NTT東日本 岩手支店(以下、NTT東日本)、岩手医科大学、北上済生会病院、岩手県は3月19日、NICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室)に入院する赤ちゃんと、院内の別室または自宅・職場など遠隔地にいる家族をつなぐ遠隔実証「愛のカタチ」を開始することを発表した。
今回の実証は、映像・音声に加え、触覚情報を遠隔の家族へ伝えることで、入院中でも親子の心理的つながりを支援することを目的としている。
実証の背景と目的
日本は少子化が進む一方で、医療の高度化により高レベルの周産期医療体制を実現し、28週未満で生まれる超早産児の生存率は世界の中でも高い水準にある。低出生体重児・超早産児の救命率向上により、NICUでの長期入院児は増加傾向にあり、医師や医療従事者の不足、家族支援の在り方、地域医療連携の実現など早期の課題解決が求められている。
特に岩手県では、広い県土や積雪などの地理的条件により家族が頻繁には病院に来られない場合も多く、コミュニケーション不足が課題となっていた。
こうした背景から、NTT東日本と岩手医科大学はこれまで地域医療連携のコミュニケーション支援に取り組んでおり、2021年にオンライン診療システムを導入し、医療的ケア児の通院負担軽減や感染リスク低減に寄与してきた。
また、2022年には小児病棟とプロバスケットボールチーム「岩手ビッグブルズ」の試合会場をつなぎ、触覚を共有する「モバイルタッチ」を活用した応援体験を実施するなど、医療と地域とのコミュニケーション拡張にも取り組んでいる。
今回実施する実証「愛のカタチ」では、映像や音声に加えて触覚情報を伝送するシステムをNICUに導入。広い県土や積雪などの地理的条件から面会困難となる岩手県の社会課題解決、さらに家族愛を高めるウェルビーイング向上にも資することを目的として、NTT東日本がNTT社会情報研究所との共同実験のもと、岩手医科大学、北上済生会病院、岩手県と連携して行う。
病院現場の負担や新生児へのリスクを高めることなく、遠隔地の家族に効果的に新生児の身体情報を伝える方法として、新生児のベッドサイドモニタから心拍情報(NICUでは基本的に常時取得しているもの)を取得し、それと同期する振動を家族へ届ける。
同時に、家族の音声をNICUの新生児へ届けることで、身体情報を伴う双方向オンライン面会を実現する。
身体性情報伝送技術を活用したオンライン面会システム
実証では、遠隔の家族には保育器の中の新生児の映像と音声に加えて、新生児の心拍に同期する「トクントクン」という心臓の鼓動の触感(振動)を提示する。
振動の情報は、病院現場の負担や新生児へのリスクを高めることがないよう、センサーを新たに新生児に装着するのではなく、ベッドサイドモニタから心拍のタイミング情報を取得し、それに合わせて家族が持つデバイスの振動スピーカーでモデル心音を再生する形式を採用した。
同時に、家族の声を保育器に設置したスピーカーから届けることで、双方向のやり取りも可能。
従来のオンライン面会では、新生児の映像を見る視覚情報のみの例が主流となっていた。多くの親にとって好ましい体験である反面、触れたいのに触れられないという葛藤など課題も残されていた。
「愛のカタチ」の取り組みは、身体性情報伝送技術を活用することで、離れていてもわが子に触れているような体験を家族に届ける新しい試みとなる。
事前の検証において、NICUに入院している新生児の父母に院内の別室で体験してもらったところ、コンピュータ画面で新生児の様子を見るだけの通常のオンライン面会と比べて、「わが子の存在をより身近に感じられた」とする程度の回答は、統計的にも有意に高い結果が得られたという。
インタビューでも、「抱っこしている感覚を視覚・触覚の双方で感じられた」「心拍を感じることで抱いているような感覚になり、寂しさが軽減した」といった声が寄せられている。
これにより、触覚情報が付与されることで、離れていても、触れ合いを通じて育まれる親子の絆や愛着の促進につながる可能性が示された。
今回の実証では、実際の利用シーンを想定し、新生児が入院する大学病院と、家族の自宅や、自宅の近くの病院(県立病院など)とを遠隔でつなぎ、複数拠点間での運用指針や、祖父母・きょうだいを含む年齢・立場の異なる家族での利用しやすさについて検証する。




