NECはCelonisのプロセスマイニングを積極的に活用し、データドリブン経営を加速している。Celonisを通じて、本社と生産会社、保守会社を横断する形でハードウェア事業に関する保守部品在庫の管理業務を最適化。在庫状況全体を可視化し、柔軟性を持たせた運用を行い、成果をあげている。
さらに、国内最大規模のSAPによる基幹システムのモダナイゼーションにもCelonisを適用。約1600本のアドオンを仕分けし、生成AIを活用した効率的なクリーンコア化と自動運用を推進しているという。
今回、NEC 執行役 Corporate 執行役員専務(EVP)兼 最高情報責任者(CIO)の小玉浩氏と、Celonis 代表取締役社長の村瀬将思氏に、活用事例について話を聞いた。
NECがデータドリブン経営に舵を切った背景
NECは、データドリブン経営へとシフトしている。この取り組みにおいて、Celonisは重要な役割を果たしている。では、NECがデータドリブン経営へと舵を切るきっかけになったのはなんだったのか。話はちょっと遠回りにはなるが、その経緯に触れておきたい。
NECは2000年代前半に経営が悪化し、大規模な構造改革に取り組んだ経験を持つ企業だ。当時は株価が100円を下回り、1万人規模の人員削減にも取り組まざるを得ないほどの瀕死の状況だった。
2013年に「社会価値創造型企業」に変革することを同社は宣言。これを「第3の創業」として新たな成長戦略を打ち出し、2016年に「2018中期経営計画」をスタートした。これらの取り組みは、NEC復活の象徴となるはずだった。だが、残念ながら暗いトンネルは抜け出せず、中期経営計画の初年度には営業利益が半減し、1年で計画を撤回せざるを得ない事態に陥ってしまったのだ。
当時のNECを表現すれば「頭ではわかっていても、足腰がついていかず、実行力が追いついていない」(NEC 会長の新野隆氏)という状況であり、社内には古い体質や文化が依然として残ったままだった。
危機感を感じた経営陣は「これまでの当たり前を捨てる」ことを基本方針に据え、NECの文化そのものを変えることに着手した。この中心的な取り組みが「Project RISE」と呼ばれるカルチャー変革プロジェクトである。このとき経営がコミットする形で、全社DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを、同時にスタートしたのである。
NECの小玉氏は「お客さまのDXを支援すると言いながら、自分たちがDXで成果を出せていない。それでは説得力がない。自らがDXを成功させ、結果を出すために当社が0番目のクライアントとなる『クライアント・ゼロ』を推進し、新たなテクノロジーを率先して利用して、そこで得た生きたナレッジをお客さまに提供する仕組みを構築した」と語る。
2021年6月には、CEO直下となる「Transformation Office」を立ち上げて、社内DXの取り組みを加速。コーポレートインフラの再構築や、経営基盤と人材の高度化、ビジネスアウトカムの創出につなげていった。
NECグループのすべてのITシステム、データ、IT運用を、CIO配下に集約。仕組みや運用、人のマネジメントを共通化するとともに、データマネジメント専任組織を設置し、データドリブン経営にシフトしたのだ。
カルチャー変化にまでメスを入れた社内DXの取り組み成果は、業績にも表れた。2017年度から2024年度まで、NECは8期連続で期初計画を達成。今年度(2025年度)の計画達成も射程内に入っている。そして、この8年間で時価総額は8倍強になるという成果も生まれている。
さらに、NECのクライアント・ゼロの取り組みは、2024年5月に発表した新たな価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」のオファリングやシナリオにも反映され、日本の企業のDX推進の支援につながっている。BluStellarは、計画を1年前倒しで達成するなど好調に推移。すでに、国内ITサービスの売上高の3割以上を占めている。
「One NEC System」の実現へ - Celonisで可視化し、サイロ化を崩す
NECは、こうした取り組みを推進し、成果を重ねるなかで、さらなる成長を狙いITシステムの全体最適化と、データ価値の最大化を狙い「One NEC System」の構築に着手。同社が推進するデータドリブン経営を次のステージに引き上げるための施策に取り組むなか、プロセスマイニングの活用にも乗り出した。
小玉氏は「NEC社内には1200以上のシステムが存在し、それぞれがサイロ化していた。まずは、優先度の高いものから統合することに着手した。そのために必要なのは、プロセスを可視化すること。それにより、改善とアクションを回すこともできる」と説く。
ここで、NECが注目したのがCelonisである。まずは、2022年5月にPoV(価値実証)として、アジア太平洋地域(APAC)において、SAPで稼働していた基幹システムのプロセスの可視化を行った。
小玉氏は「Celonisでプロセスを可視化したところ、業務がスパゲティ状態になっていることがわかった。しかも、1000の業務パターンで運用していると思っていたものが、1万2000もの業務パターンが存在し、プロセスが行ったり来たりしている実態も浮き彫りになった。直感的に、プロセスマイニングを徹底して利用すれば、大きな価値が出ると理解した。あの時のインパクトは忘れられない」と述懐する。
APACにおける事例では出荷先の変更が多いなど、標準的なプロセスから逸脱しているものを118件抽出し、一覧化したところ、その99%がオーストラリアで発生していることがわかったという。原因を突き詰めていくと、特定の取引先のマスターデータに課題があり、それを見直した結果、問題となるプロセスが激減。
同氏は「当初、なぜ配送に時間がかかっていたのか判然としなかったが、可視化と原因を特定し、改善につなげることができた。ここで、Celonisによる可視化のメリットに、大きな手応えを感じた」と語る。



