何ページにも及ぶ長い文書を作成するときは、見出しなどの書式をそのつど指定するのではなく、「スタイル」を上手に活用すると効率よく作業を進められる。そこで今回は、スタイルの基本的な使い方と、自分でスタイルを作成して利用する方法を紹介していこう。

  • スタイルの作成と適用

    スタイルの作成と適用

Wordに初めから用意されているスタイル

Wordには書式を一括指定できる「スタイル」という機能が装備されている。たとえば、フォント/文字サイズ/文字色などの「文字の書式」と、行間/インデント/段落の罫線などの「段落の書式」を組み合わせて、スタイルとして管理していくことが可能となっている。

まずは、Wordに初めから用意されているスタイルを段落に適用するときの操作手順から解説していこう。マウスをドラッグして段落全体を選択する。続いて、「ホーム」タブの「スタイル」グループにある「下向き矢印」のアイコンをクリックする。

  • 段落を選択して「スタイルの一覧」を表示

    段落を選択して「スタイルの一覧」を表示

スタイルの一覧が表示されるので、この中から好きなスタイルを選択する。すると、選択していた段落にスタイルが適用され、「文字の書式」と「段落の書式」が一括指定される。

  • 適用するスタイルの選択

    適用するスタイルの選択

以下の図は「見出し1」のスタイルを適用した例だ。フォントや文字サイズなどの書式が一括指定されていることを確認できるだろう。

  • 「見出し1」のスタイルを適用した例

    「見出し1」のスタイルを適用した例

もうひとつ例を紹介しておこう。以下の図は「表題」のスタイルを適用した例だ。フォントや文字サイズに加えて、配置などの書式も一括指定されていることを確認できる。

  • 「表題」のスタイルを適用した例

    「表題」のスタイルを適用した例

このようにスタイルを使って書式を一括指定することも可能だが、残念ながらWordに初めから用意されているスタイルはあまり使い勝手がよくない。よって、実際にスタイルを活用するときは、自分でスタイルを作成して、それを利用していくのが一般的な使い方となる。続いては、スタイルを自分で作成するときの操作手順を紹介していこう。

スタイルを作成・適用してみる

スタイルを作成するには、あらかじめ「自分で書式を指定した段落」を用意しておく必要がある。ここでは、以下の図のように見出しをデザインした場合を例に操作手順を解説していこう。なお、段落罫線を使って見出しをデザインする方法は、本連載の第3回第4回第5回第6回第7回で詳しく解説している。よく分からない人は、あわせて参照しておくとよいだろう。

  • 見出し用として指定した書式

    見出し用として指定した書式

書式の指定が済んだら、その段落を選択する。続いて、「ホーム」タブの「スタイル」グループにある「下向き矢印」をクリックし、スタイルの一覧から「スタイルの作成」を選択する。

  • スタイルの作成(1)

    スタイルの作成(1)

新しいスタイルの作成画面が表示されるので、適当な「名前」を入力して「OK」ボタンをクリックする。今回の例では、「中見出し」という名前でスタイルを作成することにした。

  • スタイルの作成(2)

    スタイルの作成(2)

以上でスタイルの作成は完了。スタイルの一覧を開くと、「中見出し」というスタイルが追加されていることを確認できる。

  • 作成されたスタイル

    作成されたスタイル

あとは、このスタイルを見出しの段落に適用していくだけ。なお、適用するスタイルがリボンに表示されている場合は、スタイルの一覧を開かずに、そのままスタイル名をクリックしてもよい。

  • スタイルの適用(1)

    スタイルの適用(1)

  • スタイルの適用(2)

    スタイルの適用(2)

このように見出しの書式を「スタイル」として作成しておくと、各段落にスタイルを適用していくだけで、同じ書式を一括指定することが可能となる。

もちろん、必要に応じて何個でもスタイルを作成していくことが可能だ。たとえば、「大見出し」→「中見出し」→「小見出し」という具合に、3段階の見出しで文書を構成するときは、それぞれに対応するスタイルを3つ作成しておけばよい。さらに、箇条書きとして示す段落のスタイルなど、用途に応じて必要なだけスタイルを作成しておくと、以降はスタイルを適用するだけで書式指定を済ませられるようになる。

