水を吸って膨らみ、上に乗せた重りを「重量挙げ」のように持ち上げることができる立方体の高分子ゲル粒子を、大阪工業大学の研究グループが開発した。吸水性の素材は使い捨ておむつなどが実用化されているが、球体以外の粒子形状は少なく、製造工程も手間がかかっていた。今回のゲルはプラスチックの板で液体を囲むだけで作れるのが特徴。電力を使わずに重りを持ち上げるため、グループは「環境にやさしい動力の取り出しができた」としている。
大阪工業大学工学部応用化学科の藤井秀司教授(界面コロイド化学・高分子化学)はこれまで、液体を閉じ込めた球体「リキッドマーブル」の研究に取り組んできた。リキッドマーブルは、中の液体を小さな固体粒子が取り囲むようにした構造で、高分子ゲル合成の「反応容器」になりうる。
高分子ゲル粒子には表面張力が働くため、一般的に球体の形をしており、転がりやすい。ミクロの世界で見ると、高分子が網の目のように連なっており、その間に水や油分がつかまるような作りをしている。
球体ではないゲルは、媒体中での動き方や変形の仕方、集まり方に特徴があり、球状にはない働きを示すことから注目されている。特に、表面積が広いことや、向きによって相互作用が変わることなどを生かして、医療やロボティクス、超小型機械など、様々な分野で役立つと期待されている。
研究グループは水と親和性の高いポリエチレングリコール・ポリグリセリン系のモノマーに着目。数マイクロリットルをポリエチレンテレフタレート(PET)の板で挟んだところ、モノマーがPET板の形状に合わせ、丸や四角など自在に変化することを発見した。重合後に板をはがせば、モノマーの形状と同じ形の高分子粒子が得られた。
板の形状や数、モノマーの体積を操作することで、最終的に正四面体などの正多面体で安定性を持った状態でリキッドマーブルを作れた。さらに、このリキッドマーブル内部のモノマーを重合することで、リキッドマーブルと同じ形状の正多面体高分子粒子を合成できた。
この正多面体粒子に水を滴下すると、高分子が水を吸収して膨らみ、ゲル粒子になった。立方体の形状にした乾燥状態のゲル粒子を4つ、四角の形になるように並べ、その上にガラス板と重りの計約10グラムを設置。水を与えると粒子は高さ方向に約1.6倍膨れ、重りは重力に逆らうように持ち上がった。
一般的に、物を持ち上げるためには、電力や磁力を使う必要があるが、今回の仕組みを使えば、水を加えるだけでよい。藤井教授は「立方体にすることで、地面との摩擦が起きやすくなるため動きにくくなり、位置安定性が高くなった。球状のゲル粒子にはない利点がある」と話した。今後は、純水以外に、酸性やアルカリ性の溶液などで膨らむゲルを作り、様々な用途に用いることができるように改良を重ねたいという。
研究は日本学術振興会の科学研究費助成事業と、阪本薬品工業(大阪市)の助成を受けて行われた。阪本薬品工業はモノマーを提供した。成果は米国化学会の「ラングミュア」電子版に3月7日に掲載され、同12日に大阪工業大学が発表した。
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