【 経済産業省 】脱・中国依存”を視野にレアアース供給網の多角化へ

経済産業省は、レアアース(希土類)の”脱・中国依存”を視野に供給網の多角化を進めている。ただ、昨年11月の高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁から日中関係は急速に悪化。中国政府がレアアースを含む軍民両用品の輸出規制強化を発表するなど、圧力をかけてきている。鉱山開発からレアアースの製品化までには10年以上かかるケースもあり、難しい判断を迫られそうだ。

 レアアースはレアメタル(希少金属)に分類される鉱物のうち、イットリウムなど17種類の総称で、自動車やスマホなどに使われる。中国は、世界のレアアース採掘の約7割、精錬の約9割のシェアを握り、対立国に圧力をかける外交カードとなっている。

 日本は2010年、尖閣諸島沖の漁船衝突事件を巡る対立から、中国に輸出を事実上停止された苦い経験を持つ。

 中国への依存低減に向けて、経産省所轄の独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、海外でのレアアース鉱山開発や製錬事業に出資してきた。

 鉱山開発では、11年から双日と共に豪州の企業に出資し、25年には中国がほぼ100%のシェアを占める電気自動車のモーター素材に必要なジスプロシウムなど重希土類の供給も開始している。精錬事業では、仏の精錬工場に岩谷産業と共同出資を行い、将来的に日本で必要な量の約2割を賄える見込みだ。

 海外出資で成果が出る一方、日中関係は日々悪化している。

 中国商務省は26年2月に、三菱重工業や防衛大学校など日本企業20社や団体に対し、レアアースを含む軍民両用品の輸出禁止を発表。政府関係者は「いつ対象が拡大するかは分からない」と危機感を募らせる。中国が禁輸とは別に、石油元売りのENEOSなど20社・団体を「警戒リスト」に登録し、輸出審査を厳格化する方針を示しているからだ。

 仮に中国が全面輸出停止に踏み切った場合、国家備蓄の放出は避けられない。JOGMECによると、現在の備蓄量は非公表。経済安全保障に関わる与党系議員は「企業の生産が急に止まることはない」と話すも、どれくらい持ちこたえられるかは未知数だ。

 政府には中国との緊張緩和に向け、粘り強いやりとりが求められる。

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