寺島実郎・日本総合研究所会長 イラン問題にどう対処するか?

イスラエルの本音とは?

 ─ 米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けて、世界中が混乱しています。寺島さんは現状をどのように受け止めていますか。

 寺島 今回のイラン攻撃について、多くの人は米国が主体的に動いたと理解しているかもしれませんが、実は米国は及び腰のイラン対応で、イスラエルに振り回される米国というのが、今回の最大のポイントです。

【トヨタ・豊田章男氏も登壇】WEB300カンファレンス開催!

 ネタニヤフのイスラエルとトランプの米国がシンクロしたというのが、今回の戦争なるものの悲劇の大きな要因だと思います。

 まず、現在のイスラエルは、保守派の政党と極右政党との連立政権になっている。その政権を支えているのが「リクード」という勢力で、その背後には「ロシア帰りのユダヤ人」の存在が大きいと言われています。

 彼らの思想的背景には、以前から申し上げているように、「マサダ・コンプレックス」という言葉があって、かつてユダヤ人がローマ帝国に追い詰められて、イスラエルにあるマサダの砦で全滅したという歴史(紀元73年)の悲話を語り継いできました。彼らは、油断していると民族の滅亡に至らしめられるかもしれないという深層心理が根強くあります。

 ─ それを2000年もの間、語り継いできたと。

 寺島 ええ。ユダヤ人ほど、苦難の民はありません。世界中で悲劇を味わい、離散して、抑圧と弾圧で差別を受け、ものすごく苦しんできたわけです。

 ところが、同じような立場にある人に対して、彼らが共感や思いやりを見せるかと言ったら、必ずしもそうでもない。イスラエルによるガザ地区での一連の行動を見ても、首をかしげざるを得ません。

 2月末に米国とイランは核協議を行い、合意寸前だという報道までなされたにも関わらず、イラン攻撃に踏み切った。そこにイスラエルの本音が見えてきます。要するに、米国とイランの間で合意が形成され、イランが国際社会に戻ってこられては困ると。徹底的にイランの体制をつぶす必要があるというイスラエルの思惑にどんどん引っ張られて、やむなく米国もついていかざるを得なくなったというのが正確なところだと思います。

 ─ なぜ、ロシア帰りのユダヤ人という人たちはそんなに強硬なのですか。

 寺島 「ポグロム」と言って、19世紀にロシアでのユダヤ人の大迫害が起こりました。

 19世紀末、世界のユダヤ人の半分はロシアにいました。その頃、ロシアの皇帝・アレクサンドル2世の暗殺事件があって、ロシア国内でユダヤ人に対する弾圧が始まりました。要するに、ナチス・ドイツによるホロコースト(大量虐殺)よりも以前からユダヤ人への弾圧が起こっているわけです。

 それが伏線となって、19世紀後半からのユダヤ人国家建設運動(シオニズム)とも相まって、イスラエルにはマサダ・コンプレックスを抱いたロシア帰りのユダヤ人が数多く流入しました。

 イスラエル建国は1948年ですが、冷戦が終結したソ連邦崩壊の前後10年ほどで100万人近くのユダヤ人が旧ソ連からイスラエルへ渡ったとされています。建国当初は社会主義国家だったイスラエルが、強硬で右派的傾向が強いロシア系移民が徐々に力をつけていくような流れができていきました。そうした流れの中で、現在のネタニヤフのイスラエルができているということなのです。

 ─ いろいろ歴史的な伏線があって今があると。

 寺島 もう一つは……

続きはこちら