夜空を見上げるだけで楽しめる天体ショー「皆既月食」。2026年3月3日の“ひな祭り”の夜に楽しめるということで事前の注目度は高かったのだが、残念ながら全国的に天候に恵まれなさそうだ。それでも皆既月食を楽しめるライブ配信がいくつか用意されており、一部では晴れ予報の地域もあるので、ここではそれらをまとめて紹介。また、日本で次に見られるチャンスや、手持ちのスマートフォンでできるだけキレイに撮る方法などもあわせてお伝えしよう。

  • 皆既月食の様子。写真は2018年1月31日筆者撮影(キヤノン EOS 6D Mark II / タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD / 300mm・クロップ処理済み)

    皆既月食の様子。写真は2018年1月31日筆者撮影(キヤノン EOS 6D Mark II / タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD / 300mm・クロップ処理済み)

国立天文台によれば今回の皆既月食は、東の低い空から南東の高い空にかけて見えるという。食の経過時間はどの場所で見ても変わらず、18時50分頃に欠け始め(部分食)、“赤銅色”と呼ばれる赤黒い色に見えるタイミング(皆既食)は20時4分〜21時3分頃の約1時間にわたって続く。その後は徐々に元の月の姿に戻り、22時18分頃には部分食が終了する、という流れだ。

  • 2026年3月3日の皆既月食の概要(出所:国立天文台Webサイト)

    2026年3月3日の皆既月食の概要(出所:国立天文台Webサイト)

晴れていれば、夜ふかしせずに皆既月食の全行程が見られる観察しやすい月食となるはずだったのだが、今回は残念ながら広い範囲で雨予報となっており、そうでなくても全国的に雲がちの空になってしまうようだ。北海道や九州南部など一部では晴れる可能性も残っているので、そういった地域にお住まいであれば直接観測できるチャンスがあるかもしれない。雨予報の地域に住んでいる方は、ライブ配信を見て楽しむ方法もある。

  • 2022年11月8日の皆既月食。ミラーレスカメラ(ソニー α7 III)と中望遠レンズで筆者が撮影したもの

    2022年11月8日の皆既月食。ミラーレスカメラ(ソニー α7 III)と中望遠レンズで筆者が撮影したもの

なぜ皆既食中は赤い月になるのか? といった、月食の詳しい話は国立天文台日本公開天文台協会の解説記事、弊誌連載「どこでもサイエンス」(2022年2025年2026年)などをぜひ参照してほしい。特に、国立天文台が掲載している解説資料PDFは一見の価値アリだ。

ここからは、皆既月食のライブ配信を予定しているYouTubeチャンネルの一部を一挙紹介する。国立天文台やアストロアーツはもちろんのこと、東京ドームシティにある宇宙体験施設「Space Travelium TeNQ」、“惑星科学者VTuber”星見まどかさんの各チャンネルで今回の皆既月食に関するライブ配信を予定している。晴れる可能性がある北海道や九州、さらには海外と中継を結ぶ予定の名古屋市科学館など、各地の天文台・科学館によるライブ配信についても紹介しておこう。

なお執筆時点では見当たらないのだが、過去(2022年)にはKTS 鹿児島テレビやMBC南日本放送のYouTubeチャンネルでも皆既月食のライブ配信を行ったことがあったようだ。そちらも直前までチェックしておきたい。

【YouTubeライブ配信】それでも月食が起こるわけ|国立天文台 (NAOJ)

【YouTubeライブ配信】皆既月食をいっしょに眺めませんか? (3月3日18時半ごろから)|アストロアーツ

【YouTubeライブ配信】【天体観望ライブ配信】皆既月食を一緒に見よう!【Space Travelium TeNQ】

【YouTubeライブ配信】【🌟 皆既月食】ひな祭りの皆既月食🌕🎎惑星科学者VTuberが月食の解説&中継情報も紹介!【星見まどか】

【YouTubeライブ配信】2026年3月3日 オンライン市民観望会「皆既月食」|名古屋市科学館

【YouTubeライブ配信】2026年03月03日 皆既月食中継|なよろ市立天文台

【YouTubeライブ配信】2026年3月3日 ひなまつり皆既月食|あすなろ会こども遊学館【釧路市こども遊学館】

【YouTubeライブ配信】皆既月食ライブ中継 2026.3.3|銀河の森天文台

【YouTubeライブ配信】JX金属 関崎みらい海星館 2026年3月3日 ひな祭り皆既月食中継

今回、直接観測できなかったとしても、皆既月食を見られるチャンスはまたやってくる。

次回は2029年1月1日に起こることが分かっており、しかも除夜の鐘を聞き終わり年が明けてすぐのタイミング(0時7分)から月が欠け始めるという、なんとも絶妙なタイミングになるそうだ。天気が良ければ、初詣と共に赤く染まる月を楽しめるかもしれない。

