【〝楽観は許されない〟米中接近と日本外交 】ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト・矢嶋康次

総選挙で勝利した高市政権は、2026年度予算を早急に成立させ、国民生活への影響を最小限に抑える必要がある。

 責任ある積極財政のもとで成長戦略を速やかに示し、外部環境の悪化に耐え得る経済構造を構築せねばならない。成長の果実をできるだけ早期に実現し、インフレや長期金利上昇といったマイナス要因を抑え込むための、迅速な対応が求められている。

 一方、外交環境が大きく変化する中、日本は安全保障と経済の両面を同時に立て直すという難題にも直面している。

 今年は米中両首脳が少なくとも4回以上、直接会談する見通しだ。世界の超大国のトップがこれほど頻繁に会談する以上、単なる儀礼ではなく、具体的な外交成果が伴うと見るのが自然である。

 昨年の貿易交渉では、中国がレアアースの輸出管理を交渉カードとする中で、米国の対中強硬姿勢に変化の兆しが見られた。

 米国は昨年11月に公表した「国家安全保障戦略」において、事実上モンロー主義を現代化したとも言える路線を一段と強めている。これは、トランプ大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」を1823年のモンロー主義になぞらえ、西半球全体へ拡張する戦略だ。

 西半球を米国の排他的勢力圏として再定義する一方で、リベラルな国際秩序や多国間協調の優先度は大きく後退した。情勢は急速に変化し、従来の前提は通用しなくなっている。その結果、米中という二大超大国がそれぞれの勢力圏を管理・主導する構図が浮かび上がり、事実上のG2体制のもとでパワー・ポリティクスに傾斜する姿勢がにじんでいる。

 ベネズエラに対する強硬な資源・政権介入姿勢や、グリーンランド買収構想の再浮上、同盟国である欧州への追加関税措置(後に撤回)などは、勢力圏を重視する方針を行動で示す例と言える。

 今年の米中首脳会談では、中国が米国に対し、レアアース供給で一定の譲歩を示す可能性がある。その場合、米国が中国の「核心的利益」とされる台湾問題をめぐり、戦略的曖昧性を拡大し、実質的関与を後退させるのではないかとの見方も浮上している。

 カナダによる対中関税引き下げや、フィリピンのビザ要件緩和など、周辺国では対中関係を実利的に調整する動きが広がりつつある。

 米国は先の報告書で、当面は西半球に次ぐ重要地域としてアジアを位置付けているが、G2体制が進めば、アジアへの関与が弱まるリスクは否定できない。

 これは日本にとって明確な不利益であり、楽観は許されない。

 4月には今年初の米中首脳会談が予定されており、それに先立ち、3月後半には日米首脳会談も行われる。こうした情勢の中で、日本はいかに対応すべきかが問われている。