Google Cloudは3月19日、都内で「Agentic AI Summit '26 Spring」を開催した。本稿では「生成から実行へ:Agentic AI が加速させるビジネス変革の最前線と Gemini Enterprise が示す未来」と題した基調講演の内容を紹介する。

AIフルスタックを自社で運用するGoogle Cloudの強み

はじめに、登壇したGoogle Cloud 日本代表の三上智子氏は「これまでのAIは個別のタスクを効率化するツールだったが、これからのAIは複数のエージェントが横断的・自律的に連携するパートナーとなり、大きなビジネスインパクトを実現できる時代。そのAIの入口となるのが『Gemini Enterprise』です」と述べた。

  • Google Cloud 日本代表の三上智子氏

    Google Cloud 日本代表の三上智子氏

同氏によると、Gemini EnterpriseはAIエージェントのプラットフォームであり、企業内に分散しているデータを集め、コンテキスト(文脈)にして自律的に業務を行うことができる“総司令塔”としての役割を務めることができるという。複雑なビジネスプロセスを自動化・実行し、顧客の業務を革新していくとのことだ。

三上氏は「月間100億人規模のユーザー基盤を支える堅牢なインフラを有しており、信頼性・可用性を重視して継続的に運用しています。10年前に現在のCEOであるスンダー・ピチャイがAIファーストカンパニーを名乗り、10年かけてAI専用のチップセットからデータ分析基盤、研究開発&AIモデル、プラットフォーム、エージェント&アプリまでフルスタックのレイヤが連携し、お客さまに価値を提供しています」と話す。

また、GoogleのAI開発組織であるGoogle DeepMindの日本拠点では、商習慣や言語の細かいニュアンスなどを含め、最新のAIモデルに反映させることで、最先端の技術を日本のユーザーに提供していることを強調した。

KDDIとGoogle Cloudが進めるAI時代の戦略的パートナーシップ

続いて、ゲストとして登壇したKDDI 執行役員 先端技術統括本部長の藤井彰人氏が、同社とGoogle CloudのAI活用戦略について紹介した。まずは両社におけるパートナーシップから振り返ってみよう。

KDDI(au)は2006年に日本初となるモバイル端末にGoogle検索を搭載し、スマートフォン時代にはAndroid端末の国内展開を先駆けて行い、その後もYouTubeバンドルプランやXR(クロスリアリティ)・メタバースなどで協業を続けてきた。

藤井氏は「2025年にはAI時代の新たな戦略的パートナーシップを発表した。このパートナーシップではB2C、B2E(Business to Employee)、B2Bの3つの領域で取り組みを進めています」と説く。

  • KDDI 執行役員 先端技術統括本部長の藤井彰人氏

    KDDI 執行役員 先端技術統括本部長の藤井彰人氏

  • KDDIとGoogle Cloudのパートナーシップによる取り組み

    KDDIとGoogle Cloudのパートナーシップによる取り組み

B2C領域ではAIを活用し、auブランドで新たなパーソナルコンテンツサービスの開発している。漫画や雑誌、辞書などのコンテンツプロバイダー、専門メディア、データ事業者と連携し、AIによる新しい情報体験を提供。信頼できる情報提供のためコンテンツポリシーを遵守し、Google Cloudの専門家から開発ノウハウを学びつつ推進しており、詳細は2026年4月~5月ごろに発表を予定している。

B2Eは企業が自社の従業員や提携企業の従業員に対して、商品、サービス、業務支援などを提供するものだ。ここでは、全社的なAI活用を促進するため、Google Cloudと共催でGemini Enterpriseの社内活用による革新的アイデアの発掘、イノベーションを創出するため「KDDI AI Agent Day with Google」を開催。

64組が応募し、500人以上が参加しており、非エンジニアのチームによる業務改善提案など幅広い成果が披露されたという。優勝は広報チームで広報の分析を行うAIエージェントを提案し、社内でシステム化が進行している。

B2B領域については、旧シャープ堺工場跡地を転用し、2026年1月に稼働を開始したAIに特化した「大阪堺データセンター」(大阪府堺市)で、Google Cloudの技術を顧客のデータセンターやエッジ環境に拡張するハードウェアとソフトウェアのソリューションの提供を開始。

また、地政学的なリスクなどをふまえ、すべてをクラウドに依存せず、Gemini Enterpriseなどの技術を自社環境で技術やノウハウを保持・活用する、いわゆる「手の内化」を進めており、これをもとに顧客企業にセキュアかつ柔軟なAIソリューションを提供していく考えだ。

  • Gemini Enterpriseなどの技術を「手の内化」していくという

    Gemini Enterpriseなどの技術を「手の内化」していくという

最後に、藤井氏は「B2C領域では共同サービスの開発や、B2B領域においてはローカルエンタープライズソリューションの構築をはじめ、多様なパートナーとともに共創できればと考えています」と述べ、講演を締めくくった。