前回に引き続き、今回も半角/全角に関連するテクニックを紹介していこう。今回は、IMEをオン(全角入力モード)にした状態のまま「半角スペース」を入力する方法と、WordやExcelで半角/全角を上手に切り替える(変換する)方法を紹介する。これらのテクニックも文字入力の高速化に貢献してくれるはずだ。

  • 半角/全角の自動切り替え、半角スペースの入力など

Shift + Spaceキーによる半角スペースの入力

まずは、入力モードに関係なく、必ず「半角スペース」を入力する方法から紹介していこう。前回は「すべての文字をIMEオンのまま入力するのが最強かも……」という話をしたが、この際に問題となるのが半角スペースの入力だ。IMEがオンの場合、「Space」キーを押すと全角スペースが入力される。このため、半角スペースを入力できない状態になってしまう。

この問題を解決する方法としてShift + Spaceキーの使い方を覚えておくとよい。「Shift」キーを押しながら「Space」キーを押すと、入力モードに関係なく、必ず「半角スペース」を入力することが可能となる。

  • Shift + Spaceキー

以下の図は、IMEをオン(全角入力モード)にした状態のまま文章を入力した例だ。この文章内にある2つの半角スペースはShift + Spaceキーで入力している。

  • IMEオンの状態で半角スペースを入力した様子

このようにShift + Spaceキーを使うと、IMEがオンの状態でも半角スペースを問題なく入力できるようになる。便利に活用できるので、ぜひ覚えておくとよいだろう。

ちなみに、この入力方法は「Microsoft IME」により初期設定されているものとなる。念のため、その確認方法を紹介しておこう。

  1. タスクバーの右端に表示されている「あ」または「A」のアイコンを右クリックし、「設定」を選択する
  2. 「Microsoft IME」の設定画面が表示されるので、「キーとタッチのカスタマイズ」を選択する

すると、以下の図のような設定画面が表示される。この画面にある「Shift + Space」の項目が「別幅スペース」に設定されていれば、Shift + Spaceキーで半角スペースを入力できる。

  • 「Microsoft IME」の設定確認

なお、このキー割り当てを「IME-オン/オフ」などに変更している場合は、その動作が実行されることになる。Shift + Spaceキーで半角スペースを入力できないときは、こちらの設定を確認してみるとよいだろう。

そのほか、Excelでの挙動にも注意しておく必要がある。Excelでは、行全体を選択するショートカットキーにShift + Spaceキーが割り当てられている。IMEがオフのときは、このショートカットキーが正しく機能してくれる。

  • Excelの動作(IMEオフ)

一方、IMEがオンのときは「Microsoft IME」の設定が優先されるため、Shift + Spaceキーは半角スペースの入力になる。

  • Excelの動作(IMEオン)

ExcelでShift + Spaceのショートカットキーを多用する方は、IMEのオン/オフに応じて挙動が変化することも覚えておく必要があるだろう。

Wordで半角/全角を統一する

続いては、Word文書の半角/全角を統一するテクニックを紹介していこう。Wordには半角/全角を一括変換できる機能が用意されている。このため、「半角/全角を無視して文章を入力し、あとから一括変換する」といった使い方も可能である。

ひととおり文章を書き終えたら、「ホーム」タブにある「文字種の変換」から「半角」を選択する。すると、選択している範囲内にある「全角文字」を「半角文字」に一括変換できる。

  • 「文字種の変換」で半角に統一

ただし、「英数字」だけでなく、「カタカナ」や「カッコ」まで半角に変換されてしまうのが弱点といえる。よって、この機能をそのまま使うことはできない。

  • 半角に統一された文書

そこで、アルファベットだけを半角に一括変換するテクニックを覚えておくとよい。「検索」コマンドから「高度な検索」を選択する。

  • 「高度な検索」の呼び出し

続いて、以下の手順で操作を進めていく。

  1. 検索する文字列に [A-z] と入力する
    ※Aとzは全角、大カッコとハイフンは半角で入力する
  2. 「オプション」ボタンをクリックして検索オプションを表示する
  3. 「ワイルドカードを使用する」をチェックする
  4. 「検索する場所」に「メイン文書」を指定する
  • 検索条件の指定

