清水材木店代表取締役・江﨑奨平が語る「創業60年余の老舗材木店がITと木材の新たな事業に挑む」

木材でつくれないものを木材でつくる─。当社は岐阜県安八町で創業から60年以上の歴史を持つ材木店です。大工であった私の祖父が創業し、コツコツと住宅づくりを続けて会社を伸ばしていきました。

 しかし、その祖父も88歳と高齢化した上に祖母が亡くなったことで元気を失い、会社は一気に厳しくなりました。一方の私は祖父の会社を継ぐ気は全くなく、全然違う道を歩んできました。新卒でシステムエンジニアとして勤務していたのです。

 身長は150センチにも満たない小柄でしたが、背中は大きく、オーラがあった祖父が、みるみるうちに小さく見えたのが、まさにこの頃。廃業の危機に直面し、初めて見る祖父の後ろ姿を見て、何とか力になれることはないかと家業への転職を決めました。2018年です。

 木材の世界とは全く無縁でしたが、昭和の大工だった祖父の会社経営は完全なアナログ。パソコンは1台もなく、電話とFAXで受発注をするのが当たり前。まずは社内の環境整備に取り組み、21年に法人化して私が代表取締役に就任しました。

 では、事業をどうするか。気付いたのが、当社の資産は木材の加工技術と住宅用の加工機械であるということ。これまでの大工の仕事からは撤退し、私の知見も生かせるEC販売と絡ませることで、新事業を始められるのではないかと考えました。

 次に具体的に何をつくるか。加工技術と機械があれば、木製の家具をつくれることが分かりました。ただ、木材の家具だけでは付加価値がつきません。私が思いついたのはオーダーメイド。それまでもオークションやオンライン販売は行われていましたが、実際に購入者の手元に届いたときに大きさやイメージが異なり、満足度が下がっていることが分かったのです。ならば、オーダーメイドに特化し、お客様のイメージ通りの家具を届けることができればチャンスがあると感じたのです。

 そこで始めたのがクラウドファンディングを活用した次世代昇降式デスク「木動(KIDOU)デスク」の製造・販売です。2枚の天板が独立して静かに昇降し、奥の天板を上げると、デスクの混沌(ケーブルや書類、デスクトップPCなど)を一瞬で隠せる巨大な収納スペースが出現するというものになります。

 当時、コロナ禍で在宅ワークが普及したのですが、市場にある電動昇降デスクの大半が無機質な鉄のフレームに既製品の天板を載せただけ。私たちは木材の持つぬくもりを活かし、木材の可能性を追求したのです。32万円を超える価格でしたが、クラウドファンディングで1000万円を超える応援購入を達成しました。

 ただ私の気づきはそれだけではありません。日本が誇る林業の活性化が求められているということです。日本の国土の約7割は森林ですが、林業従事者の高齢化などで定期的な間伐ができず、森林は荒れ放題。日光が差し込まないため、土壌に栄養が貯まらず、植物も生えてこない。土壌が荒れれば地すべりといった災害リスクが高まります。この現実に危機感を感じました。

 今後はこの林業の課題にも向き合っていきたいと考えています。まだ国産材を使用するには価格面などでハードルが高いのが現状です。しかし、少しでも世の中の鉄やプラスチックを木材に置き換えることができれば、林業の復活にもつながるはずです。

 木が持つぬくもりや優しさを一人でも多くの人々に届けられるように、ITを活用した知恵を生み出していきます。

わが国ロボット学の第一人者・石黒浩さん 【私の雑記帳】