米大手企業の人事責任者たちが、AIエージェントの管理方法に関する従来の考え方に異議を唱えている。AIエージェントに人間と同様の名前や職名を与え、組織図に載せるアプローチは、技術から最大の価値を引き出す妨げになるという。

AIエージェントのこだわりが仇となる

Wall Street JournalのWSJ Leadership Instituteが3月26日に米国で開催した「Chief People Officer Summit」で、米IBMの最高人事責任者(CHRO)のNickle LaMoreaux氏、Microsoftの最高ピープル責任者、Amy Coleman氏らが対談した。

IBMのLaMoreaux氏は、同社がかつてHarry、Hermione、Charlie、Sherlockといった名前のエージェントを運用していたことを明かしたうえで、個々のエージェントのユースケースに注目しすぎた結果、より影響力の大きなプロセス全体の再設計に活用できなかったという。

「エージェントが何をするか、このAIが何をするかという点にこだわりすぎているCPOが多すぎる」とLaMoreaux氏は指摘する。そして、最大の効果は、メール作成を支援するような個別のアシスタント型エージェントではなく、AIをエンタープライズのワークフロー全体に組み込むことで生まれると強調した。同氏は「技術はこれまで何十年も管理してきたやり方で管理すればいい。人の管理とはまったく別物だ」と述べている。

MicrosoftのColeman氏も同様の立場だ。同社のエージェントにも名前がついているが、独立した職名を与えることは想定していないという。同氏は「職種や仕事そのものが自動化されるというより、仕事の中のタスクが自動化されると考えている。AIエージェントが人間を管理するようになる未来は現時点では想定していない。今はまだ、どう整理していくかを模索している混乱期だ」と話す。

AIの導入を個々の業務改善にとどめず、企業全体のプロセス再設計へ

Boxの共同創業者兼CEOのAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は、法的責任の観点からもAIエージェントを人間と同一視することの問題を指摘した。同氏は「責任は人間が負わなければならない。法律はすべてそのように設定されている」と述べ、高機能なエージェントであっても自らの行動に法的責任を負うことはできないと説明した。

IBMのLaMoreaux氏はさらに、AIをワークフローに統合する際には経営トップが主導する姿勢が不可欠だとも指摘する。同氏は「カスタマーサポートをどう提供するか、昇進プロセスをどう運営するか、何を自動化するか。そうした方針をトップダウンで組織に宣言することが重要だ」と述べている。

AIの導入を個々の業務改善にとどめず、企業全体のプロセス再設計として捉え直すことが、テクノロジーから真の価値を引き出す鍵だという考えを強調する。AIへのアプローチはこれまでのデジタルトランスフォーメーションや自動化の波への対応と本質的に変わらないとし、過去の経験を活かした冷静な導入戦略が重要だという見解を示した。

一方、レヴィ氏はエージェントが企業内部にもたらす変革は、過去の自動化の波と比べて桁違いに大きくなると予測しており、「企業の仕事において、これまでで最大のシフトだ」と断言している。