  • 作成したスタイル

    作成したスタイル

正直な話、見出しが登場するたびに、そのつど書式を指定しているようでは「まだまだWordの初心者」と言わざるを得ない。2〜3ページくらいの短い文書であれば「書式のコピー」などで対応しても構わないが、それ以上の長い文書を作成するときは「スタイルを活用するのが基本」と考えるべきだ。

Wordに慣れている上級者ほど、「スタイルを上手に使いこなしている」といっても過言ではない。まだスタイルを使ったことがない人は、この機会にスタイルの基本的な仕組みを学んでおくとよいだろう。

スタイルの適用時に注意すべきポイント

念のため、段落にスタイルを適用するときの操作手順について補足しておこう。これまでに説明した手順では「段落全体を選択した状態」でスタイルの適用を行っていた。

  • 段落全体を選択した場合

    段落全体を選択した場合

  • スタイルを適用した後の様子

    スタイルを適用した後の様子

では、それ以外の状態でスタイルを適用した場合はどうなるだろうか? 順番に解説していこう。

まずは、「段落内にカーソルを移動した場合」だ。この場合も、段落全体がスタイルの適用対象になる。よって、先ほど示した「段落全体を選択した状態」と同じ結果になる。

  • 段落内にカーソルを移動した場合

    段落内にカーソルを移動した場合

  • スタイルを適用した後の様子

    スタイルを適用した後の様子

続いては、「段落内の一部の文字だけを選択した場合」だ。この場合は、選択した文字だけにスタイルが適用される。また、適用されるのは「文字の書式」に限定されることに注意しなければならない。「段落の書式」は適用されないため、行間や段落罫線などの書式は反映されない。

  • 段落内の一部の文字を選択した場合

    段落内の一部の文字を選択した場合

  • スタイルを適用した後の様子

    スタイルを適用した後の様子

スタイルを利用するときは、このようなルールがあることを覚えておく必要がある。特に「段落内の一部の文字だけを選択した場合」の挙動には注意しなければならない。この挙動を上手に応用できるケースもあるが、通常は「段落全体を選択した状態」または「段落内にカーソルを移動した状態」でスタイルを適用するのが基本だ。間違えないように注意しておこう。

「標準」スタイルの適用について

最後に、Wordに初めから用意されている「標準」のスタイルについて説明しておこう。このスタイルは少し特殊なスタイルで、Wordに初期設定されている書式を指定するスタイルとなる。言い換えると、「すべての書式をリセットして初期値に戻したいとき」に活用できるスタイルだ。

具体的な例を紹介しておこう。以下の図は、<対象エリア>の段落に間違って「大見出し」のスタイルを適用してしまった例だ。この書式を元に戻したいときは、「標準」のスタイルを適用してやればよい。

  • 「標準」スタイルの適用

    「標準」スタイルの適用

すると、すべての書式がリセットされ、何も書式を指定していない“本文”と同じ書式になる。

  • 「標準」スタイルを適用した段落

    「標準」スタイルを適用した段落

このように、間違って指定した書式をリセットしたい場合に「標準」のスタイルが活用できる。直前の操作を取り消す「Ctrl」+「Z」キーで対応してもよいが、この方法が使えるのは誤操作をした直後のみ。その後、別の編集作業を行ったときは「Ctrl」+「Z」キーを何回も押して操作をひとつずつ取り消していく必要があり、少し面倒なことになってしまう。このよう場合に備えて、「標準」のスタイルで書式をリセットする方法も覚えておくと役に立つだろう。

ということで、今回は「スタイル」の基本的な使い方を紹介した。次回は、スタイルの書式を修正する方法と文字スタイルについて紹介していこう。