ちなみに同じ2029年の12月21日にも皆既月食があるが、こちらは月食の最中に月が欠けた状態で地平線(あるいは水平線)の下に沈む、月入帯食(げつにゅうたいしょく)となる。

スマホで皆既月食を撮るときの準備・気を付けたいこと

最後に、「皆既月食をスマホで撮りたい!」という人向けのアドバイスも紹介しておこう。

天体ショーの撮影は、普段の写真とは撮り方に気を付けなくてはならないポイントがいくつもある。ぜんぶスマホ任せで、というわけにもいかないので、これから紹介する準備は最低限必要だ。いうまでもなく、天体ショーの撮影にも安全とマナーの問題はつきものなので、周囲への注意も十分に配っておきたい。

  • スマートフォンでも工夫すれば、皆既月食の様子をキレイに撮れる。写真はXperia XZ1 Compact(2017年発売)と、後述のスマホ用望遠レンズの組み合わせで撮影した作例

    スマートフォンでも工夫すれば、皆既月食の様子をキレイに撮れる。写真はXperia XZ1 Compact(2017年発売)と、後述のスマホ用望遠レンズの組み合わせで撮影した作例

まずはスマホを固定して撮れる安全な場所の確保。テーブル三脚など小さなものでも構わないので、三脚があるとなおよい。月はどんどん動いて画面(カメラの視野)から外れてしまうので、撮影中の画面を都度見られるようにセッティングしておくことも頭の片隅にいれておいてほしい。

そして、スマホの標準レンズに後付けできる「スマホ用望遠レンズ」があると便利だ。同様の製品が各社から発売されており、ケンコー・トキナーの「リアルプロクリップレンズ 望遠8倍」を使った事例については2022年の僚誌記事に譲りたい。

  • ケンコー・トキナーの「リアルプロクリップレンズ 望遠8倍」

    ケンコー・トキナーの「リアルプロクリップレンズ 望遠8倍」

  • iPhone 11と望遠レンズを組み合わせたところ

    iPhone 11と望遠レンズを組み合わせたところ

撮影に使うスマホアプリは、使い慣れたものがあれば基本的にはなんでも構わないが、「ProCam」(iOS用)や、Adobeの「Lightroom」(iOS/Android用、要Adobeアカウント)に備わっている撮影機能などのように、シャッタースピードやISO感度といった露出設定やピント合わせを手動で設定できるほうが、仕上がりは格段に良くなる。ただしスマホの広角/望遠レンズの切り替えには対応していないことがあるので、その点には気を付けておきたい。

  • Adobeの「Lightroom」アプリに備わっているカメラ機能を使って月を撮っているところ。手動でのピント合わせをラクにしてくれる「ハイライトのクリッピング」が便利

    Adobeの「Lightroom」アプリに備わっているカメラ機能を使って月を撮っているところ。手動でのピント合わせをラクにしてくれる「ハイライトのクリッピング」が便利

撮影のコツとしては、明るく写る月をタップして最適な露出をスマホに決めてもらったり、太陽マークのあるスライダー(露出補正)を下げてみたりと細かく調整しながら、複数枚を撮っておくとよい。月の明るく光る部分と、地球の影に隠されていく部分の明暗差はかなり大きく、しかも時間の経過によってダイナミックに変わっていくためだ。

アプリで細かく手動設定できる場合、部分食の始まりはシャッタースピード早め・ISO感度は抑えめで撮り始め、皆既食中はシャッタースピードを最長1秒程度に抑えつつ、ノイズが出ない程度にISO感度を上げる。

皆既食が終わって明るくなり始めたら、シャッタースピード早め・ISO感度抑えめに戻していく。このあたりは細かい数字にこだわらず、自分で写りをチェックしながら撮りたいイメージに合わせて撮るといいだろう。月の色味を引き立てるように、ホワイトバランス(あるいはフィルタ)の設定を変えて楽しむのもアリだ。

上記は2026年3月時点の情報なので、3年後にはアプリや後付けレンズなど一部は古びた話題になっているかもしれない。だが、自然を相手にする撮り方のコツはスマホでもカメラでもそう大きくは変わらない。皆既月食中であっても、月には薄い雲がかかったり、空がかすんできたりと、状況が常に変化する。気長に、かつ粘り強く挑戦してみてほしい。

  • 皆既月食の終わり。月食中は月の明るさが大きく変わるので、カメラで撮影するときはマニュアル撮影がオススメ。写真は2018年1月31日筆者撮影(キヤノン EOS 6D Mark II / タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD / 300mm・クロップ処理済み)

    皆既月食の終わり。月食中は月の明るさが大きく変わるので、カメラで撮影するときはマニュアル撮影がオススメ。写真は2018年1月31日筆者撮影(キヤノン EOS 6D Mark II / タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD / 300mm・クロップ処理済み)