アビームコンサルティング執行役員 プリンシパル(人的資本経営戦略ユニット長)・久保田勇輝 が語る「求められる「選択と集中」による人的資本経営」

企業活動における人材不足は深刻な課題になっていますが、当社が昨秋に人事・経営企画部門に所属する管理職500人を対象に実施した調査によると、実は単なる人材の不足だけではないことが分かりました。

 約6割の企業で人材不足に加えて「人材過剰」が同時に発生していることが判明しました。これは企業内に構造的な人材ミスマッチが存在することを示しています。事業環境が大きく変化する中、企業に求められる事業変革のスピードに対し、人材の配置や育成が追いついていないという現実があります。

 日本企業の生きる道の1つとして労働生産性の向上が挙げられますが、それを実現するためには人材の質の向上や、力を最大限発揮できる状態をつくることが重要です。そのため、単に人を増やすだけでは抜本的な解決にならず、人材の再配置や役割の見直しも含めた対応を検討する必要があります。

 もちろん、売上高の拡大により人員規模を大きく変えずに成長することも考えられますが、本調査が示すように、30~50代の働き盛り世代の一部で過剰やミスマッチが発生していることに目を向けなければなりません。

 なぜそのような事態に陥っているのか。背景には組織構造や人事制度に起因する慢性的な人材の過不足、構造的なアンバランスが広がっていることがあります。DXやAIの導入によって業務プロセスが急速に変化し、ジョブ型人事制度やスキルの可視化といった取り組みも進んでいますが、現場レベルでは適材適所の人材配置や能力活用が十分に機能していないのです。

 一方の働く社員側にとっても、「自分の能力を発揮できる部署に配属されていない」「自分の職務に求められる能力や、次に伸ばすべきスキルが見えにくい」といった声が聞かれます。また、優秀な人材が特定部門に長期間とどまり、新たな挑戦の機会を得にくい状況も課題として顕在化しています。こうした複数の要因が複雑に絡み合うことで人材のミスマッチが生まれ、それが本調査の結果として表れていると考えられます。

 今後、企業は事業戦略や市場環境の変化に応じて人材配置を見直し、需給のバランスを動的に調整する「動的マッチング」が求められます。自社の人材ポートフォリオの可視化を進め、スキルや経験、役割期待などを共通言語として可視化し、納得感のある形で仕組み化する対応が求められるでしょう。

 その際、経営トップが方向性を示した上で、権限を委譲することが欠かせません。中でもCHRO(最高人事責任者)などの人材領域の責任者が主導する体制を築くことは有効な手立てだと思います。経営トップは会社の未来を示し、具体策は各部門の責任者が実践していくことが健全だからです。

 人材不足が深刻化していく中、いかに人材の有効活用を実現できるかが行く末を左右します。実際に日本企業の中でもこうした取り組みの事例が見られるようになりました。例えば日揮では、人と仕事を適切につなぐことで価値を生み出すという考えのもと、個々のスキルや経験を踏まえた活躍機会の創出に取り組んでいます。「選択と集中」を意識した人的資本経営の一例と言えるでしょう。

 当社は企業と人材の最適なマッチングを持続させて人材のポテンシャルを最大限に引き出すための考え方として、「ケイパビリティ型人材マネジメント」を提唱しています。人的資本経営の高度化を通じ、企業の持続的成長と競争力強化を支援していきます。

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