Wordには、書式を自動指定してくれる「オートコレクト」と呼ばれる機能が標準装備されている。今回はその一例として、段落の先頭に入力した「全角スペース」が勝手に削除されてしまう原因を探っていこう。あわせて「字下げ」と「ぶら下げ」の書式についても解説しておこう。

  • 字下げ/箇条書き/段落番号のオートコレクト解除

    字下げ/箇条書き/段落番号のオートコレクト解除

「字下げ」と「ぶら下げ」について理解する

前回は「ぶら下げ」の効果的な使い方を紹介した。この「ぶら下げ」と対をなす書式が「字下げ」だ。まずは「字下げ」と「ぶら下げ」について、その指定方法と機能を紹介していこう。

これらの書式は「段落」ダイアログで指定する仕組みになっている。「字下げ」の書式を指定するときは、最初の行に「字下げ」を選択し、幅に適当な「字数」を指定すればよい。

  • 「字下げ」を指定する場合

    「字下げ」を指定する場合

同様に「ぶら下げ」の書式を指定するときは、最初の行に「ぶら下げ」を選択し、幅に適当な「字数」を指定すればよい。

  • 「ぶら下げ」を指定する場合

    「ぶら下げ」を指定する場合

これらの書式は、段落の「1行目」と「2行目以降」の配置を変化させるときに利用する。各書式を指定すると、文字の配置はそれぞれ以下のように変化する。

◆字下げ

段落の「1行目」を少し右にずらした位置から開始する。

◆ぶら下げ

段落の「2行目以降」を少し右にずらした位置から開始する。

具体的な例を紹介しておこう。以下の図は、1字の「字下げ」と「ぶら下げ」を指定した例だ。「字下げ」を指定した段落は、1行目が1文字分だけ右にずらして配置される。一方、「ぶら下げ」を指定した段落は、2行目以降が1文字分だけ右にずらして配置されるようになる。

  • 1字の「字下げ」と「ぶら下げ」

    1字の「字下げ」と「ぶら下げ」

もうひとつ例を紹介しておこう。今度は、3字の「字下げ」と「ぶら下げ」を指定した例だ。「1行目」または「2行目以降」に、それぞれ3文字分の余白が設けられていることを確認できるだろう。

  • 3字の「字下げ」と「ぶら下げ」

    3字の「字下げ」と「ぶら下げ」

このように、段落内で文字の配置を変化させる書式が「字下げ/ぶら下げ」となる。前回は「ぶら下げ」を利用することにより、箇条書きや段落番号のような配置を実現する方法を紹介した。

もちろん、「字下げ」の書式も便利に活用できる場面がある。それは段落の開始位置を示す場合だ。日本語の文書を作成するときは、各段落の先頭を1文字分だけ空けて配置するのが一般的だ。この配置を実現する方法は以下の2通りが考えられる。

  • A:段落の先頭に「全角スペース」を入力する
  • B:段落に1字の「字下げ」を指定する

Wordに慣れていない初心者は、「Aの方法で文書を作成していきたい」と考えるだろう。しかし、勝手にBの方法に改編されてしまうケースもある。今回は、この挙動について詳しく解説していこう。

「字下げ」を自動指定するオートコレクト

まずは「全角スペースが入力されているか?」を手軽に確認するための準備作業から始めていこう。「ホーム」タブにある「編集記号の表示/非表示」をクリックしてオンにする。

  • 編集記号の表示/非表示

    編集記号の表示/非表示

すると「全角スペース」や「半角スペース」、「タブ」などを示す記号が画面に表示されるようになる。この状態でWordの挙動を確認する実験を行ってみよう。

1番目の例は、最初に「全角スペース」を入力してから文章を入力していった場合だ。この場合、先頭の「全角スペース」はそのまま維持される。

  • 最初に「全角スペース」を入力した場合

    最初に「全角スペース」を入力した場合

2番目の例は、文章をひととおり入力した後、段落の先頭に「全角スペース」を挿入した場合だ。この場合、先頭の「全角スペース」が表示されない状態になってしまう。

  • 後から「全角スペース」を挿入した場合

    後から「全角スペース」を挿入した場合

マウスをドラッグして文字を選択した様子も示しておこう。以下の図を見ると分かるように、段落の先頭に入力したはずの「全角スペース」が無くなっていることを確認できる。この原因を探るために「段落」ダイアログを開いてみよう。「段落」グループの右下にある「小さい四角形」をクリックする。

  • 「段落」ダイアログの呼び出し

    「段落」ダイアログの呼び出し

「段落」ダイアログが表示される。この画面をよく見ると、1字の「字下げ」が指定されていることに気付くと思う。

  • 自動設定された「字下げ」

    自動設定された「字下げ」

つまり、先頭の「全角スペース」が削除され、その代わりに1字の「字下げ」が自動指定されたことになる。当然ながら、この書式は次の段落にも引き継がれる。段落の末尾にカーソルを移動して「Enter」キーを押すと、次の段落も「1字の字下げ」が指定された状態で文字が入力されていく。

