本連載の第1回「コンテンツ管理が今再注目されている理由」では、企業や組織が持つ情報の実に90%を占めると言われるコンテンツが、ファイルサーバーやシステムのストレージ領域に無秩序に格納されている状態が、業務生産性を大きく損なう原因となっていることを指摘しました。→過去の「コンテンツ管理の現在と未来」の回はこちらを参照。

「探す時間」と「理解する時間」

これをユーザー目線の言葉に置き換えると、必要な情報を「探す時間」を大きく消費してしまっている、と言えるでしょう。

そして、この課題については、セキュアな基盤でコンテンツ管理を一元化することが、解決の道筋となることを解説しました。しかし、コンテンツ活用にはもう1つ大きく消費される「時間」があります。それが「理解する時間」です。

例えば、文字がびっしり詰まった、100ページのPDFドキュメントがあったとします。読み終えるのに、皆さんはどのくらい時間をかけますか。

  • コンテンツ活用のボトルネック

    コンテンツ活用のボトルネック

単純計算で、1ページ1分のペースで進められたとしても、1時間40分かかることになります。しかし、これはあくまで、「読み終えるまで」です。「内容を理解するまで」には、不明点を調べたり、事情に詳しい専門家に訊ねたり、再度読み直したりする時間が、さらにかかることになります。

筆者は、IT業界に長く身を置いているため、読み込むのが大変なドキュメントといえば、RFP/RFI(提案依頼書/情報提供依頼書)などを思い起こします。皆さんの業界でも、同様に、読むのに苦労させられる文書や資料があるのではないでしょうか。

生成AIが変える近未来のコンテンツ活用

2022年、ChatGPTが世に出てきた時、読者の皆さんも衝撃を覚えたのではないでしょうか。簡単な指示を出すだけで文章を作ってくれたり、人間が作成した文章を読みやすく作り直してくれたり、有能なアシスタントのような動きをする「生成AI」の登場は、これまでの働き方を大きく変えるパラダイムシフトの到来と言っても過言ではないでしょう。

皆さんご存じのように、生成AIは、文章を生成するだけでなく、要約もしてくれます。質問をすれば、回答もしてくれます。これは、前述の、コンテンツ活用における「理解する時間」の問題を解決してくれることを意味しています。

  • コンテンツ基盤+生成AIが 「探す時間」と「理解する時間」を短縮する

    コンテンツ基盤+生成AIが 「探す時間」と「理解する時間」を短縮する

コンテンツ基盤に、生成AIを使った「ドキュメント要約機能」や文書の内容を説明してくれる「アシスタント機能」が装備されたらどうなるかを、想像してみてください。

ChatGPTを使うとき、要約したい文章を、文書ファイルからコピー&ペーストしたり、生成AIが良い回答を返せるように必要な情報を付加したり、問い合わせをする前の手作業が発生するのが、やや不便なところです。

コンテンツ基盤側に、生成AIとの連携機能が搭載されていて、そのような面倒な作業をシステムが処理してくれれば、とても便利と言えるのではないでしょうか。

「コンテンツ管理は不要」という誤解

横断検索ソリューションと生成AIを組み合わせて「業務用ChatGPT」を構築しようと考える企業が増えてきています。例えば「〇〇プロジェクトの〇月の定例会議の議事録を要約して」などと指示を与えると、対象のコンテンツを探してきてくれ、その内容を要約してくれるようなシステムです。

「生成AIが探してくれるのであれば、コンテンツ管理はもはや不要なのでは」と、つい思ってしまいますが、それは大きな誤解です。基本的に、企業が持つ情報は、アクセス権限が細かく設定されています。「営業部のみ」、「役職者のみ」、「プロジェクトメンバーのみ」など、皆さんの身の回りにも、共有範囲を制限した上で情報を管理している例が、あるのではないでしょうか。

「業務用ChatGPT」を構築しようとすると、生成AIだけでは実現できず、必ず、何らかの横断検索ソリューションを使用することになりますが、これらは、検索対象に対してクロール処理を行い、あらかじめ検索インデックスを作っておく仕様となっているのが一般的です。

  • 横断検索 vs コンテンツ一元管理

    横断検索 vs コンテンツ一元管理

そのインデックスは基本的に1つだけであり、ユーザーごとにインデックスを作ることは難しく、ユーザー権限を加味した検索を行うことが困難です。そのため、社員全員がアクセス可能な情報だけを対象としたユースケースにしか適用することができません。

まずは、コンテンツを一元管理して、統一されたセキュリティポリシーに基づいたアクセス権限を付与し、許可された範囲だけが対象となるような検索を実現することが必要と言えるでしょう。そして、そのコンテンツ基盤と生成AIが密結合されていれば、アクセスを許可されたコンテンツだけを元情報とした回答を返すことが保証されたセキュアな状態で、生成AIを活用できます。

本連載は、第 3 回までとなります。最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。データ活用の世界がAI/ML で進化したのと同様に、コンテンツ活用の世界が生成 AI で大きく変わろうとしている、そんな今こそ、コンテンツ管理のあり方を今一度見直す必要があるのではないでしょうか。読者の皆様が、コンテンツ管理について、少しでも興味を持ってくだされば幸いです。