする要素を指定しなければならない。たとえば、「段落の位置」を基準にするときは「段」を指定してから数値を入力する必要がある。

  • 基準に指定できる要素

このため、数値を使って位置を指定するには、ある程度の慣れが必要になる。最も簡単なのは、基準に「ページ」を指定し、用紙の左上からの距離を「水平方向」(右方向の距離)と「垂直方向」(下方向の距離)に指定する方法となる。

ちなみに、基準となる要素は「文字列と一緒に移動する」の項目と連動する仕組みになっている。「文字列と一緒に移動する」をOFFにすると、垂直方向の基準は自動的に「ページ」に変化する。

  • 「文字列と一緒に移動する」と「基準」の連動

なお、実際に編集作業を行うときに、これらの項目を使って位置を指定するケースは滅多にないと思われる。というのも、Wordには画像などのオブジェクトを整列させる機能が用意されているからだ。そこで次回は、オブジェクトを整列させる方法について詳しく解説していこう。