日本語の入力において、タッチタイピングの速度(精度)と同じくらい重要になるのが「効率よく漢字変換すること」だ。そこで今回は、漢字変換する際に覚えておくと役立つキー操作を紹介していこう。練習不要で「すぐに使えるテクニック」となるので、ぜひ使い方を学んでおくとよい。
誤変換した単語の再変換
自分で入力した文章を読み返したときに「漢字変換のミス」に気付くこともあるだろう。もちろん、誤変換を発見したら、その場で修正しておくのが基本だ。このとき、皆さんはどのように操作しているだろうか?
具体的な例を見ながら話を進めていこう。以下の図は、メールの本文を入力した例だ。送信する前に本文を読み直してみると、「支店」と入力すべきところを「視点」と誤変換していることに気付いた。
これを修正する際に、(1)「視点」の文字を選択する、(2)もう一度「してん」と入力する、(3)正しい漢字に変換する、という手順で操作を進めている人も多いだろう。
このやり方でも誤変換を修正できるが、もっと少ない手数で誤変換を修正する方法もある。それが「変換」キーの活用だ。標準的なキーボードであれば、「Space」キーの右隣に「変換」キーが配置されているはずだ。
このキーには「入力済みの文字を再変換する機能」が割り当てられている。このため、誤変換した文字を選択して「変換」キーを押すだけで、正しい漢字に再変換できる。
つまり、もう一度「してん」と入力しなおす手間を省略できることになる。これまで「変換」キーの使い途を知らなかった人は、この機会に覚えておくとよいだろう。
ただし、各キーの役割をカスタマイズしている場合は、「変換」キーに別の機能が割り当てられている可能性もある。念のため、設定の確認方法を紹介しておこう。
(1)タスクバーの右端に表示されている「あ」または「A」のアイコンを右クリックし、「設定」を選択する。
(2)「Microsoft IME」の設定画面が表示されるので、「キーとタッチのカスタマイズ」を選択する。
(3)「変換キー」の項目が「再変換」に設定されていることを確認する(※または「キーの割り当て」が「オフ」になっていることを確認する)。
連載第4回で紹介したように、「変換」キーに「IME-オン」などの機能を割り当てると、再変換を行うためのキーが無くなってしまう。よって、ここで紹介したテクニックは使用不可になる。このあたりは、各自が使いやすい設定になるように取捨選択するしかない。
なお、Wordの場合は「Space」キーでも再変換を行えるようになっている。その手順は、誤変換した文字を選択して「Space」キーを押すだけ。
この方法でも手軽に再変換を実行できる。「変換」キーに「再変換」以外の機能が割り当てられていても構わない。こちらも便利に活用できるので、ぜひ覚えておくとよいだろう。
変換候補の表示数を増やす
続いては、変換候補として一覧表示される単語(文字)の数を増やす方法を紹介していこう。氏名の入力など、スムーズに漢字変換できないときに活用するとよい。
ここでは、Excelに氏名を入力する場合を例に具体的な操作手順を紹介していこう。以下の図は、漢字の“よみ”をタイピングした直後の状態だ。最初は5個の変換候補が表示されている。
「Space」キーを押して漢字変換を実行し、さらに「Space」キーを押して変換後の漢字を選択していくと、一覧表示される変換候補の数は9個に増える。
この状態で「Tab」キーを押すと、一覧表示される変換候補の数を最大36個にまで増やせる。あとは上下左右の「矢印」キーを押して、変換後の漢字を選択するだけ。何回も「Space」キーを押さなくても、目的の漢字を素早く選択できるようになる。
なお、変換しづらい漢字を入力するときに「まずは変換しやすい単語を入力して……」という手法を使う人も見受けられるが、Excelの場合は少し注意が必要となる。というのも、Excelは入力時の“よみ”を「ふりがな」として自動記録する仕組みになっているからだ。この「ふりがな」は50音順の並べ替えに利用される。
たとえば「卓典」(たかのり)と入力する場合、まず「卓球」と入力して「球」の文字を削除する、そのあと「辞典」と入力して「辞」の文字を削除する、といった方法でも「卓典」の文字を入力することは可能である。しかし、その「ふりがな」は“タカノリ”にはならない。この場合の「ふりがな」は“スグルテン”になってしまう。よって、正しい50音順に並べ替えられなくなってしまう。
こういったトラブルを避けたいのであれば、なるべく正しい“よみ”で漢字を入力しなければならない。そのためにも、変換候補の一覧を増やすテクニックを覚えておくと役に立つだろう。
単漢字辞書の活用
Microsoft IMEには、1文字の漢字に特化したシステム辞書となる「単漢字辞書」も標準装備されている。ただし、この辞書はオフ(無効)に初期設定されているため、変換候補には表示さない。続いては「単漢字辞書」を有効化する方法を紹介していこう。
(1)タスクバーの右端に表示されている「あ」または「A」のアイコンを右クリックし、「設定」を選択する。 (2)「Microsoft IME」の設定画面が表示されるので、「学習と辞書」を選択する。
(3)「単漢字辞書」の項目を「オン」に変更する。
これで「単漢字辞書」に登録されている情報も変換候補の一覧に表示されるようになる。比較しやすいように、まずは「単漢字辞書」がオフの状態の変換候補から紹介していこう。以下の図は「いく」とタイピングして変換候補の一覧を表示した例だ。
続いては、「単漢字辞書」をオンにした場合の例だ。先ほどの変換候補に加えて、赤線で囲んだ変換候補が追加されていることを確認できるだろう。さらに、2ページ目以降があることを示すセレクタも表示されている。
このように「単漢字辞書」をオンにすると、通常よりも多い変換候補を表示できるようになる。人名や地名など、通常の読みでは変換できない漢字、普段は使わない難解な漢字などを入力するときに活用できるだろう。
その一方で、滅多に使わない漢字が変換候補に並んでしまう、というデメリットも生じる。「単漢字辞書」により追加される変換候補は“一覧の最後”に表示されるため影響は小さいが、これらの漢字が学習機能により“一覧の最初のほう”に表示されてしまう可能性もある。よって、人名や地名を入力する機会が少ない方は「単漢字辞書」をオフのまま使用したほうが便利かもしれない。各自のニーズに合わせてオン/オフを切り替えるのが正しい活用方法になるだろう。
Microsoft IMEのライブ変換機能
最後に、Microsoft IMEの「ライブ変換機能」について紹介しておこう。こちらは「Space」キーを押さなくても自動的に漢字変換してくれる機能となる。
使い方は、ただひたすら日本語の“よみ”をタイピングしていくだけ。文字数が90文字を過ぎたくらいで、先頭から勝手に漢字変換されていく、という仕組みになっている。
そのつど「Space」キーを押す手間が省けるのがメリットといえるが、この機能を使いこなすには相当のタイピング力が求められる。上図をみると分かるように、ライブ変換を利用するには延々とタイピングを続けていかなければならない。また、「予測変換を利用できなくなる」というデメリットも生じる。よって、ミスなく超高速にタイピングできる人でないと、その恩恵を感じられないかもしれない。
最近は漢字変換の精度が向上しているため、自動変換であっても誤変換されてしまうケースは少ないと思われる。長文を一気にタイピングするほど変換精度は良くなるので、昨今のIMEの性能を考えると、十分に使える機能といえるだろう。ただし、使う人のスキルを選ぶ機能であることに変わりはない。もしもタイピングに自信があるなら、試してみるとよいだろう。

















