ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は3月4日、Cognition AIが提供する自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」のエンタープライズ版(Devin Enterprise)を全社規模で導入したことを発表した。

DeNAは2025年7月にCognition AIと戦略的パートナーシップを締結して以降、自社内でのDevin Enterpriseの導入を進めてきた。Devin Enterprise導入における自社クラウド内展開の設定、全社展開を行うために必要なアカウント管理方法の確立といった課題を解消したことから、全社導入に至ったとのことだ。これにより、2000人超の社員がDevin Enterpriseを利用可能となった。

全社導入を可能にした「高い自律性」と「ガバナンス」の両立

DeNAはゲーム、ライブストリーミング、ヘルスケア・メディカル、スポーツ・スマートシティなど、技術スタックもセキュリティ要件も異なる多種多様な事業をグローバルに展開している。

また、多くのパートナー企業との共同開発も行っているため、一律のツール導入ではなく、各事業のフェーズや機密レベルに応じた安全かつ効果的な活用環境の構築が不可欠だったという。

こうした複雑な組織構造において、自律型AIによる「攻め」のDX(デジタルトランスフォーメーション)と、組織としての「守り」のガバナンスを両立させるため、全社汎用基盤の構築と段階的導入によって全社導入を実現した。

事業の多様性に対応する全社汎用基盤の構築に向けて、多様な事業資産を保護するため、物理的に独立した環境としてDevin Enterpriseを自社クラウド環境内のVPC(Virtual Private Cloud)版で展開した。

さらに、SSO(シングルサインオン)連携を含む独自の高度な認証・権限管理体系を確立したことで、各事業部が自律型AIをそれぞれの業務ドメインに最適化させながら、全社レベルの統制下で安全に利用できる体制を整えた。

迅速な検証を進める一方で、同社は大規模組織に特有の課題を解消するため、約半年の準備期間を設けて3つの段階を経て導入を拡大した。アルファ版ではコアユーザーによる技術検証とエンタープライズ利用におけるガバナンス要件を抽出し、ベータ版では実案件に近い環境での試行に進んだ。Devin専用Slack Workspaceの運用ルール策定や、組織単位(Sub-Organization)作成の自動化フローを構築し、運用負荷を軽減している。

さらに、全社展開版では約2000人の全社員がそれぞれの事業特性に合わせてDevinを即座に呼び出し、業務に組み込める状態を実現した。すでに40チーム以上での利用が始まっているとのことだ。

レガシーシステムのコードマイグレーションを約6倍効率化

Devinはプログラミング言語やフレームワークを刷新する「コードマイグレーション」の自律遂行を強みとする。その能力検証として、社内の資産管理APIのモダナイズを実施。従来PerlからGoへの移行は半年を要する大規模プロジェクトと想定されていたが、Devinを活用し作業を進めた結果、約6倍の業務効率化となる1カ月弱で完遂できたとのことだ。

オフショア開発の検収・品質管理の待機「日単位」から「分単位」へ

海外パートナーと連携するオフショア開発においても、Devinは強力なクオリティ・ゲート(品質の門番)として機能した。DeNAのチームが定義した仕様に基づいて納品されたコードに対し、Devinが仕様書ベースのレビューから受け入れテストの作成・実行までを一貫して担当した。その結果、従来1~2日を要していた検収作業が、わずか15分の入力と約2時間の確認で完了できるようになったという。

さらにセキュリティチェックでは、社内専門チームの指摘事項の半分以上をDevinが先んじて検知・自動修正。数日から1週間におよぶこともあった専門チームの確認待ち時間をわずか数十分へと短縮し、開発サイクル全体の高速化を実現している。

非エンジニアの営業現場で「コード直結型」見積もりで8倍の高速化

Devinの高度なコードリーディング能力は、エンジニア以外の職種にも恩恵をもたらしているという。

営業担当者が顧客要望を受けた際、エンジニアを介さずにDevinと対話することで、ソースコードに直接基づいた機能適合性チェックや追加開発の工数見積もりを実施。従来は不可欠だったエンジニアとの調整会議・ミーティングいうボトルネックを解消した結果、約8倍の高速化を実現した。

Devinはエンジニアを単純なコーディング作業から解放するだけでなく、職能を超えてソースコードを介した迅速なコミュニケーションを可能にするとのことだ。