すると、全角で入力されているアルファベットだけが自動選択される。これで半角/全角が入り乱れている文書の中から、全角のアルファベットだけを選択範囲に指定できる。

  • 検索条件に合致する文字が自動選択される

この状態で「文字種の変換」から「半角」を選択すると、選択中の文字だけを半角に変換することが可能となる。

  • 「文字種の変換」で半角に変換

  • 選択中の文字のみ半角に変換した文書

同様の手順で、全角の数字だけを半角に一括変換することも可能だ。この場合は、検索する文字列に [0-9] と入力すればよい(0と9は全角で入力する)。

直接的な「文字入力の高速化」ではないが、半角/全角を気にしながら文章を入力する必要がなくなるため、間接的には「文字入力の高速化につながる」と考えられるだろう。

Excelのデータ入力時に半角/全角を自動切り換え

Excelにデータを入力するときに役立つテクニックも紹介していこう。Excelには「データの入力規則」という機能が用意されている。この機能を上手に活用すると、IMEのオン/オフを自動的に切り替えてデータを入力できるようになる。

以下の図に示した名簿を例に、その手順を紹介していこう。IMEの初期値を指定するセル範囲を選択し、「データ」タブにある「データの入力規則」をクリックする。

  • セル範囲の選択と「データの入力規則」

「データの入力規則」の設定画面が表示されるので、「日本語入力」タブを選択する。続いて、IMEの初期値を指定する。今回の例の場合、「氏名」の列には日本語(全角)でデータを入力するので、IMEを「オン」に設定して「OK」ボタンをクリックすればよい。

  • IMEを自動的にオンにする場合

同様の手順で、IMEの初期値をオフに設定することも可能だ。たとえば、「氏名ローマ字」の列には半角の英字でデータを入力するので、IMEを「オフ(英語モード)」に設定して「OK」ボタンをクリックすればよい。

  • IMEを自動的にオフにする場合

このように、それぞれのセル範囲に「IMEの初期値」を設定しておくと、自分でIMEのオン/オフを切り替える手間を省けるようになる。

実際の挙動を紹介しておこう。以下の図は「氏名」のデータを入力している様子だ。このセルはIMEがオンに初期設定されているため、セルを選択するだけで日本語(全角文字)を入力できるようになる。

  • データの入力例(IMEを自動的にオン)

一方、「氏名ローマ字」の列にあるセルを選択した場合は、IMEが自動的にオフになる。このため、そのままタイピングしていくだけで半角文字を入力できる。

  • データの入力例(IMEを自動的にオフ)

ほかにも、IMEの初期値を「ひらがな」や「全角カタカナ」に設定するなど、データの内容に応じて入力モードを自動的に切り換えることが可能となっている。適切な初期値を設定しておけばデータ入力の高速化を期待できるだろう。

もちろん、自分でIMEのオン/オフを切り替えたり、Shift + Spaceキーで半角スペースを入力したりすることも可能である。

メールの半角/全角を制御するには?

最後に、メールの本文を入力するときの半角/全角について補足しておこう。メールの場合は、自分でIMEのオン/オフを切り替えるのが基本となる。半角/全角の制御機能が用意されているメールアプリ、というものは特に見当たらないようだ。よって、各自の日本語入力スキルがそのまま反映されることになる。前回の記事も参考にしながら、半角/全角を確実に切り替えていくしか手段がない。

その一方で「あまり神経質にならない」という考え方もある。Excelのようにデータを扱うアプリでは、半角/全角の入力ミスが重大な問題に発展してしまう恐れがある。一方、文書やメールは「相手に内容を正しく伝えること」が重要であり、半角/全角の違いは些細な問題と考えられる(もちろん、相手にもよるが……)。むしろ、半角/全角の切り替えスキルを向上させるよりも、AIを有効活用することに尽力したほうが仕事の効率は上がるかもしれない。

実は、今回の記事も英単語を全角で記載している部分が何カ所かある。読んでいて気付いただろうか? 気付いた方もいるかもしれないが、だからといって特に問題が生じた訳ではないはずだ。気付かなかったのであれば、半角/全角の違いはもっと意味のない論点といえる。

「日本語入力を高速化できれば仕事も速くなる」というのは、あくまで一般論であり、必ずしも絶対的な正解ではない。場面や目的に応じて「何を重視すべきか?」を取捨選択することも大切だ。そういった観点も踏まえながら、日本語入力の高速化に少しずつ取り組んでいくとよいだろう。