
動物と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。犬や猫に代表されるようなペットとして癒しや安らぎを与えてくれている存在、あるいは牛・豚・鶏といった畜産用としての存在と捉える方もいるでしょう。
2013年にファイザーのアニマルヘルス事業から独立して設立された当社は「予測・予防・診断・治療」のサイクルにおける各領域において、ポートフォリオを展開している世界のリーディングカンパニーになります。動物用医薬品の開発・製造・販売を行い、ペット用も畜産用にも対応した動物医療に貢献しています。
核家族化が進み、一人暮らしの高齢者が増えるなど、日本の家庭環境は大きく変わりました。また、コロナ禍を契機に「コンパニオンアニマル」と呼ばれる伴侶動物としての存在感が高まっていることも事実です。
加えて、ペットオーナーの87%がペットを飼うことで自身のメンタルヘルスが改善したという統計があるなど、アニマルセラピーの普及で健康づくりはもちろん、日本の医療費削減などにも貢献することができます。
実は飼い犬の頭数自体は2007年の1232万頭から25年は682万頭へと減少しているのですが、1頭当たりにかける費用は増加しています。結果、動物医薬品市場は伸びているのです。それだけ我々も革新的な医薬品を開発して飼い主のみならず、緊急手術などに追われる獣医師などの労働負荷低減に寄与していかなければなりません。
既に当社はペット用の動物向けの診断サービスを行っていることに加え、畜産用の産業動物でも当社は幅広い対象の医薬品やワクチンの開発・製造・販売、遺伝子検査を行っています。
さらには15年に、内蔵されているカメラが1尾ごとに魚を撮影し、その画像を用いてコンピュータが体長を測定して射針の位置や深度を自動調整できる技術を持つノルウェーのPHARMAQ社を買収。水産事業者の負担軽減に貢献しています。
このような当社の取り組みもさることながら、私が16年に当社の社長に就任して以来、ずっと感じていたことがあります。それが動物医療の底上げです。伴侶動物は私たちのQOL(生活の質)を引き上げ、産業用の動物は経済安全保障につながる食の安定化に結び付いています。
しかしながら、そういった側面があまりにも知られていない上に、獣医療に携わる方々の精力的な取り組みの発信が、十分ではない状況です。動物医療の世界を、本来あるべき位置に引き上げることが私の大きな役割の1つだと思っているのです。
そこで私は日本独自のスローガンに「業界メジャーリーグ化構想」を掲げています。人の命を救う医療が米国のメジャーリーグであるならば、動物の命を救う動物医療も同じ舞台に立つべきです。そのために製品やサービスの提供だけでなく、獣医師や生産者、パートナーの皆様と共に課題解決に取り組み、動物医療の社会的価値を発信していかなければなりません。
私も業界や業種の壁を越えて様々な著名人と対談を行ったり、高齢者・児童養護施設へのセラピードッグの派遣や子どもたちを招待して行う動物とのふれあい体験イベント、畜産分野での講義・農場見学など、業界としてのプレゼンス(存在感)を高める取り組みに注力しています。
少しでも動物医療が社会に認知されれば、動物医療の世界で働く我々の仲間のやりがいや満足感も高まるはずです。動物の健康が私たちの暮らしや社会の基盤を支えていることを知っていただきたいと思っています。