  • 次の段落に引き継がれた「字下げ」の書式

    次の段落に引き継がれた「字下げ」の書式

このように、Wordには「勝手に書式を指定しなおす機能」が装備されている。この機能はオートコレクトと呼ばれている。今回の例の場合、段落の先頭に入力した「全角スペース」を削除して、代わりに「1字の字下げ」を指定する、という処理が自動的に行われたことになる。

こういった自動処理を「便利な機能」と考える人もいれば、「余計なお世話」と感じる人もいるだろう。特に初心者は、「全角スペースが見当たらない(選択できない)のに、なぜか段落の先頭に1文字分の余白がある……」という理解しがたい状況に陥ってしまう。

Wordには「字下げ」という書式が用意されており、「全角スペース」が「1字の字下げ」に自動変更されるケースがある、ということを理解できている上級者なら問題ないが、それを初心者に求めるのは酷な話かもしれない。だから「Wordは変な挙動をする」というイメージが広がってしまうのだろう。

「字下げ」のオートコレクトの設定変更

Wordに慣れている中・上級者であっても、「全角スペース」→「1字の字下げ」の自動処理を嫌う人もいるだろう。そこで、このオートコレクトを無効化する方法を紹介しておこう。「ファイル」タブを選択して「オプション」を選択する。

  • オプション画面の呼び出し

    オプション画面の呼び出し

Wordの設定画面が表示されるので、左側のメニューで「文章校正」を選択し、「オートコレクトのオプション」ボタンをクリックする。

  • オートコレクトの設定画面の呼び出し

    オートコレクトの設定画面の呼び出し

Wordの自動処理に関連する設定画面が表示される。「全角スペース」→「1字の字下げ」の自動処理を無効化したいときは、「入力オートフォーマット」タブにある「行の始まりのスペースを字下げに変更する」と「Tab/Space/BackSpaceキーでインデントとタブの設定を変更する」をオフにすればよい。

  • 「字下げ」の自動設定の解除

    「字下げ」の自動設定の解除

これで「全角スペース」が「1字の字下げ」に自動変更されるオートコレクトを無効化できる。念のため、各項目で設定される内容について補足しておこう。

◆行の始まりのスペースを字下げに変更する

最初に「全角スペース」を入力してから文章を入力していった場合に、「全角スペース」→「1字の字下げ」の自動処理を行う。この項目はオフに初期設定されている。

◆Tab/Space/BackSpace キーでインデントとタブの設定を変更する

すでに文字が入力されている段落の先頭に「全角スペース」を挿入した際に、「全角スペース」→「1字の字下げ」の自動処理を行う。この項目はオンに初期設定されている。そのほか、「Tab」キーで「字下げ」や「インデント」を自動指定する、「BackSpace」キーで「インデント」を解除する、といった自動処理も含まれている。

「箇条書き」と「段落番号」のオートコレクト

Wordには「箇条書き」や「段落番号」を自動指定するオートコレクトも初期設定されている。たとえば、段落の先頭に「1.」や「(1)」などの数字を入力すると、「段落番号」の書式が自動指定される。

以下の図は、段落の先頭に「(1)」と入力してから続きの文章を入力した例だ。この時点では、まだ「段落番号」の書式は指定されていない。

  • 「段落番号」が自動設定される操作(1)

    「段落番号」が自動設定される操作(1)

その後、「Enter」キーを押して改行すると、「段落番号」の書式が自動指定され、次の行(段落)の先頭に「(2)」の文字が表示される。

  • 「段落番号」が自動設定される操作(2)

    「段落番号」が自動設定される操作(2)

同様に「箇条書き」の書式を自動指定するオートコレクトもある。段落の先頭に「・」や「●」、「◆」、「★」、「※」などの記号を入力してから「Tab」キーを押すと、この時点で「箇条書き」の書式が自動指定される。

  • 「箇条書き」が自動設定される操作(1)

    「箇条書き」が自動設定される操作(1)

その後、文章や単語を入力して「Enter」キーで改行すると、次の段落にも同じ書式が引き継がれる。その結果、「◆」などの記号が自動的に表示されるようになる。

  • 「箇条書き」が自動設定される操作(2)

    「箇条書き」が自動設定される操作(2)

これらの自動処理も、先ほど示した設定画面で無効化することが可能だ。「箇条書き」や「段落番号」を自動指定を無効化するときは、以下の図に示した項目をオフにすればよい。

  • 「箇条書き」と「段落番号」の自動設定の解除

    「箇条書き」と「段落番号」の自動設定の解除

このように、Wordには「書式を自動指定するオートコレクト」がいくつか初期設定されている。これを「便利な機能」と考えるか、それとも「余計なお世話」と感じるかは人によって意見が分かれるだろう。また、その仕組みを理解するには「字下げ/ぶら下げ」などの書式について詳しく学んでおく必要がある。

これらの知識を備えている人であれば、勝手に書式が指定される状況に陥っても、それを自分でコントロールできるはずだ。一方、知識が不十分な初心者だと、理解しがたい状況に困惑することになる。

「Wordは使いづらい」という話をよく聞くが、その「バックグラウンドで行われていること」を理解できるように、少しずつ知識を蓄えていくことで解決できる問題も沢山ある。そのためにも、本連載で「Wordの使いこなし術」を学んでいただければ幸いだ。