Strohmaier氏の語る数字で見るスパコンの発展
続いて、Erick Strohmaier氏が登壇して、TOP500の性能や国別のシステム数などの推移について講演した。
TOP500には25年、50版のデータが集まった。25年の性能向上のトレンドを見ると、何よりもムーアの法則が効いていると感じられる。そこで、各リストを500システム平均の性能で正規化して分析した。
TOP500 1位のシステムの性能をプロットしたのが次の図である。
次の図は、1位のシステムがそれぞれの年の500システムの平均性能の何倍の性能を持っているかをプロットしたものである。この図で2003年ころに80倍を少し超えているシステムがあるが、これは地球シミュレータである。しかし、他のシステムの性能が年々上がるので、地球シミュレータの性能は2005年には平均性能の10倍強まで低下している。2012年ころに70倍を少し超えているのは京コンピュータで、もっとも最近の2つの線は中国の天河2号と神威・太湖之光である。
平均性能の70倍とか80倍というぶっちぎりの高性能で登場したシステムも3年も経つと平均の10倍程度のやや大きめのシステムという位置づけになることが分かる。
次の図は正規化したHPL性能をサイト別に集計したもので、TOP500の25年の歴史で、他所と比べて最も強力なコンピュータを有していたのはローレンスリバモア国立研究所であり、次いでロスアラモス国立研究所、オークリッジ国立研究所、サンディア国立研究所である。米国が貯蔵核兵器の管理を行うためのスパコンに大金をつぎ込んできたことがよくわかる。
それに次ぐ5位は中国の広州市にある国立スーパーコンピュータセンターである。国防科技大が開発した天河2号などのスパコンを擁している。それに続くのが、理研AICSで京コンピュータを擁している。兵器研究を行わないスパコンセンターとしては、理研AICSが世界一の計算能力を持っている。
次の図は米国のトップ4研究所の正規化したHPL性能の伸びをプロットしたもので、ローレンスリバモア国立研究所は2000年以降、急速にスパコン能力が向上している。また、オークリッジ国立研究所は2008年ころから伸びが加速化している。これに対して、ロスアラモスとサンディア国立研究所は若干、伸びが鈍化している。
なぜ、このようになるのかはわからないが、面白い分析である。
次の図は正規化したHPL性能を国別に集計したもので、米国が圧倒的な1位で、日本が2位、中国が3位となっている。現在のTOP500の1位と2位のスパコンは中国であるが、稼働期間が短いので、50回のリストの総計をとるこの計算では、貢献は小さくなっている。
国別のデータを50リストの総計ではなく、時系列の折れ線グラフで表すと、次のようになる。ここ数年、中国のスパコンの正規化HPL性能の合計が急速に増加し、最新のリストでは中国が米国を上回っている。また、日本は、1990年代には高い総計性能を持っており、その後、地球シミュレータ、京コンピュータで性能を引き上げた時期もあったが、全体的に低落傾向で、スパコンへの投資が少なくなっていると思われる。
(次回は12月5日に掲載します)