本連載では、これまで20回にわたって「日本語入力を高速化する方法」を紹介してきた。最後に、これまでに紹介してきた内容をおさらいしておこう。この連載をきっかけに「なぜ日本語入力の高速化が必要なのか?」を再確認してもらえれば幸いだ。
なぜ日本語入力の高速化が必要なのか?
最近、とかく注目を集めているのが「どうしたら業務を効率化できるか?」という問題。その解決策として“IT化の推進”や“AIの有効活用”などが挙げられているが、もっと根本的で、個人でも実現可能な解決策もあるのではないだろうか? そのひとつが「日本語入力の高速化」だ。
パソコンでの作業が多い人は、1日に何十分、いや何時間も日本語入力を行っているだろう。これを高速化できれば業務の効率化につながるはずだ。これは「単に入力時間を短くする」という話ではない。頭で考えるスピードと同じ速さで文字を入力できるようになれば、かなりの効率化を期待できる、というのが本筋だ。
日本語入力が遅いと、文字入力が完了するまでの間に「文章を作成する思考」が一時停止してしまう。そして、文字入力が終わってから「続きの文章を考える」という流れになる。つまり、思考が何回も寸断されてしまうのだ。この思考の寸断がひんぱんに起きているようではスムーズな業務進行など望めない。
ということで、本連載では日本語入力を高速化するためのノウハウをいくつか紹介してきた。今回は、その内容をおさらいしておこう。
高速化の基本はタッチタイピング
文字入力の高速化において最も重要なのは、やはり「各自のタイピング技術」といえる。タイピングが遅い、タイプミスが多い、といった状態では、どんなに工夫しても日本語入力を高速化することはできない。もちろん、タイピング技術は高ければ高いほどよい。
何年もパソコンで仕事をしている人は、「いまさらタイピングなんて……」と思うかもしれない。では、自分のタイピング技術は「すでに完成している」と言えるだろうか? おそらく「そこそこのスピードでタイピングできるけど、意外とタイプミスも多い」という人が大半を占めると思われる。
このタイピング技術を向上させるには、日々の練習の積み重ねていくしかない。また、やみくもに練習する訳にもいかないので、何らかのツールを頼る必要もある。このような場合に活用できるのが、Webブラウザで利用できるタイピング練習ツールだ。マナビジョンの「タイピング練習ツール(日本語編)」のように、手軽にタイピングを練習できるツールは数多く提供されている。
これらのツールを利用して、自身のタイピング技術を磨いていくのが高速化を実現するための第一歩となる。
音声入力の活用も視野に入れる
どうしてもタイピングが苦手という人は、「音声入力」の活用も視野に入れるとよい。音声認識技術が発達した現在では、音声入力も立派な入力方法の一つといえる。ヘッドセットを用意すれば、周囲に同僚がいる職場であっても、意外と使える入力方法になるだろう。
音声入力の唯一の弱点は、句読点や記号の入力に手間取ること。この問題は、句読点を自動入力するように設定変更することで、ある程度は解決できる。
あとは、ささいなミス(間違い)を気にしないで一気に文章を音声で入力していくこと。その都度、修正作業を行うのではなく、文章全体の入力が済んでから修正を施すという流れで作業していくと、音声入力を効果的に活用できると思われる。
ユーザー辞書の積極的な活用
キーボードを使った文字入力に話を戻して解説を進めていこう。誰でも手軽に実行できて、即効性のあるテクニックとなるのが、よく使う単語をユーザー辞書に登録しておく方法だ。
最近のIMEは優秀なので、普通に漢字変換できないケースはめったに存在しない。よって、文字入力を速くするために“短縮よみ”で単語(またはフレーズ)を登録しておく、というのがユーザー辞書の主な使い道になる。
入力ミスを何回も犯してしまうような単語は、その場でユーザー辞書に登録しておくとよいだろう。もし後で不都合が生じたときは、その単語をユーザー辞書から削除するか、もしくは“短縮よみ”を変更すれば済む話だ。
求められるスキルは、「単語をユーザー辞書に登録する方法」と「登録した単語の管理方法」を覚えるだけ。日本語入力の高速化に意外と貢献してくれるので、ぜひ積極的に活用していくとよいだろう。
IMEの設定をカスタマイズする
さほど大きな効果は期待できないが、試してみる価値は十分にあるのが「IMEの設定変更」だ。特に「半角/全角」キーの操作ミスが多い人は、何らかの対策を講じておくとよい。
