なぜ廃校をデータセンターに使うのか

ハイレゾが3月3日、香川県高松市綾川町に綾川町データセンター(以下、綾川町DC)を開所した。同社は過疎地にコストパフォーマンス重視型のデータセンターを作る戦略をとっている。同社のデータセンターはコストに加えて運用面でも無駄を省いた設計としており「大手クラウドベンダーの半額」という料金を実現した。

香川県には2024年12月に設置した高松市データセンターが稼働中で、綾川町DCはこれに続くものとなる。開所時点で屋内設備とラック、数台のサーバに内蔵されたGPUがすでに稼働しており、今後1、2年かけてGPU100台程度の本格稼働を実現する予定だ。

  • ハイレゾの「綾川町データセンター」。廃校となった旧綾川中学校体育館のピロティ部分を活用して設置されており、体育館はそのまま残されている 提供:ハイレゾ

    ハイレゾの「綾川町データセンター」。廃校となった旧綾川中学校体育館のピロティ部分を活用して設置されており、体育館はそのまま残されている 提供:ハイレゾ

ハイレゾは2024年から2026年にかけて毎年データセンターを開設しているが、これらすべてに共通するのは既存の建屋を活用していることだ。

冒頭紹介した高松市データセンターは研究施設「RISTかがわ」の一部を改修しており、昨年末に開設した玄海町データセンターは廃校となった小学校の教室、今回の綾川町DCは2022年3月に廃校となった中学校体育館をそのまま利用しており、建築コストを大きく下げている。

綾川町DCは旧綾川町立綾上中学校の体育館の下部ピロティスペースを改装して作られ、体育館部分はそのままで開所式も体育館で行われた。

  • 開所式が行われた旧綾川中学校の体育館。校訓や校歌など、学校当時の掲示がそのまま残されている

    開所式が行われた旧綾川中学校の体育館。校訓や校歌など、学校当時の掲示がそのまま残されている

  • 体育館を別角度から撮影。左手前に受電設備、右手前にはデータセンターの冷却に使用する空冷チラーが設置されている

    体育館を別角度から撮影。左手前に受電設備、右手前にはデータセンターの冷却に使用する空冷チラーが設置されている

体育館の下にサーバルーム - データセンター内部

綾川町DCの内部は撮影禁止だったが、48Uのラックが11台×2列のサーバルームが2つ用意されていた(報道陣に公開されたのは片方のサーバルーム)。空調効率を高めるためかコールドアイル、ホットアイルともに非常に広いスペースが使われており、ゆったりした配置なのが印象的だった。

これは床荷重を減らす目的もあるだろう。体育館の広さ(約1000㎡)で44ラックしか設置しないというのはハイレゾ以外のデータセンターでは見たことがない。

ラックから見えた初期導入サーバは10U程度の大きさだったので空冷GPUを使用しているようだ。DLCにした場合、ラック当たりのサーバ数が増え冷媒の重量も加わりラック重量が増すので、空冷にすることで床荷重を抑えているのだろう。

開所時点ではA4000とH100のエントリーモデルを使用しており、今後は100基以上のGPUを、ウルトラハイエンドモデルを含めて稼働させるという。現時点での最大受電容量は2MW(PUEは非公開)だ。

  • ハイレゾ「綾川町データセンター」の入口

    ハイレゾ「綾川町データセンター」の入口

  • 体育館のピロティ部分を囲う形で壁を設置し、データセンター施設として利用している。もともとは駐輪場や部活動のスペースとして使われていたという。撮影が許可されているのはここまで

    体育館のピロティ部分を囲う形で壁を設置し、データセンター施設として利用している。もともとは駐輪場や部活動のスペースとして使われていたという。撮影が許可されているのはここまで

  • サーバルーム1の入口。見学できなかったがサーバルーム2も同構成だという 提供:ハイレゾ

    サーバルーム1の入口。見学できなかったがサーバルーム2も同構成だという 提供:ハイレゾ

  • サーバラック。48Uラックを11台並べた列が2列配置され、1つのサーバルーム当たり計22ラックの構成となっている 提供:ハイレゾ

    サーバラック。48Uラックを11台並べた列が2列配置され、1つのサーバルーム当たり計22ラックの構成となっている 提供:ハイレゾ

  • 校舎側に設けられたオフィス。リノベーションされているが、教室の黒板など学校当時の名残も残っている 提供:ハイレゾ

    校舎側に設けられたオフィス。リノベーションされているが、教室の黒板など学校当時の名残も残っている 提供:ハイレゾ

  • 旧綾川中学校の校舎。将来的には地元住民向けのAI教育やAI活用のコミュニティスペースとして活用される予定

    旧綾川中学校の校舎。将来的には地元住民向けのAI教育やAI活用のコミュニティスペースとして活用される予定

GPUデータセンターで地域産業を作る「香川モデル」

開所式は代表取締役の志倉喜幸氏のほか、来賓として、自治体から香川県知事の池田豊人氏、綾川町町長の前田武俊氏、綾川町議長の河野雅廣氏、衆議院議員 復興副大臣兼内閣府副大臣の瀬戸隆一氏、日本政策投資銀行 常務執行役員の伊東徹二氏、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の吉岡正嗣氏が祝辞を行った後、株式会社日本経済研究所の梶原廣彦理事、香川県議会議員の松岡里佳氏、高松市の小泉誠副市長、高松市議会の坂下且人氏を含めテープカットを行った。

  • 綾川町データセンター開所式で行われたテープカットの様子

    綾川町データセンター開所式で行われたテープカットの様子

冒頭あいさつを行った志倉氏は「このプロジェクトは政治、行政、国、金融、学術、民間が本気でそろった挑戦であり、単なるデータセンターではなく『香川モデル』という産業の形だ」「われわれが戦うのは過疎、地方は必ず衰退するという思い込みと不景気。経済は縮むものだという空気と戦う」と発言。香川モデルとは、地元GPUデータセンターを核として、AIの利活用を地元企業にも促進するというものだ。

  • ハイレゾ 代表取締役 志倉喜幸氏

    ハイレゾ 代表取締役 志倉喜幸氏

  • 香川県知事 池田豊人氏

    香川県知事 池田豊人氏

  • 綾川町町長 前田武俊氏

    綾川町町長 前田武俊氏

開所式後の囲み取材では、志倉氏が「10~20名程度を雇用したい」とコメントしており、昨年の玄海町同様に地元に新しい産業を生み出すという立場を示していた。

香川県の池田知事は「香川県をAIフロンティア県にするべく、県内の企業に働きかけや助成を行い、綾川町DCとAIを使って企業成長を進めたい」とコメントした。香川県はこの「AI技術活用加速化支援事業費補助金参加企業の募集を開始している。

ハイレゾの次のデータセンターの計画として、秋田県男鹿市が紹介された。この計画はすでに経済産業省の「データセンター等の地方分散によるデジタルインフラ強靭化事業」に採択、旧潟西中学校を念頭に計画が進められており「自治体によるデータセンターの誘致としては同県初だ。開設目標は2027年度中だが、調達が難航すると2028年度にずれ込む可能性があるという。