Incertoは10月16日、医療機関向けの「院内ローカルAI基盤」の提供を開始したと発表した。院内に設置した専用ハードウェア上でローカルLLM(大規模言語モデル)を動作させることで、患者データなどの機密情報を院外に送信せずに生成AIを利用できるという。導入前のセキュリティ点検から導入後の更新・保守まで一貫して支援するほか、音声カルテAIや算定AIチャットなど4種類のAIソフトウェアを無償で提供する。
インターネットから切り離した専用ハードウェアでAIを実行
院内ローカルAI基盤では、医療機関の規模や用途に合わせた専用ハードウェアを院内に設置する。患者データを扱うハードウェアはインターネットから切り離し、AIへの質問や入力文書を院内で処理する構成となっている。
院外から取り込む情報は、AIモデルやソフトウェアの更新データ、告示・通知などの公開情報に限定する。AIの実行にインターネットを使用しないため、インターネットや外部サービスが停止している場合でも、院内のPCから利用することができる。
ただし、サーバーなどを院内に置くだけで安全性が確保されるわけではない。そこで、厚生労働省の「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」などを踏まえ、導入前に外部との接続点や機器の更新状況、保守体制を点検するとしている。
点検の対象には、VPN装置、ベンダーの遠隔保守回線、モバイル回線のルーターなどが含まれる。各ベンダーとの保守契約を確認し、対象機器を誰が保守しているのかも明確にする。
医療機関の業務に合わせてAIを構築
セキュリティ点検後は、専用ハードウェア上にAIの実行環境とソフトウェアを導入する。さらに、診療報酬算定の確認、医療文書の下書き、院内資料の検索など、医療機関ごとの業務に合わせたAIの仕組みを構築する。
導入後は、Incertoがハードウェア、ソフトウェア、AIモデルの更新と保守を担当する。更新データは同社が内容を確認し、医療機関と取り決めた手順に沿って取り込む。保守用回線は常時接続せず、必要な場合に限って接続するという。更新の担当者や時期、対象については、医療機関、Incerto、各ベンダーで協議し、文書で定める。
算定AIチャットや音声カルテAIなど4種類を提供
同基盤で動作するAIとして、「算定AIチャット」「音声カルテAI」「医療文書の作成支援」「医療情報の検索チャット」の4種類のソフトウェアを無料で提供する。
例えば、算定AIチャットでは、診療報酬の算定に関する質問に対し、告示、通知、疑義解釈の該当箇所を示して回答する。回答の根拠が見つからない場合は回答せず、その旨を示すほか、院内マニュアルなどを参照対象に加える設定にも対応する。
また、音声カルテAIでは、診察時の会話からSOAP形式のカルテの下書きを作成可能。「医療文書の作成支援」では、カルテの記載から退院サマリーや紹介状の下書きを作成する。「医療情報の検索チャット」では、院内の規程やマニュアル、医薬品の添付文書などから質問に関係する箇所を探し、出典を示して回答する。
このほか、Incertoのエンジニアが院内業務を確認し、どの作業をAIに任せるかを医療機関と検討した上で、個別の業務に合わせたAIも構築するとしている。
専用ハードウェアの購入費用と、導入、構築、保守にかかる費用は、医療機関の規模や用途に応じた個別見積もり。導入期間は約4~6カ月を目安とする。