たとえば、IMEのオン/オフを「Caps Lock」キーと「カタカナ ひらがな」キーで切り替えるように習慣化するのも効果的な対策法といえる。
「無変換」や「変換」のキーを使っていないのであれば、これらのキーにIMEのオン/オフの機能を割り当ててもよい。
そのほか、予測入力を開始するまでの文字数を変更する、変換候補に含める文字の種類を限定するなど、ある程度はMicrosoft IMEの動作をカスタマイズできる。
また、変換時に使えるキー操作も覚えておくと役に立つ。たとえば、「Tab」キーを押して変換候補を最大36個まで表示する、(ファンクションキーではなく)ショートカットキーで全角カタカナや半角英数に変換する、といった操作方法を使えるようになれば、多少なりとも日本語入力を高速化できると思われる。
IMEに「Google 日本語入力」を使用する
Windows標準装備のMicrosoft IMEではなく、他のIMEを使用して日本語入力を高速化する方法もある。無料で使用できる日本語IMEとしては「Google 日本語入力」が有力候補になるだろう。
Google 日本語入力には、よくある読み間違えを自動補正してくれる「もしかして機能」が標準装備されている。このため、多少の読み間違え(勘違い)があっても、そのまま日本語入力を続行できる。
そのほか、最新用語への対応、数式の計算機能など、Google 日本語入力ならではの機能が数多く装備されている。これらについては本連載の第11回・第12回・第13回・第14回で詳しく解説しているので、気になる人は参照しておくとよいだろう。
IMEに「ATOK」を使用する
長い歴史を持つ「ATOK」も日本語IMEの選択肢に挙げられる。サブスク契約が必要な有料のIMEとなるが、そのぶん機能は豊富だ。2025年には新しい変換エンジン「ATOKハイパーハイブリッドエンジン2」が搭載され、さらに使いやすいIMEへと進化している。
ATOKの予測変換(推測変換)には、タイピング時の“抜け”や“押し間違え”を自動補正した「類推候補」も表示される。このため、多少のタイプミスがあっても、そのまま日本語入力を続けられる。
タイプミスした文字を消去して、もういちど正確にタイピングしなおす、といった手間を省けるため、タイプミスが多い人にとっては非常に重宝する機能になるだろう。この機能だけでも、日本語入力の高速化にかなり貢献してくれるはずだ。
そのほか、辞書データを活かした機能が豊富に用意されていることも、ATOKならではの特長といえる。住所の一部をタイピングして完全な住所に補完する、住所の一部から郵便番号を検索する、といった使い方にも対応している。
また、単語の意味をその場で調べられる「ATOKクラウド辞典サービス」、意味が似ている単語を一覧表示してくれる「連想変換」、単語を後方検索できる「ATOKナントカ変換」なども“文章を考える時間を短縮する”という意味でも効果的に機能してくれるだろう。
そのほか、間違ってIMEオフ(半角)で入力した文字を日本語に変換する機能、日本語を外国語に翻訳して入力できる機能など、あると便利な機能が数多く装備されている。
ATOKの各種機能については本連載の第15回・第16回・第17回・第18回・第19回・第20回で詳しく解説しているので、気になる人は一読しておくとよい。30日間にわたってATOKを無料で使える体験版も用意されているので、各機能の概要や使い勝手を実際に試してみることも可能だ。
なお、「Google 日本語入力」や「ATOK」を試してみるときは、ある程度の期間にわたって試用していく必要がある。というのも、最初は学習効果がゼロの状態になっているからだ。数時間程度の試用で評価を下すのではなく、少なくとも数日間にわたって試用を続けてから、もとのMicrosoft IMEに戻すのか、それとも新しいIMEに乗り換えるのか、を判断するとよいだろう。
以上で、本連載は閉幕となる。この連載を読んだだけで「日本語入力が速くなる」とは到底思えないが、少なからずヒントにはなってくれるだろう。この連載をきっかけに「日本語入力の高速化」に興味をもって頂ければ、それだけでも十分だ。あとは本人の努力次第。少しずつ継続していけば、きっと役立つスキルになってくれるはずだ。




















